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魔王転生  作者: 紫舜邏 龍王
より良い国作り
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76話 新たな仲間

 楽しいお茶会の時間はあっという間に過ぎていく。辺りはすでに暗くなりつつある。


「そろそろお開きしましょうか。」


「えー、帰りたくないな…。」


「ちょっと、レムリア…。仕事があるでしょ…。」


「まぁ、そうなんだけど…。なんだろう、帰ったらとてつもなく面倒事が待ってる気がする。」


「なんなら泊まってく?」


「良いの!?」


「良いわけありません!帰るよ!」


「はい…。」


「本当に貴方達、仲良いわね。」


 レムリア、ジララはピオニーに別れを告げ、アスリオーネ城を後にする。


 しばらく歩き、いくつかの村を過ぎたあたりで、ちらほらと虫妖木が見えてくる。ここでよく目を凝らすと薄ぼんやりと結界が見えるのだ。これがレムリア国とアスリオーネ国の境界でもある。この結界が無ければ、向こうに見えるのは密度の高い虫妖木の森だ。


「ねぇ、レムリア…。あそこの開けた場所見て。」


 ジララに言われた方を見るとそこには虫妖木がなく、ちょっとした広場になっている場所があった。そして、結界付近にはそこに建物が建つであろう土台のようなものがあった。おそらくここに結界を行き来するゲートが建つのであろう。皆んなにほぼ丸投げしたに近いがちゃんと進めているらしい。アスリオーネ側はドワーフ達が建築する事になっている筈だが、今は夜なので今日はもう終わりみたいだ。ここには誰もいない。


「ゲート。もう作り始めてるんだな。仕事が早い。」


 そして結界を越える。ピオニーに叱られる事を承知で結界に穴を開ける。心の中で、これは練習の為で仕方のない事だ…と言い聞かせて。


 そうしてレムリア国側に戻ってくると、こちらも同じくゲートの土台が出来ていた。向こうと違うのは暗くなった今でも建築中だという事だ。


「あ、レムリア様、ジララさんお帰りなさい!」


「ただいま!まだ作業してたの?」


「ええ、キリの良い所で終わらせたいんですけど、手が止まらなくてですね。」


「もう暗いので続きは明日からの方が良いのでは?」


「そうですね。今日はやめます!あ、そういえば、うちのリーダーがゲートの打ち合わせ後にディアナさんと神社の打ち合わせに行ってます。たぶん、その報告書が城の方に提出されてると思いますが…。」


「分かった。帰ったら確認するよ。」


 城へは瞬間移動で帰る。虫妖木が密生する景色から豪華でありながら落ち着いた雰囲気の家具が並ぶいつもの自室へと変わる。


「ジララ、付き合ってくれてありがとう。また、今度遊ぼう。」


「もちろん!いつでも言って!この後の仕事も頑張ってね!」


 あぁ、そうだ…。たぶん面倒な事がたくさんあるぞ…。と思いつつ、ジララを見送った後でフローラが入ってくる。


「失礼します。お帰り早々で申し訳ないのですが、レムリア様との面会を申し出ている者がおります。広間に待機させてますので、お会いして頂けますか?」


 変わらぬいつもの笑顔のフローラ。不思議と嫌と言わせないオーラだ。


「分かった。まぁ、なんとなくそんな気はしてたから。行こうか。」


「よろしくお願いします。」


 そして、広間へ向かう。その間もフローラから各報告を聞く。各区域の事、国外の情報、冒険者の動き。書類に纏められた物があるので、詳しい事は後で確認する。


 廊下を歩き、大きな扉に辿り着く。もちろん扉を開けるのはフローラだ。もうこの身体にも慣れたわけなので、物を壊す事は無くなったが、扉だけは触りたくない気持ちが残っている。ガチャリと難無く扉を開けるフローラ。開かれた扉から中を確認すると、複数名の人外達がいた。その先頭には見慣れた人物が五名。一人は河童のリーダーであるアクア。そしてレムリアの眷属である吸血トリオと呼ばれるアリオス、イオル、ラフィの三人、同じく眷属でレムリアの影武者、フェナカだ。その後ろに見慣れない者達。この状況…分かりそうで分からない。とりあえず、話を聞こう。


「では、アクアさんから報告を。」


「はい、今現在レムリア国国外にて、温泉街を作っている訳ですが、その付近の火山を根城にしているヘルハウンド達と交戦、なんやかんやあって捻じ伏せ、我々の傘下に納めました。今後彼らを温泉街の管理者として置こうと思い、レムリア様の許可を頂きに参りました。」


「如何でしょうレムリア様?この件に関しては私が書類に纏めましたので、後ほど、確認して頂きたいです。」


 ヘルハウンドなんて初めて見た。思ったよりオオカミっぽいんだな。そして群れのボスと思われる奴がめちゃデカい。かなり威圧感がある。あれを捻じ伏せるとかかなりやるな、河童達。


「そこのでかいヘルハウンド。名前は?」


「俺に名前などない。こいつらもだ。俺達は俺達を認識出来る。誰が誰を呼んだか分かる。故に名前なんてものは必要ない。」


「そうか。分かるよ。でもこれからはそれは通じない。今後この私の部下になるならば、お前達だけの間柄じゃない。分かるな?無ければ私から名付けよう。」


「別に俺達は必要としていない。ヘルハウンドとでも呼べば良いだろう。」


「それはダメだよ、ヘルハウンド君。君に色々話した時に教えたろ?私の大ボスはこの目の前にいるレムリア様だと。それに我々妖怪だってこの世界に来た時にレムリア様から名を貰ったのさ。そんな名誉な事を断るというのかい?もしその考えなら、君達に温泉は浸からせないよ?それに、レムリア様に対してあまり反抗的な態度を取らない方が良い。あそこにいる悪魔さんは怖いからね。」


「ぐぬぬ…。別にそういう訳ではない。」


 完全にアクアに従順になっているヘルハウンド。とりあえず、名付けは了承したようだ。アクアというよりは温泉目当てなのかもしれない。ところで、今アクアがサラッと凄い事を言ったな。レムリアが妖怪に名前を与えたと。確かに、妖怪達は日本からレムリアが連れてきたと聞いていた。最初に聞いた時に名前について疑問には思っていた。この世界に来てから自分で改名したのかなと。しかし、まさかレムリアが名付けていたとは思わなかった…。こうなると、日本にいた時の名前が気になるな。しかし今は目の前の事に集中だ。ヘルハウンド達の名前を考えないと。まずはボスの名前からだ。そうだな…。


「お前の名前は、スレイマン…なんてどうだ?」


「ふむ。悪くない響きだ。ところで、一つ聞いて良いか?」


「なんだ?」


「お前は”約束″を守る者か?」


「そこのヘルハウンド、レムリア様に向かって…」


 レムリアに対して「お前」と呼んだヘルハウンド、スレイマンに対して怒りを露わにするフローラを制して答える。


「私は約束は守る。何か約束してほしい事があるのか?」


「いや…。その答えが聞けただけで充分だ。レムリア様。俺達の新しいボス。貴方に忠誠を誓おう。」


 スレイマンが頭を垂れたのを見た他のヘルハウンド達も同じ行動を取る。こうしてヘルハウンド達がレムリアの配下となった。



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