64話 事務処理の人と決闘の人
お久しぶりです。
レムリアとブラックが戦いを繰り広げる前、イリアーノ国でディアナ達が騒ぎを起こしていた頃、レムリア国では魔王代理を引き受けたアメジストが各部署から送られてきた書類に目を通していた。
「えーと、まずはラリマからか。まぁ、確かに砦の強化は必要か…。河童派遣するかな。」
冒険者達による侵攻を受けた南区域の砦。その被害と、その強化を申請するラリマからの報告書だった。さらに、シディア三姉妹からの報告では捉えていた冒険者の情報について。
炎扇団:双剣使い・レイモンド、魔法使い・リーナ、踊り子・シャシャ。この三名の尋問結果→レイモンド・廃人化、リーナ・死亡、シャシャ・三姉妹の奴隷化。リーダー含むそれぞれの武器は、虫妖木保管庫群A3にて保管中。得られた情報→今回冒険者を派遣したのはギルド長の独断。ステマニア国国民は知らないが、王族、ギルドと冒険者達は魔王が現れた事を疑っている。今回派遣された冒険者達の殆どが捨て駒にしても問題ない者達。今回の調査結果は各国のギルドに報告がいく予定だった。その後、王族の方にも連絡するつもりでいた。今後はCランク以上の冒険者チームが動く可能性あり。
以上のような内容だった。
「なるほど。あいつの独断ね…。こうなると余計に砦強化が必要ね。次は、ラピスからか。」
ラピスからの書類には河童、天狗からの報告をまとめた物だった。まず、河童からは国外にとある施設の建造を土蜘蛛と開始したとの事。これはレムリアも了承済みらしい。…一体何の施設なんだ…。次に、ラリマから、ライの義手製作を依頼された為、着手するというものだった。報告によると、ライは右前足を失い、ラブとラドもCランク冒険者相手に苦戦していたらしい。基本的にこの国に攻めてくる者と最初に接敵するのはこの三匹だ。今後更に強い相手が来た場合に命を落とす危険がある。ラリマは親バカなので、キツい特訓はやらせたがらないが、今回の事があった以上はそのような事は言ってられない。フェナカと一緒に他の連中に鍛えてもらうのが良さそうだ。これもレムリアに言っとくか。
そして、天狗からの報告。まず、例の物が見つかったので、早速河童達が作業を開始したとの事。これをレムリアに伝えておいてほしいらしい。レムリアとこいつらは私に内緒で何やってるんだ?まぁ、良い。気になるのはこの次。レムリア国にゴブリン六匹、オーガ三匹、オーク二匹、サイクロプス二匹が向かっているとの事。サンダーランドで何が起きているかは分からないが、そこはレムリアが上手い事解決するだろう。
そして、吸血鬼トリオからの報告。防衛戦にて半殺しにした冒険者チームがステマニア国に帰還、その後の報告でレムリア国には主に、巨大な魔獣とスライム複数がいる。魔王の存在は確認出来なかった、と伝えたらしい。かなりのトラウマとなったらしく、暫く部屋から出て来ていないらしい。更に、ギルド長は人間ではない可能性があるとの事。聞けば、数百年を生きているという噂が一部の人間に流れているらしい。その調査の中で、ギルド長から疑われている節があり、今後自由に動けない可能性があり、現在はトゥルーレッドムーンのステマニア支部に拠点を置いているとの事。これは一旦帰還させた方が良いかもしれない。
まぁなんにせよ、レムリアが戻ってからだな。あれ…師匠からの報告がない…。つってもあれか。あそこは特に何かある訳でもないし平和か。あー、早く帰ってきてくれレムリア!
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そして、そのレムリアはサンダーランド魔王、レッドと痺れるような戦いをしていた。
「なかなかやるじゃねぇか。大魔王とライバルだったってのは伊達じゃねぇな!?」
「まぁ、これでも復活したばかりで身体鈍ってるがな!」
二人の戦いは長い間続いていたがレッドの方がだんだん疲れを見せていた。そもそもレッドは短期戦を得意とする。好きな言葉は電撃戦。長期的な戦いは好まない。この戦いも長引かせるつもりは無かった。レムリアは自分の攻撃をひらりひらりと躱すのが多い。身体で受け止める、拳で防御する等をしない。レッドとしては、戦っている気がしない。肉体と肉体がぶつかる衝撃が好きだが、この戦いでそれは殆どない。レッドのイライラは溜まる一方だ。
「さっきから躱してばっかりウゼェんだよ!」
レッドは距離を取り、腕を上げる。
「サンダーレイン!」
周囲に雷の雨が降る。会場にいた者達にも幾つか降り注ぐ程の広範囲。そしてその威力がレッドの苛立ちを表していた。しかし、その雷の雨の中、立ち上がる人物が一人。
「流石にビリビリする…。」
雷に撃たれた自分の身体を確認する。何ともない身体に若干引きつつ、レッドの位置を確認する。そして瞬時に貯めた力を解放し、一気にレッドまで距離を詰めて頭を鷲掴み、地面に叩きつける。苛立ちと疲れから反応が遅れたレッドは容易く地面に背をつける事となってしまった。
「こんな物かな。」
倒されたレッドは自分の頭を掴んでいる指の隙間からニコッと笑ったレムリアを睨みつける。