85話 会議はステマニア国で その七
外で大量の虫達と交戦していたラブクルス聖教国の使者達が、ステマニア国国内にある教会に戻ってきていた。彼等の露出している肌は切り傷だらけであった。皆疲れきっており、教会内の長椅子に力無く座っている。中には体を押さえてブルブルと鳥肌を立てながら震えてる者もいる。傷は大した事ないが、精神的にかなり傷付いているようだ。
「気持ち悪かった…」「あんなに大量の虫と戦う事になるなんて…」「あいつらただの虫じゃねぇ…」「こんなの聞いてないわよ…」「え、何!?今耳元でブンブン言わなかった!?」等と口々にし、トラウマを植え付けられている。
そこに教会のドアが開きツカツカとイニシウス達が入ってくる。使者達は姿を見なくてもその足音ですぐにイニシウスだと分かる。足音が聞こえた瞬間に立ち上がり、その音の方向に振り返る。イニシウスを先頭にレミルとメルンがこちらに歩いてきた。彼等は皆、説教されると思い、身構える。ステマニア国から大型虫モンスターを追いかけ、途中でそいつが吐き出した大量の虫達と戦闘になり、見失ってしまった。だが、逃げた方向は魔王不在とされる魔国の方だったと。これは誰から見ても失態である。お叱りを受ける事は誰からしても当然と思えたがイニシウスから返ってきた言葉は以外なものだった。
「そうか…、ご苦労。おそらくその魔国に逃げ込んだな。上に報告しておこう。」
明らかにいつもとは様子が違うイニシウス。教会の長椅子にドカッと座るが、会議室に向かう前よりもだいぶテンションが下がっている。心なしか、肩の位置も下がっている。目に見えて落ち込んでいるのが分かる。そしてこれは見覚えがある。以前にも同じような事があったが、これは何か上手くいかなかった時のテンションだ。意を決して使者の一人が問いかける。
「あの…、イニシウス様…。何か、ございましたか?」
あぁ?と口にしてないが、そんな雰囲気で使者を見上げる。少しの間があり、はぁとため息をついて口を開く。
「ああ、こっちもなんの成果もなかったわ。ステラに豊穣の奇石の事聞けなかったし、冒険者ギルドの長は不在だったし。まったく…。面倒くさいジジイ連中にどう説明したものか…。」
長椅子の背もたれに身体を預け、今後の対応を思案しているであろうイニシウス。サングラスを掛けていても、全身から滲み出るオーラで本当に面倒くさがっている事が分かる。虫型モンスター襲撃の後、城に戻ってもステラと接触する事は出来ず、その後に冒険者ギルドに行きギルド長に面会を求めたが不在だった。使者達の失態も合わさって何かしらの罰が下る事は明白で皆テンションは低かった。
〜レムリア城・客間〜
「アドニス達よ。ハートブラッド国に行く準備が出来た。案内してくれ。君達にとっては良い時間帯だろ?」
ステマニア国での会議の報告を受けて小休憩を挟み、日が沈んだ頃にアドニス達を訪れたレムリア。ハートブラッド国へ情報を手土産に行くのだ。
「配慮していただきありがとうございます。しかし、よろしいのですか?そんなに馬車があるとは思えませんが…。」
はい?馬車?君達馬車で行くと思ってるのかね?
「心配しなくても飛んで行くぞ。」
「え?」
「うん。」
アドニス達のポカン顔に少し吹き出しそうになる。美形が台無しだ。




