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第15話 魔界七不思議

「お帰りなさいませ、ルナティア様」



ルナティアと目が合ったミーニャは笑顔のままそう言うと、椅子に座った。



「ただいま。……それにしてもミーニャはいつも気配消していきなり現れるよね。慣れたけど」



「メイドですから」



笑顔で言うミーニャだが、メイドは気配を消して後ろから忍び寄る職業ではない。


ルナティアも流石にもう慣れたが、できれば普通にノックして部屋に入ってきてほしかった。



(まぁ美少女は正義だから別にいいんだけどね)



「それはそうとルナティア様」



「ん? なに?」



「魔王様と喧嘩されましたか?」



「ぐっ……」



(なぜバレた?) 



ルナティアはまだこの事は誰にも話してはいない。


それは当然だ。

たった今、魔王と別れたばかりなのだからそもそも話す時間すらなかったのだから。



「魔王様が凄く悲しそうな顔をされて廊下を歩いていましたよ」



(なるほど)



今別れたばかりなのだから、ミーニャが廊下ですれ違うのもおかしくはない。


あまりミーニャに心配はかけたくなかったので言いたくはなかったルナティアだったが、観念して、丘の上の花畑での話をミーニャに話すことにした。


とはいえ、魔王の母親が人間であるという事はルナティアは話さないことにした。


父であるグラガドは知っていると魔王は言っていたが、ミーニャもそうだとは限らないからだ。



「魔王の奴がね、私が現れる前から人間界侵攻作戦を止めようと思っていたらしいのよ」



「はい、知っています」



「でもね、他の魔人達は人間界侵攻を願う者がとても多いの」



ルナティアに言われるまでもないだろう。


ミーニャはメイドとしてだが魔王に仕えているのだ。


そうでなくとも魔人であれば、他の魔人の思想などルナティアよりもよく知っているはずである。



「そうですね、ですから魔王様は裏から人間界侵攻を止める為色々な活動をされていました」



「そう、ミーニャも知っていたのね。それでそんな時に私達勇者パーティーが現れた……とは言っても私が魔王と出会った時には私一人しかいなかったんだけど」



魔王が現れたのは既にカーナとラミアスを逃がした後の事だった。

そしてシュトライゼンに最後のトドメ刺される寸前に魔王はルナティアの前に現れた。


ミーニャは不思議そうな顔でルナティアの顔を覗き込んでいた。


ルナティアの言いたいことがあまり理解できなかったらしい。



「それで魔王様はルナティア様に恋をなされたという事では?」



ルナティアも最初はそう思っていた。


あまりにも不可解だし、魔王に求婚されるなどふざけた話でしかなかったが、それでもルナティアはそう感じていたのだ。


「違うでしょ。魔王は人間界侵攻作戦を止める方法を探していた。そんな時に私が現れたの。魔王はこう思ったのよ。私と結婚さえすれば魔人達も魔王の結婚相手の故郷である人間界には手を出せないと。要は魔王は人間界侵攻作戦を止めさせる大義名分が欲しかったのよ」



普通に考えればそうとしか考えられない。


そうでなければ魔人であり魔王のあいつが人間でしかもそんなに魅力的でもない自分に恋心を抱くなどあり得ない。

ルナティアはそう思った。



「それはルナティア様の只の想像ではありませんか?」



ミーニャがそんなルナティアの考えに異議を唱えた。

それは今までルナティアの話を聞いているだけだったミーニャには珍しい事だった。


ミーニャの言っていることは間違ってはいない。


魔王からはっきりとそうだとそう言われたわけでなく、今言ったことは全てルナティアの想像でしかない。


だが、恐らく間違いない事だろう。


人間界侵攻作戦の実施のタイミングとルナティア達の出現がぴったりと合った、いわば偶然の産物なのだ。



「確かに想像だけど、絶対そうで——」



「私と父上あまり似ていないと思いませんか?」



突然、ミーニャがルナティアの発言に被せる様にそんなことを言いだした。


ルナティアの答えは当然YESだ。


どうやってあんないかつい魔人からこんな天使が生まれたのかは恐らく魔界七不思議の1つだろう。


違うかもしれないがきっとそうに違いない。



「んー、ちょっと似てない気がしなくもないようなー、お母さん似だったのかな?」



絶対母親似だ。間違いない。


そう確信しているが、はっきり言ってしまうとグラガドさんに失礼なので、ルナティアはそうやんわりと返すことしかできなかった。

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