59話 千年の落し物
大雑把に話の構成を考えてるだけなので、いざ書こうとしたらめちゃくちゃ考えてしまう。お待たせしました。
ミラトリノ城・ミツネの部屋。
「王女達が動き出しました。ミラトリノ城へと向かっております。」
「予定通りね。私はレギオンが″例の物”を出すまで待機してる。お前達は兵を相手に適当にやってくれ。王と王女が対立するようにだけ気をつけよ。行きなさい。」
「かしこまりました。」
ミツネは兵士に命令した後、王の部屋へと赴く。
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イリアーノ国、とある建物。
「皆、準備は良いか?これはただのデモではない。戦いだ。しかも、相手はこちらを殺すつもりでかかってくる。生半可な覚悟じゃ死ぬだけだ。まだ間に合う。勇気のない者はここで引いてくれ。」
「何を言ってるんですか!ここまできて引く訳ないです。私達はこの国が好きなんです!暴走する王を止める。私達国民も出来る事をやりたいんです!」
皆の目は本気だ。それをステラは確認する。
「分かった…。だが、無理はしないでくれ。あの分からず屋に不満ぶちまけるぞ!」
そうして、各々用意した武器を手に取り部屋を出る。
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イリアーノ国ミラトリノ城地下へと続く地下空洞、そこを進む五人。
魔王レムリア、悪魔フローラ、煙々羅スモーキー、烏天狗ウィンドウ。そして案内人のゴブリン。
洞窟内は暗いので、ゴブリンの持つ松明で明かりを確保している。
「しかし、この洞窟かなりの距離あるよな。ゴブリンが掘ったのか?」
「いいえ、我々は何もしてません。おそらく、指令書を送ってくる謎の人物が用意したのだと思います。このまま行くと、地下の倉庫に出ます。」
レムリアの疑問に答えるゴブリン。しかしこのゴブリン、他の個体とは明らかに雰囲気が違う。背筋はシャンと伸び、流暢に話し、知性を感じさせるのだ。それもそのはず。
「いや〜。しかし随分と綺麗に掘りましたね。大変だったんじゃないですか?パイラさん。」
「そりゃ大変でしたよ。みんなで…あっ……。」
ゴブリンは「しまった…。」というような顔で四人を見る。
「も…もしかして、バレてました…?」
「えぇ、勿論です。最後にお会いしたのは私がまだ幼い頃でしたね。」
「薄らと妖気を感じましたからね。この私ですらも分かります。」
「我々天狗と同等くらいの力の妖怪ですから、どんなに偽ったとしても分かる者には分かりますよ。」
「…。」
正体を見破られた(ただ一人を除いて)と知ったゴブリン。そのままクルッと一回転し着地すると、本来の姿、金髪の少女が現れた。薄いピンクの動きやすそうな和服を着ている。片膝をついて着地した姿勢のままの少女。頭にはぴょこぴょこと黄色い毛並みの狐耳がついている。さらに背の方から五尾の尻尾が見える。
「お久しぶりです。レムリア様、フローラ様。やはり、見破られてしまいましたか。」
すっと立ち上がりお辞儀をする五尾の狐、パイラ。その表情はとても嬉しそうだ。
「最初に案内された時から怪しいとは思ってましたよ。もっとゴブリンらしく振る舞わなくてはいけませんでしたね。」
いつものように笑顔でアドバイスするフローラ。そのままパイラに続ける。
「勿論説明して頂けますね?パイラさん。」
「勿論です。こんなにお時間を頂いたのです。お話ししましょう。時は遡り約千年前……。」
パイラの話を要約するとこうだ。
約千年前の人間と魔族達の大戦争。レムリアが戦死した戦いだ。その戦場にレムリア配下の妖狐達も参加していた。この妖狐達だが、九尾の狐を筆頭とした変化のエキスパートだ。この戦いでは敵側に潜入し、情報収集や破壊工作を担当していた。この戦いでかなりの手柄を立てたらしい。しかし戦争終結後、九尾の狐はある事に気付く。肌身離さず持っていた妖魔石が無くなっていたのだ。戦闘中に落としてしまったのだろう。この妖魔石の効果は様々で、これを大事に持っておくとその者の持つそれぞれの力を引き上げる事が出来る。例えば、妖怪が持てば妖力を。魔法使いが持てば魔力がUPするといった感じだ。そして、その国には豊穣と繁栄がもたらされるらしい。この石は、レムリアが九尾の狐に贈った物だ。
九尾の狐が、ラピス達とこの世界に来る前の話。日本という場所で追われる身であった彼女は休まず逃げ続けた。しかし、いくら九尾の狐といえども、体力が無尽蔵にあるわけではない。とうとう人間達に追い詰められた。襲ってくる者達を返り討ちにするが、不思議な術を使う人間もおり、かなり不利な状態にあった。それを打開する為、奥の手を使おうとした時、目の前にいきなり白い少女が現れた。そうして特に予備動作をするでもなく手を目にも止まらぬスピードで動かすと、周りにいた人間達はバタバタと倒れた。よく見てみると、気絶しているようだった。九尾の狐は命を救われた。
その時にもらった妖魔石なのだ。命の恩人から貰った大切な宝物。この石にどんなバフがついていようと関係ない。むしろどうでも良い。無くしてしまったあの宝石は形見なのだ。それを無くした自分をとことん責めた。そして、妖魔石を取り戻す旅へと出た。その当時の魔王代理であるアメジストから許可をもらい、部下の妖狐達を引き連れて。
そして今、その九尾の狐は妖魔石を取り戻す一歩手前まで来ている。それが今向かっているイリアーノ国、国王レギオンが所持しているという。イリアーノ国が他国よりも農業が盛んだという理由がそこにある。
九尾の狐は妖魔石を取り戻す為、作戦を実行した。石はレギオンが所持している。どこにしまっているのか分からない。したがって、レギオンがどこに隠しているのかを探らなくてはならない。
「というわけで、女王ステラを利用する計画を立てました。あの妖魔石を怪しく思わせて国王と衝突させるんです。そうする事でレギオンから妖魔石を出させる算段です。」
「それは分かったが、ゴブリンはなんの関係があるんだ?あいつらにイリアーノの城から物を盗むように言ったろ?」
「はい。城の中をゴブリンが嗅ぎ回れば、妖魔石を安全な場所に移動させるかもと思ったので。ついでに城の者にゴブリンを目撃させ、レギオンがゴブリン達と手を組んでるのでは?と、思わせようと目論んでました。因みに、指令書は私が書いてました。」
つまり、ゴブリンに指令書を出してたのは妖狐達で、身内だったという事になる。さらにこれからステマニア国以外の人間の国、イリアーノ国とも関わる事になるのだ。そして、この事をブラックにどう説明しようか…。面倒事が増えるばかりである。
一通りの話を聞いたレムリア一行はミラトリノ城地下へと向かった。