第5話 マ●オのパックンフ●ワー
何だかんだで疲れたのか、ダンジョンから帰ってくるなり俺は爆睡してしまった。
目が覚めると時刻は午後1時。
エナジーゼリーで10秒チャージして、早速ヘッドギアを被る。
起きてすぐにゲームを始めるあたり、さすがゲーマーの鑑だな。
訳の分からない自画自賛をしつつ、始まりの街へと降り立つ。
そこからワープポイントを使って東の森の中へ。
ステータスを確認すると、昨日6でログアウトしたレベルが7になっている。
各項目の数値も上昇しているし、【ゲーマー】の効果は確かなようだ。
さあ、今日の探索範囲は東エリアの残っている部分。
マップにはエリアごとの探索度が表示されていて、今の東エリアは51%となっている。
ぶっ続けでやれば今日の夜までには100%に出来そうだな。
もし新しく攻撃スキルが手に入ったら、またダンジョンへ行ってみよう。
ふと、右斜め前で何かがキラッと光った気がした。
本当に一瞬、それも決して強い光ではなかったが、ゲーマーの目は見逃さない。
道を外れて森の中へ分け入っていくと、そこにあったのは豪華な装飾が施された宝箱だった。
「ラッキー。お宝ゲットだ」
意気揚々と宝箱を開く。
すると中から素早く何かが飛び出してきて、俺の右腕にかみついた。
「うわ!」
俺は思わず後ずさりする。
宝箱から出てきたのは、ギザギザの歯でしきりに噛みつこうとしてくる黄色い花だった。
マ●オのパックンフ●ワーみたいなやつ。
土管じゃなくて宝箱から生えてるけど。
「ちっ。トラップかよ」
どうやらこの宝箱はダミーだったようだ。
しかし向こうの攻撃力はあまり高くなく、HPは3しか減少していない。
一撃食らった程度では痛くもかゆくもないな。
とはいえ攻撃を食らったことで【先制攻撃】は発動しない。
でもこれくらいの雑魚なら毎度おなじみのアレだけで十分だな。
「【斬撃】」
茎の部分からスパっと斬ってやると、パックンフ●ワーはみるみる力を失って消えていった。
そして宝箱の中に何か残っている。
「ドロップアイテムか。えっと……『噛みつき花のタネ』」
パックンフ●ワーじゃなくて噛みつき花だった。
タネってことは、これを植えるとさっきのやつが生えてくるのだろう。
……いるか?このアイテム。
取りあえずアイテムボックスにしまって、再び元の道へと戻る。
今回はダミーだったけど、本当の宝箱も隠されているはず。
その辺も注意しながら進むとするか。
ゲーム開始から3時間。
俺はこの日4つ目の宝箱を見つけた。
これまで1つは本物でゲーム内通貨のGが、2つはトラップで噛みつき花が入っていた。
今回は本物だといいんだけど……
「お、本物だ」
飛び出しからの噛みつきを警戒しながら開けると、中に入っていたのは青い剣だった。
初心者装備セットしか持っていない俺にとって、初めての武器獲得である。
『青の剣』
効果:ATAを2%アップ。(装備時のみ)
武器固有スキル:【青の煌めき】
【青の煌めき】Lv.1/10
効果:攻撃対象にATAの105%のダメージ。(『青の剣』を使用時のみ発動可能)
【斬撃】がLv.1でATAの103%だったから、【青の煌めき】はそれよりやや強いことになる。
とはいっても、今日の開始時より【斬撃】が1レベルアップしてLv.3になり、ATAの105%になったので現状では効果に変わりなしなんだけど。
あ、でも、武器の効果でATAが上昇してるからこっちの方が強いのか。
初心者装備には効果なかったもんな。
初心者用の長剣をしまい、新たに『青の剣』を装備する。
性能はともかく見た目はそれなりにカッコいいな。
髪色とも合ってるし。
ちょうどよくウサギのモンスターが飛び出してきたので、試し斬りといきますか。
「【青の煌めき】」
スキルを発動すると、剣の刃全体が青白い光に包まれた。
武器固有スキルの発動演出みたいだ。
ぴょんぴょんと素早く飛び跳ねるウサギの動きを読んで、確実に攻撃を命中させる。
「きゅぅ……」
ウサギはあっさりと光になって消えていった。
もこもことした毛皮のようなアイテムがドロップしたので、ボックスにしまっておく。
初心者用のものに比べて心なしか軽い気がするし、悪くないな『青の剣』。
もっと強力な武器が手に入るまでは、こいつをメインウェポンにしよう。
――レベルが上昇しました。レベルが9になりました。ステータスポイントを10獲得しました。
おっ、レベルが上がったか。
ステータス画面のウィンドウを呼び出し、ポイントを各項目に振り分ける。
新しい武器もスキルも手に入ったし、ここまでは順調だな。
この調子で東エリアの探索度100%まで頑張るとしよう。