第1話 ステータス「-」
世界中にたくさんのダンジョンが出現している時代。
ダンジョンの中には多種多様なモンスターが住み、それらを倒すと様々なアイテムがドロップする。
そしてそのドロップアイテムを売ると、アイテムごとに決められた額のお金を受け取れる。
めちゃくちゃ難易度の高いダンジョンに挑む上級の探索者となれば、とんでもない額のお金を稼ぐことが出来る。
しかし、探索者としての才能を持つ者はほんの一握り。
多くの探索者は、アルバイト感覚で難易度の低いダンジョンに挑戦するのだ。
ゲームに例えてみるなら、上級探索者はガチ勢、もしくはプロゲーマー。
大半の探索者はエンジョイ勢である。
さて、俺――安達優太は、今まさに探索者としてデビューしようか迷っているところだった。
引きこもり廃ゲーマー、17歳、不登校の高校生。
アルバイトも何もしていない俺は、絶賛金欠中だ。
だがしかし、今日は新作ゲームの発売日。
何としても『ワンダーホライズン・オンライン』というVRゲームを手に入れたい。
にしても『ワンダーホライズン・オンライン』か。
略称はWHO。国連の組織かっつーの。
どうしてもこのゲームがしたい。でもお金がない。
そこで登場するのがダンジョンである。
VRゲームで何度もダンジョンを攻略している俺なら、現実のダンジョンも案外楽に攻略できるんじゃね?という甘ったれた考えに行きついたのだ。
もちろん、ダンジョンに住むモンスターの攻撃を受ければ死に至る可能性だってある。
ゲームだったらリスボーンできるけど、現実ではその瞬間にジ・エンドだ。
でもなぁ、探索者として登録すればステータスが付与され、初期スキルだって手に入る。
そこに俺の戦闘経験(ゲーム内のみ)が加われば、行けるような気がするな。
「よし、決めた」
俺はスマホを取り出すと、覚悟を決めて『Supporter of Dungeon Adventure』なるアプリをインストールした。
この略称を『SoDA』という爽やかな名前のアプリ。
ダンジョン出現と同時に人類が手にしたレベルやステータス、スキルといったシステムを、人類が培ってきた科学技術のプライドにかけて1つのアプリへと落とし込み分かりやすくしたものだ。内容は全く爽やかじゃない。
このアプリがスキルを与えたりはしないが、ダンジョンで手に入れたスキルをこれで確認することはできる。
膨大な量のダンジョンに関するデータが入っていて、探索者にとっては必須のアプリだ。
探索者登録もこれで行うことができる。
開いてみると、本名や生年月日、住所や連絡先を入力するよう求められた。
そして最後に、「本当に探索者として登録しますか?」というメッセージが表示されている。
もし無理そうだったら、すぐに逃げ帰ってくればいい。
そんな後ろ向きの決意と共に、俺は「Yes」を選択した。
――探索者としての登録処理を行っています。
無機質な合成音声がスマホから響く。
いよいよこの後、俺の初期ステータスやスキルが決定されるのだ。
――登録処理が完了しました。『安達優太』さんの初期ステータスを表示します。
「いよいよだ……」
緊張で手が震えてくる。
もしもめちゃくちゃ才能があって、初期ステータスえぐかったりしたらどうしよ。
そんな期待を抱くなか、スマホの画面がパッと切り替わり……
安達優太
Lv. -
ATA -
DEF -
AGI -
DEX -
LUC -
DEP -
《スキル》
【ゲーマー】
「……は?」
初期ステータスはLv.1からスタートし、ATAなどの各項目にも最低でも1が表示されるはずだ。
まあ実際にはATA 1スタートなんて人はいなくて、最低でも10、平均は25、才能のある人だと40近くあったりする。
ところが俺のステータス。
1どころかまさかの「-」。
え?何これ?ATAが無いってこと?
DEPも平均値は100ほど。
DEPがあるうちは身の回りに見えないシールドが展開されていて、数値に応じてダメージを防いでくれる。
しかしDEPが0になると、生身の状態に直接攻撃が来ることになりとても危険だ。
DEPが0になる、もしくはなりかけたら即時退却というのが常識らしいのだが、それすら俺は「-」。
そして普通は2~4あるとされる初期スキルもたった1つだけ。
それも聞いたことない、使い方も分からない【ゲーマー】。
試しに『SoDA』内の検索サービスやインターネットで調べてみるが、何一つとしてヒットしない。
「どーすっかな……」
果たしてこのステータスで戦えるのだろうか。
取りあえず、ダンジョンまで行ってみよう。
それで無理そうだったら、諦めて別の方法を考えるとするかな。
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