69話 国外にいる奴は何してる?
温泉街予定地にて繰り広げられる戦闘。妖怪連合VSヘルハウンドの群れ。両者の戦いは拮抗していた。
燃えるように赤い眼をギラつかせながら、ヘルハウンド達が口から火炎を放射している。それを河童達は躱し、水の魔法で反撃する。土蜘蛛達は糸でヘルハウンドの動きを止め、一斉に襲いかかるが、火炎で糸を焼き切られ逃げられる。物資運搬の為に来ていたスライム達も応戦するが、寸前でヒラリと躱される。そんな攻防が永遠と続くと思われたが、いつかは終わりがくるもので、その時異様なオーラを放つ一つの影が現れた。
「随分なマネしてくれるな。侵入者よ。」
それは一際大きく、他の個体よりも真っ黒な身体で、鮮やかな赤をした透き通っている眼を持つヘルハウンドだった。その姿はまさに群れを統率するボスだ。
群れのボスであるヘルハウンドが現れてから、戦いはより激しいものとなっていく。
他の個体よりも高火力、広範囲で放射される火炎攻撃になかなか近づく事は出来ず、河童達は遠距離戦を強いられていた。しかし、近距離、中距離、遠距離のいずれの場合でも戦える河童達はそれほど苦ではなかった。空中でホバリングしつつ、肩に装備されている砲で水流弾を放つ。この砲は最近開発された物で、アメジストとレムリアによって考案された。西区域に腐るほどある魔力石の活用方法の一つだ。空気中の水分を甲羅型アーマー内に内臓された魔力石に集め、水エネルギーに変える。それを弾に変えて発射するという物だ。照準はヘルメットで視認したものに限られる。実戦で使用するのはこれが初めてになる。ボスヘルハウンドの火炎放射には阻まれるが、直撃すればまずまずのダメージを与えられている様子だ。下では土蜘蛛達がボスヘルハウンドの周りを囲み、糸を吐いて動きを妨害している。その周囲で、その他ヘルハウンド達の足止めをスライム達が行なっている。ボスヘルハウンドは動きを妨害されながらも、火炎放射で応戦する。河童や土蜘蛛はその火炎放射を向けられた場合、避けなければならない為、どうしても陣形が崩れてしまう。完全にヘルハウンド達を抑えきれていない状態だ。
「なかなかやるのぉ、侵入者!我らの縄張りに踏み込んで来るだけの力があると言う訳か。」
「何も言わずに立ち入ったのは申し訳ないが、話を聞いてくれないかね?」
「ならば、この俺をだまらせてからにしな!」
「仕方ないな…。少し本気だすからな。」
そう言いアクアは左腕のガントレットを操作し、プロテクターアーマーをパワーモードに切り替える。
「河童の技術力舐めるなよ。」
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その頃、冒険者を休業中の吸血トリオは以前一角ラビィの被害を受けていたライム村に来ていた。
「よう、村長さんよ。その後魔獣はどうだい?被害ないか?」
「おかげさまで、あの頃から魔獣は寄り付かなくなりましたわい。それもこれも血刀組のおかげです。」
「いやいやそれなら良いんだ。今後もこの付近で何かあれば教えてくれ。」
「えぇ、ありがとうございます。…そういえば、魔獣が現れなくなってから盗賊達を見かける事が多くなったと聞きます。我々が見た訳ではないのですが、この村に来る冒険者さんがそんな事を言っていました。今はそれが気がかりですじゃ。」
「盗賊…ねぇ。分かった。何かあればこちらで対処しておく。」
「何から何までありがとうございます。本当に助かります。」
「いやいや、良いよ。折角知り合った仲だ。そのくらいはやるさ。行くぞお前達。」
「はい!」
こうして血刀組は村を出る。吸血トリオはこの村に恩を売る事で、ここ周辺の情報を得ていた。
村を出てしばらく歩く三人。
「しかし、気になりますね…その盗賊。もしかしたら我々の古巣かもしれません。」
「可能性はあるな。何も言わずに抜けたようなもんだし。」
「あー、血眼になって探してる感じっすかね?でもあり得ますか?わざわざ探すような事するかな?」
「まぁ、分からんがしばらくこの辺を歩いてみるか。」
「分かりました。」
そしてこの後、言うまでもなくその盗賊と鉢合わせる事になる。