表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/11

第4話 初めてのダンジョン探索

「着いた」


 探索者として登録した日、門前払いを食らった例のダンジョン。

 今回は入れることを願って、扉へスマホをかざす。


 ――『SoDA』を確認。データを読み込みます。


 ――当該ダンジョン攻略における必要ステータスを確認。ダンジョンの扉が開きます。15秒で扉は再度ロックされますので注意してください。


「よっしゃ!」


 俺は闇の中で1人、拳を握り締める。

 ガチャンという音がして、ダンジョンの内側へと扉が開かれた。

 ぽっかり空いた暗い穴へと、俺は吸い込まれるように入っていく。

 15秒後、後ろで扉が閉じて再びガチャンという音がした。


 脱出時のことを考えて、内側から扉を開けることは可能になっている。

 ダンジョン内のところどころにも脱出口が設けられているはずだ。


「さてと」


 ゲームの装備セットを呼び出してみると、実際にそれが現われて装備された。

 剣を握った感覚、重さも変わりない。

 体の動きもゲームと同じ感じだ。


「やるか、初探索」


 ダンジョンの道は踏み固められてなのか、整備されてなのか、材質は土のようだが歩きやすい。

 ただ壁や天井は自然の洞窟のようにごつごつとしていて、等間隔に灯りが取り付けられている。

 この灯りのおかげで、多少薄暗いながらもしっかり進むことが出来る。


 ふと、ポチョンポチョンという音が聞こえてきた。

 弾むような一定のリズムを繰り返しながら、音はこちらへと近づいてくる。

 モンスターかと身構えた俺の前に現れたのは、半透明で水色のスライムだった。

 初心者向けモンスターのド定番。

 現実世界のダンジョンにおける最初の獲物になっていただこう。


 おそらく【先制攻撃】が発動している状態のはずだから……。


「【斬撃】」


 動きの鈍いスライムを、正面から初心者用の長剣で斬りつける。

 ムニュゥという独特な感触の後、ぷつんと断ち切れる感覚があった。

 あっという間に、スライムはただの液体となって地面に溶け込んでいく。


「あっけな!まあでもこんなものか」


 俺の今のATAは56。

 初探索にしてはめちゃくちゃ高い数値だ。

 スライムくらい一撃で倒せないと逆におかしい。


 地面に丸く染みができたあとには、特に何も残っていない。

 つまり今回のスライムからは何もドロップしなかったということだ。

 もし何かドロップしていれば、それを売ってお金が得られる。


「余裕で行けるじゃん。軽いもんだな」


 1体だけだが、倒したことで少し自信がついた。

 ゲームのスキルがちゃんと使えることも確認できたし、どんどんと突き進んでいこう。






 15分ほど、スライムやら単体のゴブリンやらを瞬殺して進んできた。

 ゴブリンは群れになるとおっかないけど、単体で出てこられてもマジで何も怖くない。


 そして俺が到着したのはボス部屋の前。

 この奥にいるボスを倒すことで、ダンジョン探索は成功となり地上に帰れる。


「この感じだとボスもちょろそうだな」


 俺は迷いなくボス部屋の扉を開いた。


「ボスはでっかいスライム2体か」


 さっきまで出てきていたスライムは、ちょうど両腕で抱きかかえられるくらいのサイズだった。

 ただこのボススライムは、俺の胸くらいまでの大きさがある。

 ただでかい分、動きは鈍いってわけで。


「そりゃっ!」


 片方に剣を突き立てると、表面はハリがあったがすぐにぷつんと裂け、なかからどろりと粘液があふれ出してきた。

 何かこういう食感の果汁グミがあったよな。コ●ロとかいうやつ。

 食べたんじゃなくて斬ったんだけど。


 ボスというだけあって、ただ剣でぶっ刺されたくらいでは倒れないようだ。

 ただ予想通り動きは鈍い。

 攻撃が当たる心配はなさそうだ。


「【斬撃】」


 スライムの左肩から袈裟斬りのように剣を振り下ろす。

 スライムに肩があるのかは知らないけど。


「くきゅぅ……」


 何ともかわいそうな声を上げて、スライムが液体となった。

 残りは1体。


「【斬撃】【斬撃】」


「くきゅぅ……」


 こちらもあっさりと倒れてくれた。

 しかし【斬撃】しか攻撃スキルがないのはつまらないな。

 今度は『WHO』でもっとスキルを手に入れてからダンジョンへ来ることにしよう。


 スライムが消えたあとに、四角いキューブのようなものが残った。

 半透明で、水風船のようにぶよぶよしている。

 これがボススライムのドロップアイテムだろう。


 ――ボス討伐を確認。ダンジョン探索成功です。


 ――ダンジョンの探索が完了しました。EXPを獲得しました。


 ――レベルが7になりました。戦闘データに基づき、ステータスが上昇しました。


 レベルが上がった。

 ゲームでは自由にステータスポイントを振り分けられたが、現実ではAIの分析をもとに自動で能力が上がる。

 これは【ゲーマー】云々の話ではなく、全ての探索者に共通することだ。


 ――600秒以内に出口よりダンジョンから退出してください。やむを得ない事情により時間内に退出できない場合は、『SoDA』より管理センターへ連絡してください。


 初探索、見事に大成功だ。

 このぶよぶよキューブ以外にもいくつかアイテムはゲットしたけど、これがいくらになるかは分からない。

 金額しだいではバイトをやめられるかもな。


 絶対に安全なゲームでレベルアップして、現実のダンジョンでお金を稼ぐ。

 しかも、お金を稼ぎながらゲームのアバターも強くなる。


 【ゲーマー】のヤバさに鳥肌が立った腕をさすりつつ、俺は上機嫌でダンジョンをあとにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ