58話 イリアーノ国の王女
私はステラ。このイリアーノ国の王女だ。王族の暮らしといえば、城に住み国を支配する者。国家の行末は王に委ねられる。勿論、そこに住む国民の協力は必要だし、王はその国民達の声に応えなければならない。……ならないはずなのだ。しかし、今のイリアーノ国の王、私の夫であるレギオンはその国民の声を聴いていない。彼の耳は突如現れた怪しげな占い師に向けられている。その占い師は全身を黒色のベールで覆っている。しかし、そんなベールで覆われていても、魅力的だと感じる体型、その瞳、そして声。女の私でも美しいと感じてしまうような、危ない雰囲気を醸し出す彼女にレギオンは目を奪われてしまった。正常な判断が出来なくなってしまったのか、その占い師の言う事を忠実に聞いて国民が苦しむだけの政策をどんどん行なっている。勿論、私は止めた。しかし、彼は聞く耳を持たなかった。最初はあの占い師、ミツネを信じろ、と言うばかりであったが、いずれ自分の事を邪魔したいだけなのでは?と疑うようになり、段々と私に対する態度も酷いものになっていった。その内、私の言葉は完全無視されるようになり、ついには投獄された。その時の王はひどく狂った様子で、完全に操られていたようにも見えた。それほどまでにあの占い師は危険な人物だ。このままでは、国がめちゃくちゃになってしまう。幸い、私の味方をしてくれた兵士のお陰で脱獄出来た。更に、自宅に匿ってもらう事になり、なんとか路頭に迷う事は回避出来たのだった。その兵士は奥さんと子供の三人暮らし。事情を説明すると快く迎え入れてくれた。それまでは王に対しての不満からか、あまり良い顔をしていなかったが、事が分かってからは、私の夫に対する愚痴も聞いてくれた。あまりに聞き上手だった為、思わず長々と話してしまったのは申し訳なかった…。しばらくはそこで大人しく過ごしていだが落ち着いた頃、このままでは駄目だと思い、あの占い師から王を引き剥がす計画を立てた。国民は、最近の王の政策に不満を持っている者達が大勢いた為、かなり多くの協力者を得る事が出来た。誰も占い師の存在を知らなかったのだ。その計画は水面下で進行していった。私に協力してくれる兵士の中には案を出してくれる者もおり、計画は順調に進んでいた。あとは予定日に決行するのみ。国民の声を無視し、得体の知れない占い師の戯言に従順になっている馬鹿な旦那にガツンと言ってやるのだ!