57話 王女と王と占い師
ゆっくり投稿していきますのでよろしくお願いします。
レムリア達がサンダーランドを訪れる数日前のイリアーノ国。とある建物の地下。
数本の蝋燭で灯りを確保しただけの薄暗い部屋の中で数人が集まっている。何か武装している訳ではなく、服装からして一般人だ。ただ、中にはこの国の兵士も数名おり、彼等の視線は皆同じく、一人の女性に向けられている。その女性は服装こそ市民が着ているような一般的な物だが、その銀髪、キリッとした青い目、スッとした鼻筋、艶かしい唇、すらっとした体型。どこを見ても美しく、ただの一般人とは思えない異質なオーラを放っていた。
「皆、すまない。厳しい戦いになるが、これもあの巫山戯た占い師から王を奪還する為。あいつの目を覚ます為だ。もしかしたら失敗するかもしれない。そうすれば、実行した者達は投獄される。もともとは、私がもっと早く気付いて対処していればこんな事にはなっていなかった。嫌なら降りてもらって構わない。」
「何言ってるんですか!ステラ様。我々は自分の意思でここに居ます。ある時期からいきなりの増税、理不尽な徴収。ゴブリン達と繋がっているという噂!最近の王には不信感しかありませんでした。しかし、ステラ様が現れ事情を知る事が出来ました。狂ってしまわれた王を助ける為、ステラ様を助ける為、この国の為…我々、協力させていただきます!その覚悟も持っています!」
「我々、イリアーノ国国王に仕える兵供も協力致します。数は不明ですが、城にいる兵士の中には、その占い師に協力する者もいるようです。そいつらは我々にお任せください。」
「皆、ありがとう…。その気持ちとても嬉しいぞ。あいつに皆の気持ちをぶつけなくてはな。さ、準備に取り掛かる。よく聞いてくれ!」
「はい!」
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イリアーノ国、ミラトリノ城・レギオン王の部屋。
「まだ、ステラは見つからんのか!?」
沢山の書類が陣取る大きな執務机を指でコツコツと叩き、苛立ちをあらわにする中太りの男が、扉の前で跪く兵士に問いかける。
「は。現在、捜索の手を国内全域に広げておりますが、まだ発見出来ておりません。ステラ様の事です。すぐに分かると思ったのですが…。」
「言い訳など、聞いとらん!奴のせいで国政が遅れておるのだ!せっかくミツネの占いで良い国になるというのに…。奴が口出さなければこんな事にはならなかった!王女なら王女らしく、このわしに従っておれば良かったのだ!そもそもどうやって牢屋から逃げた!」
「まぁ、落ち着いてください。レギオン王。ステラ王女が牢から逃げたところで、出来る事などありません。いつも通り、市民から税金を集めるのです。集めたお金は、有事の際に使うのです。もしもの時に。それまでは大事に保管しておくのです。そして、周辺の村にも警戒を。王女が魔物と繋がっている可能性があり、八つ当たりでゴブリン供に村を襲わせるかもしれません。周辺の村には私が兵士を派遣させる手続きをしておきます。レギオン王はゆっくりと身体をお休めください。面倒な問題は私が片付けておきます。どうか…。」
部屋の中央に配置されている客人用の机と椅子。そこに腰掛ける一人の女性がレギオン王に話し掛ける。机には丸く透明な水晶玉が置かれており、その女性は黄色い眼でその水晶玉を見ている。黒色のベールで身体を覆っているが、そのシルエットから、グラマラスな体型と分かる。更に、顔も眼しか露出していないが、その瞳でこちらを覗かれると、全てを見透かされているような、何でも言う事を聴いてしまいたくなるような、そんな魅力的なものだった。それはこの国の王、レギオンも例外ではなく、そんな彼女の魅力に惹かれていた。彼女が初めてこの国に来た時、すぐに王族直属の占い師として招かれたのも、彼女の魅力故だった。
そんな彼女は扉の前にいる兵士に目配せをする。それに対して兵士は頷き、王に一礼して部屋を出て行く。
「ミツネ…助かる。次々と問題が起きて頭がパンクしてしまうわ。わしは少し寝る。あとは頼んだぞ。」
「お任せください。レギオン王…。」
そして占い師、ミツネは部屋を出る。
「ふふふ。そろそろ最終段階かしらね…。ミソナ…引き続き、王女の動向を監視しなさい。動き出したらすぐ報告するように。そろそろ彼女も行動を起こすでしょ。」
「畏まりました。」
扉の影で待機していた兵士が一瞬にして姿を消す。
「いよいよね。この国をいただくわよ。」
王族直属の占い師・ミツネは黒色のベールの下で不敵な笑みを浮かべる。