告白されて断ってチキン南蛮
[奈津はキレイになる。僕が奈津を守る。大人になったら結婚して下さい。僕以外、好きになっちゃ駄目だよ。約束だからね]
良い夢見て爽やかな朝を迎えたのに………
何故か屋上にいる。スーパーの屋上に。角の三角地帯に追い込まれて…両脇は壁、正面は紺色の壁? 壁ドン、憧れの壁ドンだけど近過ぎる。掃除用具入れのロッカーに入ってるような……スペースがない。
今日、中学2年終業式が終って夕飯の買い出ししてスーパーを出たとこをエコバッグを捕まれ、引っ張られ屋上へ連れ込まれた訳で………誰だろ?顔も見えない
『杉下奈津さん、俺はあなたが好きです。付き合ってくだ』
「無理です」
『即答ありがと。何故ダメなの?』
「壁に告白されても…」
『壁って何?』
「近すぎて、壁にしか見えないから。少し離れて下さい。出来れば5歩下がって」
『2歩でよくない?』
「………取り敢えず下がって欲しいです」
やっと2歩だけ下ってくれた。視界良好。深呼吸して
「じゃ、さよなら」
お辞儀して、帰ろうとしたら、またエコバッグ捕まれ
『なぜ帰ろうとする?返事は』
背を向けたまま、相手の顔も見ずに
「えっ、無理ですって言ったし。だから帰ります。さよなら」
『待て待て。壁だから無理って事だよね?ちゃんと顔を見て返事して』
「えっ顔?……そう言えば顔見てない。名前も聞いてない。私、好きな人がいるんです。なので、このままでお別れって事でさよならします。じゃ」
『じゃ、じゃねえよ。おちょくってる?』
「えっ、真面目にですよ」
『何処が?いまだにコッチ見ないし、断るにしても顔見て言ってよ』
「この方が後腐れ無いかなと」
『ふーん。いい根性してるよね。俺は初めての告白なのに無下にされて』
「私は幼稚園の時以来ですよ。告白されたの」
『…………向き合って30分話すると約束しないとエコバッグ離さないからな』
げっ、うざい奴だったの? んー面倒臭い。謝ったら帰してくれるかなぁ? 無理だろうな。知らない男子と話すの30分は長い。けど、しょうがない
覚悟を決め、男子に向き直し
「態度悪くてごめんなさい。エコバッグから手を離して」
『ん〜このままで話そう。俺は大崎優樹。中1の時から気になって告白したんだけど』
「私、好きな人がいるの」
『うん。でも俺の事を何も知らないでしょ。君の好きな人より良い奴かもだし、俺も君の事をもっと知りたい。だから友達から始めようよ』
「えっと……」
『仲良くなる為に、奈津って呼ぶね。奈津も名前で呼ぶように』
「はっ、えっ、強制?」
『優樹って呼んで』
「無理無理無理」
『じゃぁ離さないエコバッグ』
「………条件あります」
『条件?聞くだけ聞くけど』
「仲良くするのは学校以外で。強面イケメンと」
『強面イケメン?』
「ごめんなさい…イケメンと仲良くなると女子から恨まれるやっかまれる。平和な中学生活送りたい」
『…わかった』
「それと、優樹って呼びすて出来ない……優樹君、優ちゃんかなと」
『んじゃ、優ちゃんで。ライン交換持もな。んで、夕飯は奈津が作るの?』
「そうだけど、因みに今日はかチキン南蛮」
『マジで!!?チキン南蛮!早く帰ろう』
「えっ、えっ待って。帰ろうって家まで来るの?てか夕飯食べる気満々だったりする?」
『当然!!チキン南蛮楽しみぃ。早く帰ろうって』
「早く帰ろうって…家知らないでしょ?」
『知ってるし』
「はっ?なんで?ちょっと待ってってば。歩くの早い」
『待たないし、このまま引っ張ってくから』
なぜ……強引すぎる。知り合ったその日に家に…夕飯食べるとか…………春休みになったばっかだけど…嫌な予感しかしない