40話
目の前に現れた大きな神社は、縁結びで有名な神社のようだ。そんな神社でやるべきことは一つ、全身全霊で神に祈りを捧げおみくじを引くのである。犬を飼うと良しとか出てこないかな。
「月山君どうだった?何吉?恋愛欄なんて書いてあった?」
餌につられた土中さん、ああ神様ありがとうついでに恋愛欄もよろしくお願いします。
「ん…、ん?半吉?半吉ってどこだ、吉ってことはいいことなんだよな。それとも半分吉で半分凶だったりする?」
「なんか変なのでたね、あーあここで有名な吉凶とかだったら、あなたはすでにその意味を知っている、つまり吉ですとかホローしてあげたのに。」
巫女さんでも知らないのが出たりするものなのか、まあすべての神社で共通のものが出るわけじゃないのだろう。それよりも珍しく土中さんのネタが出たことに喜ぶべきだ。
「ちなみに私は…、じゃーん!大吉でーす。持ってる女、つまりもてる女ってことだね。」
おみくじはダジャレで解釈するのが正式な読み方なのだろうか。これではもってない男になってしまう。
「そうか分かったぞ、おみくじには大吉を出す必勝法があるんだね土中さん。そのおみくじ必勝法教えてくれ。」
「いいでしょう、おみくじ必勝法を伝授してあげます。まず1万円札をすべて100円玉に換金します。次におみくじをひき、大吉が出るまで引きます。これを何回でも繰り替えし、大吉が出たら、出してくれた神様と巫女さんに感謝して、残りのお金は賽銭箱に捨ててお財布をきれいに軽量化してから帰ります。ね、簡単でしょ。」
なるほど神様と巫女さんの同情を誘えばおみくじは大吉がでるようにできていたのか。これは革新的だ、出るまで引けば必ず出る。
「ま、月山君は大吉じゃなくてもモテモテだからいいじゃない。」
「どこが、半吉なんて引く男は引かれる運命なんだよきっと。」
よく分からないならいいですとプリプリしている土中さん、ありがとう神様、ありがとう半吉。
「そういえば土中さん、恋愛欄なんて書いたあった?教えてくれたら教えるよ。」
「んとね、怒涛の勢いでとてつもない展開を迎え、最後には無事に結ばれるって書いてあるよ。すごいねこのおみくじ具体的。」
「私は、いつでも一番近くにいる人を好きになるだってさ。誰だろうね。」
おみくじなんてものは所詮気分次第だろう。それが当たってるように思えるもそうでないように思えるのも気分次第なのだから。
「へっへへえー、誰のことだろねー。まあ所詮おみくじだから、期待しない方がいいよ月山君。」
それ巫女さんが言いますか。まあ土中さんも最後には結ばれるそうだしいいんじゃないだろうか。
「あ、そろそろお昼の時間だよ。ちょっと電話しなきゃ。」
気が付けばもうそんな時間になっていた。そういえば私には連絡手段がないのを忘れていた。土中さんがいてくれて本当に助かったが、さすがに午後も明日も頼るわけにはいかないだろう。何とかしなければならない。
「もしもし土中です。会長そろそろご飯ですけど…、あはいこっちは順調です。どうもありがとうございます。いえそれでもですよ。それで会長、どこに行けばいいですか…、はい、はい分かりました。たぶんあと20分くらいで着きます。それではまた~。」
電話を終えた土中さんが、上機嫌で帰ってきた。
「電話ありがとう。それで先輩はなんて言ってたの?」
「ああ全然大丈夫、それとここに集合だってさ。」
そういって土中さんはスマホの地図アプリを見せてくれた。こういう時にスマホというのは非常に助かる。やはり私も契約するべきだろうか。
「はいっ、じゃあ会長たちのところまでレッツゴー!」
土中さんはいつにも増してテンションが高い。きっとこの遠征という特別な空気感も、この子の気分を高揚させている要因の一つなのだ。ともかく、私と一緒で退屈しているわけではないようで安心した。