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第22話 エルフ族の英雄

「そうなの。私はエルフ族のルーナ。今、悪い魔人に追われてて困ってるの。この近くに隠れられる洞窟とかないかな?」



勘違いしているのをいい事に目をキラキラさせながらこちらを見ている獣人の少年にルナティアはしれっと嘘をつく。


流石にどこまで情報が出回っているか分からないので本名は出せない。


それにエルフだと思ってくれた方が人間と言ってしまうよりも警戒感が薄くなるはずだとルナティアは思った。

エルフと思い目をキラキラと輝かせている少年には悪いがそういう事にさせてもらう事にした。


ルナティアの言葉を聞いた少年は目のキラキラ度がさらに増し、尻尾のブンブン具合も激しくなった。



「そ、そうなんですか! それはいけません! 僕達の村で匿いますから、ついて来てください!」



「えっ?」



できれば魔獣などに見つかりづらい洞窟を紹介して欲しかったのだが、少年の予想外の返答にルナティアは驚きの声を出す。


いくら悪い魔族に追われていると言ったとはいえルナティアと獣人の少年は初対面だ。

ルナティアが本当の事を言っているとも限らないし、本当はルナティアが悪い魔人の可能性も0ではない。


事実、ルナティアは仕方がないとはいえ嘘をついている。


少年の行動はあまりに不用心ではないのだろうか?

それとも魔人の中ではこれが普通なのだろうか?


これが人間界ならば町の兵士がいる駐屯所に連れて行ってくれるくらいが精々だろう。



「いや、でもご両親や村の人がダメって言うんじゃないかな?」



ルナティアはそう少年に諭した。


少年はああ言ってくれたが、あくまでそれはこの小さな少年の独断だ。

家の人がYESと答えるとは限らない。


そもそもルナティアとしてはあまり魔人がいる村にはできれば近づきたくはないのだ。

どこから情報が洩れるかなんて分からないのだから。

だが、少年は余程自信があるのか大きな声ではっきりとした声で答える。



「安心してください! 大丈夫です! 僕たちの村にエルフ族の方を邪険にする方なんて絶対にいませんから!」



どこからの自信なのだろうか。

余程エルフ族というのは品行方正なイメージがあるのか。


確かにルナティアのイメージから言っても魔人の中ではエルフのイメージはそこまで悪くない。


他種族の魔人なら問答無用で遠慮なく斬りかかっていける自信があるが、エルフ相手だとルナティアもなぜか少し躊躇してしまうそんなイメージがある。



(まぁ明らかな敵なら攻撃するんだけど、ちょっと話を聞いてみようかなってなるのよね。不思議と)



「獣人とエルフって仲いいの?」



自らエルフと名乗っているのにルナティアはそんな間の抜けた質問をする。

実際はエルフではないのだから何の種族と何の種族が仲が良いなど分かるはずもないので仕方がない。

すると、獣人の少年は驚いたように大きな瞳を更に見開いた。



「仲が良いなんてとんでもない! シュトライゼン様はいつもこの辺りの村を守ってくださっています! エルフ族の方のピンチに手を上げない人なんて僕の村にはいません」



(ん? シュトライゼン? なんで奴がこの話に出てくる? 今はエルフ族の話をしてるのに)



「シュトライゼン……様がなぜこの話に?」



ルナティアは無知を承知で尋ねてみる。

すると獣人の少年は一瞬ポカンとした後、大きな声で笑い始めた。



「ご冗談を! シュトライゼン様は魔王軍四天王筆頭にしてこの地域一帯と魔王様を守護されている偉大なお方! エルフ族の英雄ではありませんか!」



「あっははー、そうだったねー! お姉さんうっかりしていたよー!」



獣人の少年とルナティアは目を見合わせて大声で笑いあう。



(マジか、あいつエルフだったのね。黒騎士のイメージしかなかったから全然気づかなかったわ。まぁ確かにイケメンはイケメンだしね、ぺっ!)



四天王筆頭にして黒騎士と呼ばれる魔人シュトライゼンがエルフだとルナティアはこの時初めて知ったのだった。

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