66話 九尾の狐ディアナ
「さっそくだが、ディアナ。今後しばらくはイリアーノ国とサンダーランドには近づくな。他の皆もだ。一応、変化すれば問題ないとは思うが、何かあってからでは遅い。とりあえずは城下町に住んでくれ。フローラ、あそこの管理はどうなってる?」
「北区域の鼻高天狗が担当しています。」
「じゃ、天狗が巡回してきた時に手続きするように言ってくれ。城下町に住まわせる。ディアナ、仕事が決まるまでは待機だ。他の区域で仕事があれば、そっちを手伝ってくれ。とりあえずはこんなものかな。あとは…。」
すると勢いよく部屋に入ってくる者がいた。
「レームーリーアー!!」
部屋にダイナミック入室したそのままの勢いで久しぶりに会うレムリアに抱きつき、とびきりの笑顔を見せる雪女。
「お、ジララ!久しぶりだね。」
「なーにが『久しぶりだね』よ!一緒に連れてってくれても良かったでしょうに!」
「いや、あまり大人数で行くとさ…。」
「サンダーランドなんてアホみたいに大所帯って聞いてますけど!?こっちだって大人数で行っても良かったじゃない!」
こんなやり取りを見ていたディアナ。それまでの緊張が解け、思わず笑ってしまう。
「もう、ジララったら。小さい頃と変わらないわね。レムリア様とそんな風に会話出来るのはあんたくらいなモンだわ!あぁ、懐かしい!」
妖狐達を見渡し、赤面するジララ。
「えっと…あなた達は…?」
「覚えてないのは仕方ないわね。えっと、確か貴方とフローラが生まれたての時、私達は妖魔石の調査で国を出てたから。初期の頃は数日間、国に戻る時があったからその時は私達も交代で貴方達のお世話をしたものよ。本当に懐かしいわね。こんなに大きくなって…。」
「私の場合は覚えてますよ。一応、悪魔なので。レムリア様の事も聞いていましたし。あの時はお世話になりました。ディアナさんからはレムリア様の事を教わっていましたので、レムリア様が目覚められた時に役立つ事が出来ました。感謝しております。」
「それは良かった。役に立てて嬉しいわ。それとレムリア様、お耳に入れておきたい事が。」
「ん、なんだ?」
「人間の国が五カ国あるのはご存知の事でしょう。しかし、私達が妖魔石の調査をしている中で、もう一カ国ある事が分かりました。五つの国に囲われるような位置に存在しているその国の名は、『ラブクルス聖教国』人間達が信仰している教会が建国した国のようです。妖魔石は最初の数百年の間、その国で保管されていたようです。」
「なるほど…。フローラ、ラブクルス聖教国について何か知っている事はあるか?」
「申し訳ございません。私の方では何も…。」
「分かった。今後その国の調査も必要だな…。ありがとう、ディアナ。」
ラブクルス聖教国か…。名前だけ聞くと、魔物にとって厄介な雰囲気があるな。何も知らずに偵察に行かせるのは危険かもしれない。詳しそうな奴に聞いてみるか。
その後、それぞれの報告を聞き、幾つか指示を出したあとに解散となった。