第24話 獣人の村
森を数分ほどで歩くと、村が見えてきた。
「着きましたよ、ルーナ様」
「結構、普通に村ね」
目の前に広がるロジィが住む村は人間が住む村と一見違いの分からないものだった。
獣人が普通に暮らしているはずなので、流石に入ってしまえば違いはあるのだろうが。
「そうですよ、普通の村ですよ?」
ロジィはルナティアの言葉に不思議そうにルナティアを見返した。
それはそうだろう。
ルナティアの事をエルフ族だと思っているのだから、魔人の村くらいいくらでも見たことがあると思うのが普通の感覚だ。
「え、あっ、そういえばだけど、ロジィ君」
ルナティアは誤魔化すようにロジィに言った。
「なんですか?」
ロジィの目は輝いている。
早速ポカをやらかしたルナティアだったが、多少の事なら誤魔化せそうだ。
「私の事だけど、ルーナさんって呼んでくれないかな?」
「なんでですか?」
ルナティアの事を四天王シュトライゼンから密命を受けた凄い人だと勘違いしているロジィは不思議そうに聞き返す。
「それはほら、私ってほらね……」
ルナティアは意味深そうに言うと、ロジィは納得したように頷く。
「なるほど、ルーナ様はあくまで普通の体調が優れないエルフ族。ルナティア様の正体が悟られるような言動は控えろ。……そういうことですね」
小さいのにロジィはなにかと気が利く少年だった。
ただ騙されやすそうなのが玉に傷だがそれは大人になっていくうちに直していけばよいだろう。
「そういうことよ。私のことはルーナさんとでも呼んでね」
「はい! 分かりました! ルーナさん」
(うぅ、可愛い。騙してごめんね。ロジィ君)
まったく疑うことなく、無垢な眼差しで見つめるロジィにルナティアは小さな罪悪感を覚える。
だが今のルナティアにはそんな事を気にしていられる状況ではなかった。
「さて、じゃあ行きましょうか。ロジィ君」
「はい!」
村に入るとロジィと同種族と思われる村人たちの姿が所々に見られた。
犬耳に尻尾にふわふわとした毛皮。
顔は犬というよりはかなり人間に近い。
魔人全般に言える事だが、体のいたる部位に動物や魔獣の特徴が見られる事の多い魔人だが、顔はかなり人間に近い事が多い。
たまに顔も動物に近い特徴も持つ魔人もいるはそれはごく稀だ。
その所為か村の人々は見知らぬルナティアの事をチラチラと見る事はあっても、特に不審そうに見ている者はいない。
村の中を歩くルナティアは横を歩くロジィに話しかけた。
「ロジィ君、どこに行くの?」
するとロジィは耳をピクリとさせた後、ルナティアを見上げた。
「とりあえずは僕の家ですね。もしかしたら村長の家に行くかもしれませんが、先に父さんと母さんにルーナさんの事を紹介しないといけません」
流石に子供に拾われてきた捨て犬じゃないのだからそれは必要だろう。
半日とはいえ寝床を借りるのだ。
ご両親に挨拶をしなくてはいけないのは当然の事だ。




