第6話 ライバルとの再会
――レベルが上昇しました。レベルが11になりました。ステータスポイントを10獲得しました。
――東部エリアの探索度が100%になりました。EXPを獲得しました。装備セット『始まりの一歩』を獲得しました。
――称号機能が解放されました。称号『新人プレーヤー』を獲得しました。
――レベルが上昇しました。レベルが12になりました。ステータスポイントを10獲得しました。
――総プレイ時間24時間以内での東部エリア探索完了を確認。称号『手練れの新星』を獲得しました。
探索度が100%になった途端、怒涛の報酬の嵐がやってきた。
1つずつ整理していくか。
取りあえず、獲得したステータスポイントを各項目に割り振る。
それと新しい装備は……なるほど、全て装備するとセット効果を発揮するのか。
しかし剣だけは『青の剣』の方が強そうだ。
ひとまず「装備なし」になっているところに適当にセットしておこう。
それから称号機能。
なるほど、称号の中には固有の効果を持つものがあって、設定することでその効果が反映されるらしい。
今は設定欄が1つしかないが、レベルが上がると欄が増えるようだ。
配布の『新人プレーヤー』には効果がないが、『手練れの新星』にはAGIとLUCを上昇させる効果がある。
これを設定して……よし、一度ステータスを確認してみるか。
ユータ
Lv.12
ATA 68
DEF 68
AGI 68
DEX 48
LUC 64
HP 210
《スキル》
【斬撃】Lv.3 【先制攻撃】Lv.4 【毒耐性・小】Lv.2 【青の煌めき】Lv.2 【回避のスライム】Lv.1
《装備》
セット:なし
頭部:なし
胸腹部:『始まりの胸当て』
腕部:なし
右手:『青の剣』
左手;なし
脚部:なし
足部:『始まりの靴』
その他:『始まりの耳飾り』
《称号》
『手練れの新星』
装備やら称号やらのステータスアップ効果がすべて反映されたうえで、この数値になっている。
今日の探索中に手に入れた【回避のスライム】は、攻撃を避けるごとにATAとDEXを最大で3%まで上昇させるスキルだ。
ほぼ1、2撃で倒してしまったので、あまり発動はしなかったんだけど。
東のエリアは、チュートリアル要素も含んだ本当に初心者用の場所らしいので、本番はここからだと言える。
ここは一度、街に戻って、次のエリアや現実でのダンジョン探索に備えるとしよう。
というわけで街へ帰還。
邪魔なので剣はしまっているが、それ以外の装備はつけたままだ。
周りを見渡すと、同じ装備を身に着けたプレーヤーが結構いる。
なかには豪華で派手な装備を身に着けている人もいるが、ああいう人はリリースされた日からずっとやりこんでいるタチだろう。
やはり一か月の遅れは痛いな。
次のエリアへ進むに向けて、回復スキルか回復アイテムを買っておきたい。
ひとまず、重複している不要なアイテムを売ってGに変換。
開始時に配布されたもの、宝箱からゲットしたものを合わせて、それなりの所持金になった。
「ここでいいか」
目に留まったアイテムショップへ入店し、いいものがないか物色する。
スキルに関しては、また別のスキルショップで売っているようだ。
俺が入店したのは店員がNPCの店だが、なかには補助職のプレーヤーが開いている店もあって、そこでしか手に入らないレアアイテムが買えるらしい。
「これで」
「はい、お買い上げありがとうございます。またのご来店をお待ちしております」
結構かわいいNPCの店員に見送られ、買い物を済ませた俺は店をあとにする。
HPを最大値の10%回復するポーションを5つ。
足りなくなったらまたくればいい。
「おっと、その見た目はユータじゃないか?」
まだお金は余っているのでどうしようかと考えていたら、全身を黒い装備で包んだ男性プレーヤーから声を掛けられた。
鋭く光る黄色の瞳、それに全身から醸し出される雰囲気には心当たりがある。
「クロノか?」
俺が尋ねると、相手は笑いながら頷いた。
「覚えててくれたか。お前と再会できるとは嬉しいぜ」
クロノとは『レッドサン・オンライン』というゲームで知り合った。
当時は俺も彼もトッププレーヤーでそこそこ知られていたのだが、運営によるゴミみたいなバランス調整で面白みがなくなり、2人ともそのゲームをやめてしまった。
確か『RSO』は、半年ほど前にサービス終了となったはずだ。
「『RSO』以来だな。1年ぶりくらいか?」
「だな。過去の栄光が懐かしいぜ。でもユータ、お前がここに参戦しているとなったら、これは大変なことになってきたぞ」
「大変なこと?」
「おうよ。各ゲームのトッププレーヤーが続々と集まってきてる。そのうちバトロワイベとか来るだろうけど、相当えぐい戦いになりそうだぜ」
「それは楽しみだ。まあ、俺は若干出遅れたけどな」
「そういや、まだまだ初心者の装備だな。始めたばっかか?」
「金欠で買えなかった」
「なるほどな」
クロノは少し考える素振りを見せてから、俺の耳元へ顔を近づけていった。
「お前には世話になったから教えてやるけど、北部エリアに隠しダンジョンがあるんだ。上位層では有名な話でな。初回のクリア報酬はかなり美味しいぜ」
「そんな情報、俺に教えていいのか?」
「お前とはきっちり決着をつけたいからな。ある程度のとこまで上がってきてもらわないと困る」
俺とクロノは『RSO』のなかでも有名なライバル関係にあった。
あのゲームでは本当に五分五分、完璧に実力が拮抗していたな。
「その情報はありがたくいただいておくよ。俺に教えたこと、後悔するなよ?」
「しないさ。そもそも、お前がダンジョンを見つけられるかだけどな。じゃ、俺はこれで失礼するぜ」
「あ、待て。フレンド登録だけしとこう」
「ああ、オーケー」
フレンド登録を済ませ、クロノは去っていった。
思いがけないライバルとの再会は嬉しいもんだな。
「さてと」
隠しダンジョンもいいんだけど、そろそろ一度ログアウトしないと現実の体に良くない。
せっかくあっちに戻るなら、現実のダンジョンも一回くらいクリアしとくか。