5話 招かれざる客
ちょっとした戦闘シーンを書こうと思ったんですが、全然闘ってないんですね、これが。
「大丈夫大丈夫。確かに少し距離はあるかもしれないけど、お散歩感覚で行けちゃうから。なんなら飛んで行っても良いし!」
「え、空飛べるの?」
「えぇ、空飛ぶ能力がある者もいるけど、私の場合は魔法ね。まぁ、今回は道を覚えてもらうために歩きね。」
「結局歩くのか…」
あっちの世界には車が有ったのに。せめて馬車とか無いのか…と言っても3㎞歩いた位では、疲れる事なんてないわけだが。それでも楽はしたい。
なんて事を考えていると、外から声が聞こえてくる。
「兄貴、本当にこっちで合ってんすか?」
「たりめぇだろ!俺を信じろよ!」
「あまり大きな声を出さないで下さい。もう此処は魔国なんですよ。いつ魔物に襲われるか分かりません。用心しておかないと。」
「うるせい。魔王がいない国の魔物なんて怖くねぇ。こんなんで怖じ気づくな。そんな事より見えてきたぞ。あの小屋だ。」
「本当にあの小屋に美女なんているんすか?」
「居たとしても、人間ではないと思いますけど。」
「お前ら俺を信用してねぇのか?人間じゃなかったとしたら、見世物小屋か人拐いに売るだけだ。」
「そんな無茶な。」
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俺たちは目を見合わせた。
「あんなべらべら喋ってるなんて。敵地に乗り込んでるのに、やる気あるの?あいつら。」
「我々の聴力が良いだけで、彼らかなり遠くから小声で喋ってますよ。あっ、喋ってるよ。」
「う、うん。ところでどうするの?」
「まぁ、見ててください。角隠せます?あっ、角隠せる?」
「別に言い直さなくて良いよ。やり方は分からないけど…ちょっとやってみる。」
「あ、じゃぁちょっと隠れてて?」
「うん、分かった。」
取り敢えず、俺はタンスの陰に隠れる事にした。さて、どうしたものか。そもそも角なんて意識した事なかった。頭に集中してみるか。
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「良し、開けるぞ。」
「待って下さい。中に誰かいます。ノックした方が良いのでは?」
「とりあえずノックするっすよ。」 コンコンコン
「はい…どうしました。」
(うわ、本当に美女だ。)
「いや、実は道に迷いましてね。ここが何処だか聞こうと思いまして。」
「そうですか。しかし、ここが何処だか分からず足を踏み入れたのですか?だとしたら相当お馬鹿さんですね。国に属していないと、何処が国境なのかも分からなくなるんですか?人間のくせに。」
「んだとぉ!てめえ、俺達をバカにしてんのかコラッ!」
「やめて下さい。…やはりあなた、人間ではありませんね。」
「ど、どうするっすか?」
「構うこたぁねぇ!殺しちまえ!こんな奴売る気にもならん!」
「いえ、しかし!」
「この人、かなり強そうっすよ!」
「私は一向に構いませんよ。久しぶりの人間ですし。今夜はご馳走になりそうですし。」
「がぁぁー!死ねぇぇぇ!」
真ん中にいた1番バカそうな男が剣を抜き、ジララに斬りかかろうとするが、届かない。間合いを詰めようとしても、足が動かない。下に顔を向けると、足が凍らされていた。
「てめ!この野郎!溶かしやがれ!」
「野郎ではありませんわ。」
ジララは氷で日本刀を造りだす。そして、氷付けにした男の足首を斬る。男がやられているのにも関わらず、両隣の2人は助けようとしない。
「あなた達、お仲間のピンチなのに助けないの?」
3人の中で1番賢そうな男が口を開く。
「取引をしましょう。あなたは相当お強いようだ。その男と持ち物全て差し出します。その代わり、私ら2人は見逃してほしいのです。」
「てめぇ!何言ってやがる!そんなの許さねぇぞ!」
「まぁ、良いですよ。ここから無事に帰します。」
「ありがとうございます。リーダー、悪いがあんたにはもうついていけない。ここで死んでくれ。」
「すみません、兄貴。」
「おいてめえら!待てこの!」
そして二人はジララの家から出る。しかし、外に出た瞬間に足が凍る。2人は転んだ。
「ここから出すとは言ったけど、魔国から出すなんて言っていないわよ?我々の領土に踏み込んで無事で帰れると思うな!」
そして、3人とも氷付けにされる。この3人はどこの国にも属していない盗賊。様々な所に拠点を構えている。確認しているチームは4つ。こいつらはその内の1チームだろう。しかもしたっぱだな。まぁ、こいつらは後で処分するとして…そういえば、魔王様がさっきから大人しいけど、何やってるんだ?
「おい、ジララ見ろ!出来たぞ!どうだ、綺麗さっぱりだろう?これでどこからどうみても人間だ!」
「いや、うん。もう終わったよ?」
「え?」