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17話 告白

「……え?」




 その提案を聞いて一瞬耳を疑った。

 一体何を言っているんだ、この人は? と。




「だーかーら! あたしとパーティーを組みましょうって言ってるの!」




 しかしクレアさんが言うことは変わらない。どうやら僕の耳がおかしくなったわけではないようだ。

 いや、けど……




「受付嬢の仕事は?」




 流石にこの世界でも仕事をほっぽりだして他のことをするのは許されることでは無いだろう。だからクレアさんの提案はありがたいけど、それを受けるのは少し躊躇ってしまう。けれど次の瞬間、クレアさんはそんなことを気にする素振りもなくこう言い切った。




「辞めるわ」




「……え?」




 再び自分の耳を疑った。しかし彼女の顔を見る限り、どうやら本気でそう言っているらしい。




「えっと、その、何で?」




「何でって?」




「いや、僕と一緒にパーティーを組むより、受付嬢の仕事をしていた方が安全じゃない? わざわざ命の危険があるような事をしなくても今のままの方が良いと思うんだけど」




 クレアさんのような親しくて、なおかつ綺麗な人が僕と一緒にパーティーを組んでくれると言ってくれたのはもちろん嬉しい。

 だけど彼女の事を考えればその選択はしない方が良いに決まっている。それは火を見るより明らかだ。




「それは……そうだけど……。でもあんたはずっとこの街にいるわけじゃないでしょ?」




「え、うん。そうだけどよく分かったね」




 僕はこの世界に来ることになってから密かにこの世界の事を隅々まで見てみたいと思っていた。だけどそれは今まで表に出したことは無いはずだ。なのに何故クレアさんは僕のその気持ちを見破ったんだろう?




「そりゃあ冒険者は少なからず旅をするのが当たり前だもの。あたしだって別の街からこの街にきたわけだし」




「へー、そうなんだ」




 なんだ。単に僕の内心を見破ったからじゃなくて偶然か。でも、なんで僕がこの街にずっといるわけじゃないことが受付嬢を辞めることにつながるんだ?




「へー、そうなんだって……。はぁ。あたしが言いたいこと、ちっとも分かってないじゃない。この鈍感め……」




「……なんか、ごめん」




 いまいちクレアさんの言いたいことが分からずにいると、彼女は一つため息をついてそう言ってきた。その顔は少し赤くなっている。鈍感って言ってるから怒らせてしまったのかもしれない。




「いいわよ。なら恥ずかしいけど言ってやるわよ」




 するとクレアさんは独り言を呟くようにそう言うと、何かが吹っ切れたようにこっちに振り向く。そして口を開いた。




「あたしはあんたと一緒にいたいの! だからあんたが別の街に行くって言うならあたしも一緒についていきたいの! わかった!?」




 その言葉の意味を僕の脳で処理するのに十秒。そしてその言葉から、先程からクレアさんが何を言いたかったのかを悟ることに十秒。




「えっと、それって……つまり……」




 心臓がドクン、と。

 大きく、そして激しく脈を打つ。

 その鼓動が脳に直接聞こえてくる。

 うるさい。

 僕はクレアさんの言葉を聞きたいんだ。




「えぇ、そうよ! あたしは、あんたのことが……す……す……好き……なのよ……」




 夕焼けの色ではない、明らかに羞恥心によって彼女の顔は真っ赤に染まっている。

 嬉しい。クレアさんのような素敵な女性から告白されたことは今まで無い。それどころか僕は嫌われる立場だった。

 だからこういうときに気の効いた言葉の一つでも言えたら良いのだが、僕にはそれができない。ただ、それでも言えることはある。




「そう、だったんだ……。ありがとう。嬉しいよ」




 顔が熱い。恐らく今の僕もクレアさんと同様に真っ赤になっているんだろうな。

 おかげで彼女の顔を直視することができない。




「あ、あんたはどうなのよ。その、あたしのこと、どう思ってるの?」




 恥ずかしくてお互いになんとなく顔を合わせられずにいると、クレアさんがそんなことを訊いてきた。……ここは正直に答えないとダメだな。




「……分からない。クレアさんがそう言ってくれたことに対して僕は凄く嬉しい。けれど僕がクレアさんのことをどう思っているのかは僕自身もよく分からないんだ」




「……なによ、それ」




 そうだよね。正直に言ってもクレアさんからしたらそう思うのも当然だ。

 だからここは僕の過去を少しだけ話そう。




「僕は今まで周りの全ての人間から邪魔者扱いされてきた」




「……」




「だから心のどこかで男も女も関係なく人間は全て僕を排斥しようとする者ばかりだと思い込んでいたんだ」




「……」




「実際に僕がこの街に来て、冒険者ギルドに登録した日も冒険者達からバカにされ、辞めればいいと言われたしね。その時どこの世界に行っても僕は嫌われ者なんだと悟ったんだ」




「それは……違うわ……」




 ありがたいことにクレアさんは僕が今まで思っていたことを否定してくれた。それが嬉しくて自然に笑みが零れる。

     



「でもクレアさんは違った。こうして僕に好きだと言ってくれている。それは凄い嬉しい」




 だけど、と僕は話を続ける。




「それと同時に僕は困惑してもいるんだ」




 どうしたら邪魔者にならないか。

 無関心でもいいから、少しでもいいから、僕の居場所が欲しい。

 そればかりを考えて生きてきた。

 だから誰かに好かれるなんて今まで想像したことすらなかった。



 自分が人を好きになることなんて尚更、考えたことがない。




「だから僕はクレアさんのことをどう思っているのか、全く分からないんだ」




 そう言い終わると同時。

 クレアさんが僕のことを抱きしめてきた。




「邪魔者なんかじゃない。あたしはあなたが必要なの。居場所が必要ならあたしがあなたの居場所になる。だからもうそんなことを言わないで」




 嗚咽を必死に押し殺すような声でクレアさんはそう言った。それに対して僕は自然と笑みが零れるのを自覚しながら彼女に礼を言った。




◇◆◇◆◇◆




 それからクレアさん……改めクレアと別れて宿。クレアになんだかよそよそしいから、さん付けで呼ばないようにしてくれと言われてから一時間程たった頃だ。

 夕食を食べ終えた僕は自分が借りている宿の部屋に戻ってきた。




「よいしょっと」




 そして戻ってきて早々、僕は部屋の中にある大きな机の上に、防具屋で購入したばかりの不死者のコートを広げる。これからこのコートに付いている邪神の呪いを解こうと思うのだ。





「[透視]」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

邪神の呪い


 使用者の生命力を徐々に吸収し、死に至らしめる呪い。邪神の魂の欠片が呪いの核となっており、解呪士では解呪できない。この呪いを消すには呪いの核である邪神の魂の欠片そのものを壊さなければならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 今一度透視スキルをつかってこのコートに付いている邪神の呪いについての情報を視る。




「できるか分からないけど、一回やってみるか」

ラブコメを読むのは好きなんですが、書くとなると非常に難しいですね。

もっとこうしたほうが良い、などアドバイス等あれば教えて頂けると幸いです。

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