表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚夢‐ウツロメ‐  作者: みかみや
7/100

7話

 学校というものを私は生まれて初めて体感している。学校は様々な人間がいるが、どれもこれも同じように見える。それはきっと、私が他人と干渉を持てなかったからなのだろう。


 確かに自分も学校が始まってから二週間以上たって初めて現れた人と関わりたいとは思わない。たとえそれが美少女であったとしても最初の一声になる勇気はない。この学校の学力は普通レベルだが、空気を読むことに関しては普通レベルが最高レベルなのではないだろうか。


 だからすべて同じように見える。新しく入ってきた空気は空気でしかなく、空気は空気のままただそこにあり続けるしかなかった。どうやらこれから私はそこにあるだけの空気になるようだ。誰しもが触れているようで、実際そこには何もない。


 しかし学校生活をしていく中で困ったことが一つ。どうやら今朝の不吉な予感は的中してしまったらしい。

「ちなみにこの学校、一年生強制入部だから…何か興味のあることや、やりたい部活動ある?」


 自己紹介の時にも思ったが、先生に強制的に好きなもを言わされるあれがなくてよかった。先生は私に配慮してくれたのだろうか。あの家には趣味に関係するような、というより個に関係するようなものが何一つなかった。私に好きなものなどあったのだろうか。


 しかし昔の私が好きだったものを、記憶がない私が好きになるとも限らないだろう。だから新しく好きなものを探そうと…しかしそれも面倒に感じてしまう。こんなときに思うのはまた言い訳ばかりだ。


「その様子ならそうね…いろいろな部活を見てきたらどうでしょう。体験入部期間は終わってますけど。そこで友達もできるかもしれないし」


 先生が家庭の理由とか何とかで部活を免除にしてくれればいいのにと思ったが、先生は仕事でここにいる。それにこの先生は入院中にお見舞いに来てくれた人でもある。とりあえずそうしてみますとその場を後にして、私は荷物を取りに教室へ戻った。


 放課後ということもあり、教室は私の荷物だけになっていた。荷物を机からとろうとすると、机の中に大量のプリントが入っていることに気づいた。見て見ぬふりをしようかと思ったがあとが面倒だしすべて持って帰ろうと強引に紙束を突っ込んだ時、手紙が入った封筒を見つけた。


 その封筒は保護者への手紙とかではなく、私の名前が定規で、カタカナで引かれた怪しげなものだった。手紙の内容も同じく定規で。


「キョウ、ホウカゴ4ジゴロ、ブシツトウキタガワ3カイイチバンテマエノキョウシツデオマチシテイマス。ワタシハアナタヲシッテイル。」


 なんて読みにくい、と思うその前に私は動き始めていた。これは犯行予告なのか、それとも新手のヤンデレ系ラブレターなのかきっとそうに違いないと思いつつ、その部活棟を目指した。


 私はあなたを知っている。初めて私を知っている知らない人に会える。相手のことを知らないのは申し訳ない気もするが、今は自分のことを知っておきたかった。


 なるほどいつだって興味があるのは自分自身の事なのだろう。やがて足は止まり、その教室の扉の前についた。ノックをしたが返事はない。まだ誰も来ていないのだろうか。

 失礼しますと扉を開けると、なんだか倉庫のような場所だった。掃除されている様子もなくなんだか息苦しい。そしてバタンと扉が閉じた音がして次の瞬間、私の視界は暗転した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ