75話 サフィアとルビルの千年間
驚く吸血トリオに説明するサフィア
「お前さん達、レムリア国から来たのであろう?我々は元々レムリア国の者だ。見た事ないか?北区域にいる化け狸達。あれらもアタシの部下だ。そしてここにお前さん達を連れて来たそこの男、ルビルも同じレムリア国の者だ。ふふふ、久しぶりにワクワクしてきたぞ。レムリアが復活したのだろう?千年ぶりに会いたくなった。」
「ちょっと待て!何故レムリア様が復活したと分かる!?」
「何を言っておる?お前さんと戦った時、その力から僅かにレムリアの魔力を感じた。それに、お前さん達は最近吸血鬼になったばかりだろう?力の使い方がまだまだな雰囲気を感じた。そんな奴が千年前に死んだ者の事をを様付けで呼ぶのはおかしい。そいつに実際会っているなら別だがな?どうだ?」
「…確かにそうだ。レムリア様は最近復活なされた。そして俺達はそのレムリア様の眷属になった時に吸血鬼となった。そこまで分かるとはな…。」
「ルビルもそれを感じ取ったからお前さん達をここに連れてきたのだろう。ふふふ。伊達に数千数百年生きておらんわ。さぁ、分かったらさっさと行くぞ。レムリア国に。」
「ちょっと待ってください。貴方達がレムリア国の者であるのは分かりました。しかし、ひとつ分からない事があります。」
それまで話をただ聞いていたイオルがサフィアに疑問をぶつける。
「ん、なんだ?」
「何故、貴方達はずっとレムリア国を離れていたのでしょう?レムリア様は数千年前に一度戦死したと聞きます。それからずっと国外で何をしてきたのですか?貴方達は国には関心がないのでは?」
「ん?何を言う出すかと思えば。いくらレムリアの眷属だといえ、吸血鬼になってたった数年の若造ごときが生意気な事を口走るなよ。この千年間、レムリアの為に動いてきたわ。そこのルビルもな。そしてそれが国の為でもあった。お前さん達はレムリアが戦死したという事を知っているのだな?では、その戦争の事も知っているのであろう?」
「戦争があったのは聞いていますが、詳しくは…。」
「ふん、まぁ良い。人間側と魔族側とが争った大戦争だ。事の発端は複雑だから省くが、数年は続いた。だがその終わりは呆気ないものだったんだ。レムリアの死だよ。レムリアが死んでから数日でその戦争は終わりを迎えた。おかしいと思わないか?それまで終わる気配の無かった戦いだ。誰がどうやって終息させたかは分からんが、人間側が引いたのだ。それに合わせて魔族側にも撤退の指示が出された。その当時魔族側を指揮していたのが大魔国。そのトップがヴァクロ・ドレーカと呼ばれる悪魔だ。指示はそのヴァクロか、側近によって出される。まぁ、あまりこんな考えはしたくないが、大魔国はレムリアが邪魔だったのでは、と思ったり…。まぁそれはさておき、当時アタシはレムリアから人間側に情報を流している奴がいる可能性があるから調査を頼まれてたんだ。しかし結局見つける事は出来なかった。レムリアの話では、その戦争は仕込まれたものらしい。詳しい事は教えてくれなかったがな。まぁ、アタイは大魔国あたりが怪しいと思ってる。あまり大きな声で言えないがな。レムリアの死後も一応、その関連の事を調べていた。戦争終結の真相も含めてだ。ルビルも一緒にな。あれから千年ほど経っているから、もう情報なんて出てこないだろうが、帰るに帰れなくなってな…。ちょうど良いところにお前さん達が来てくれた。これで一応帰れる口実が出来たという訳さ。分かったかい?」
「あ、あぁ。その事は直接レムリア様に話してもらえると助かる…。しかし、聞く話によると、レムリア様は生前の記憶が無いらしいからそこがどうなるか…。」
「とりあえず、会えるだけでも嬉しい。さっさと行こうではないか。」
「分かった。」
こうして、吸血トリオは変面師と化け狸達を連れてレムリア国に帰還するのであった。
「すみません、何か忘れてないっすか?」
「ん?何かあったか?」
「いや…。忘れるって事は大した事ではなきのでは?」
「それもそうか!よし、行くぞ!」
その頃、吸血トリオに女盗賊団の排除を依頼した盗賊団はというと…。
「奴らちゃんと仕事してんのか?」
「あの用心棒を派遣したから大丈夫ですよ!」
「それもそうだな。俺達は別の邪魔者をどう始末するか考えるぞ!」
「へーい!」