002:入隊式と鬼教官
入隊式と鬼教官
二次試験が終わって一週間がたった、第二次試験の結果がそろそろくるんじゃないかと思いそわそわと玲は待っていると合格通知ではなく京が家にやってきたのであった。
「合格祝いでケーキを買ってきちゃった」
「お前は俺の彼女か」
「しかもまだ合格してないし」
「あ、ごめんまだだった」
「と言うか、俺が合格する前提って言うのがおかしいだろ」
「だって、お前の親父さんテレビとかに出る超有名な自衛官じゃん」
彼の言うとおり玲の父親は陸上幕僚長と言うえらい立場からテレビなどにもでなければいけないらしい。子供の頃は、自衛隊なんて入りたくないと思っていた玲だがなかなか面白そうな一面もあったりして今は自衛隊に興味津々なのだ。そんな、雑談をしている時であった何やら宅配便がやってきた。宅配便のお兄さんからピザのようなサイズの箱を受け取った。一瞬実家からかと思ったがよく見ると陸上自衛隊からだった。中を開けるとそこには陸上自衛隊の制服があった。しかし、これは合格通知ではない。合格通知はどこだと思っていると、制服を箱から出した瞬間ダンボールのそこに合格通知があった。
「やったな」
「ありがとう、受かったよ」
「今夜は祝いだな!」
その夜は、京と酔いつぶれるまで酒をのみつずけた。そして、次の週自衛隊の入隊式が行われ流事になった手紙のなかには集合時間の2時間前にこいとの命令が下されていた。当日、玲は約束どおり2時間前に事務所を訪れた。そこにはまだ誰もいなく玲は再び時計を見直すがやはり約束通りの時間に来ていた。自衛隊の事務所の椅子に座ると1人の女性の自衛艦が出てきた。
「おはようございます、あなたが脇阪玲くんね」
「こんな朝早くに呼び出してごめんね」
「私は坂宮花蓮一等陸士です」
本当は、ものすごく朝は低血圧で起きれない玲だが昨日は京に泊まって今朝早く起こしてもらったのだ。レイはしれっと嘘をつきつつニッコリと彼女に微笑んだ。
「もともと、朝は早起きなので大丈夫ですよ」
「さすが、脇阪陸上幕僚長の息子さんね」
「父をご存じなのでですか?」
「ええ、もちろん陸上自衛隊の隊員ならだれでもしってるよ」
あんな平凡な顔してる人が有名だなんて玲には信じられなかった。玲からすれば、父親など仕事から帰った後、野球を見て酒を飲むごく一般的な父親でしかなかったのであった。
「その、脇阪陸上幕僚長の息子さんに今日は入隊式で入隊生の代表をしてもらいます」
「なんで、僕なんですか」
「もちろん、そこらへんの中学と同じように試験の結果がいちばんだったからだよ」
試験の結果が一番で入隊式の答辞をするのは玲としては良いのだが、いまだに自分が入隊式の答辞をするのが信じられなく花連にもう一度確認をすることにした。
「まじですか?」
「まじです」
もはや、父親が陸上幕僚長ともなるとこねなどでそんな立場になれるだろう。実際彼の父親は陸上幕僚長だ、しかし入試の成績を見てもどれもがトップという明らかに彼の実力で掴み取った役だったのだ。
「それでは、会場に行きましょう」
「ちょっとまっ・・・」
第二次試験の結果表を見ていると、彼女はものすごい力で引っ張って、危うく玲の腕がもげるところだった。彼女の腕の力に任せるまま玲は会場へと足を運んだ、そこにはとてつもないほどの大きなステージ、幕には我が国の国旗が掲げられステージにも多数の上層部の方達が座られる席が置いてある。
「ってここ国立●技場じゃないですか」
「そうよ、だって国の機関だものそれなりには盛大にしなければいけないわよ」
「てことは...」
「君はここの大きなステージで答辞してもらうことになる」
そこに出てきたのは、屈強な体の男性でいかにも自衛隊に所属しているとすぐにわかってしまいそうな人であった。
「あなたは...」
「失礼、私は軍師長の石山だ」
「こちらこそ、名を名乗らず申し訳ありません。自分は脇阪玲二等陸士新人であります」
「脇阪...」
「も、もしかしてあの脇阪陸上幕僚長の息子さん」
すると石山軍師長は硬直して急に床に頭を突きつけるような感じで玲に対して土下座をしたのである。この時間帯がまだ朝早くで軍の中間層の人たちしかいなかったのがまだ幸いである。もし、
「知らぬとはいえ大変失礼しました、まさか脇阪陸上幕僚長の息子様だとは」
「いっえ...構いなくあくまで僕はただの二等陸士なので」
「普通の二等陸士の扱いをしてくれると助かります」
「ささようでございますか」
「そうですよ、軍師長後輩を困らせてどうするんですか」
「それもそうだな」
「脇阪二等陸兵、竹中教官だけには気をつけろあの女はやばい」
「誰がやばいって、石山軍師長?」
「い、いえなっなんでもありません」
「ちょっと、お前あとで私の部屋に来い」
石山軍師長のかたをぎゅっと握りしめ、彼のことを押しつぶすような怒りのオーラで威嚇している。彼女こそ我が軍でいや世界で一番厳しいと言われている教官、竹中教官なのだ。彼女は玲のことを睨み付けると、突然ふと思いだしたように彼に言った。
「君が脇阪陸上幕僚長の息子さんか、彼にはとてもお世話になったよ」
「だから、私も可愛がってやろう」
「あ、ありがとうございます」
この時玲は可愛がってやるの意味を完全に理解した。無論その意味はシバいてやるの一言しか彼には思いつかのかったのだ。玲は気のせいだろうと信じて入隊式の答辞練習に励もうとしていた。
「この穏やかな桜が咲く頃に私たち...」
「違う!」
「もっと、大きな声で!!」
玲の想像どうり彼女の訓練はスパルタで彼はこの時石山軍師長の言っている意味をようやく理解したのであった。しかし、りかしたところで手遅れいやすでに彼が答辞に選ばれた時点で手遅れであった。
「はい!!」
「この穏やかな桜が咲く頃に私たち...」
「もっとだ!!」
竹中教官のご指導のもと玲はたった2時間で完璧な答辞ができるようになった。彼女のおかげで無事入隊式の答辞もお終わり玲もかなり自分の答辞には満足していた。さすが、世界一の鬼教官と言われているだけあると玲は思ったのであった。