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魔王転生  作者: 紫舜邏 龍王
弱肉強食国家
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56話 スイーツの為ならえんやこら

 赤い肌に黒色の稲妻模様があるサンダーランドの魔王。ゴブリンのレッド・ブラック。彼は人骨で作られた玉座にふんぞり返っている。

 

「私がここに来た理由は一つ。そちらが追放した者を我が国に寄越すのをやめて頂きたい。」


「そんな事知ったこっちゃない。邪魔なら殺せば良いだろ。追放された奴がどこ行こうがそいつの勝手だ。」


「レムリア国に行けば良いだろう、と言われたと聞いた。その発言もやめて頂きたい。そもそも自国民を追放するなんて以ての外だ。」


「弱い奴が悪い。この国に弱い奴はいらん。今までそうやって成り立ってきた。一番強い奴がこの国のトップを張れる。そもそも、弱い奴がこの国で生きていく事なんて難しいぞ?ストレス発散の為、ボコボコにされたり、まともな肉にありつけないし。それなら、この国から出て生活した方がマシだと思うようになる。外へ出て群れを為して生活する者がいれば、他国に行って殺される者もいる。言っておくが、蝙蝠野郎の国では容赦なく殺すと聞いているぞ?嫌なら殺せば良い。」


「そういう事を言っているのではない。他国に迷惑を掛けるのは間違っているし、この国の治安が悪い事も問題だ。魔王なら自分の国民くらい自分で守れ!」


「はっはっはっ!何故弱い奴を守らなければいけない?自分の身くらい自分で守れってんだ!そんなに、追い出すなってんなら俺に勝ってみろ!他人に言う事聞かせたいなら力でねじ伏せてみろ!」


 ブラックはそう言うと、玉座から勢いよく立ち上がり、こちらを挑発する。


「ボス、ちょっと宜しいでしょうか?」


「ん、なんだ?」


 すると、やり取りを見ていた雌型ゴブリンが、ブラックに耳打ちをする。


「ふふ、なるほど。良いだろう。おい、レムリア。こちらの要求を飲むと言うなら、お前の国にゴブリン共を寄せ付けないようにしてやる。どうだ?」


「その内容は?」


「この国に住んでる者達の好物がある。それがお菓子だ。どういう経緯で好物になったかは知ってると思うが、人間共から奪って食ってる。確か50年位前から奪って食べてたが、そんな頻繁に食べれる物じゃない。ある意味では至高の食い物。それこそ、強者にしか味わう事の出来ない食べ物だ。しかし、それがだ。数年前から安定して入手出来るようになった。というのも、ある日謎の人物が複数の部下を引き連れてこの国に来た。そいつらは顔が布で隠れていたからどんな奴だったのかは分からん。しかし、人間の形をしていた。大きさも同じくらいだ。その内の一人、リーダーみてぇな奴が言った。イリアーノ国の城へ忍びこみ、とある物を盗んで欲しいと。その結果、俺たちの好きなお菓子も手に入るとな。そして一定期間やり続けたらこの城を修復してやるとも言われた。といっても毎日じゃなく、司令書が来た時にやる感じだな。」


「司令書?そいつが持って来るのか?」


「いや、いつの間にか城の中にある。」


「えぇ、大体は私の部屋に。」


 話したのは雌型ゴブリン。気づくと窓辺にその司令書が置いてあると言う。


「因みに、その司令書はあるのか?」


「いや、ねぇよ。いつも俺が読むと、ひとりでに燃えちまう。」


「燃える?」


「あぁ。その紙切れだけが燃える。他には燃え移らねぇ。」


「して、その司令書にはなんと書かれていたのですか?」


 ここで、今まで静かに聞いていたフローラが会話に加わる。


「ん。基本的には城からケーキを盗み出せ、とか投獄されている人間を誘拐しろだとかだ。盗んだ後は俺らで好きにして良いって事だったから、遠慮なく頂いてたぜ。侵入ルートとかもそいつらから指示があって、その通りに動くと楽に入れる。そうやって俺たちはお菓子なんかを楽に奪ってた。そいつらになんのメリット何あるかは知らんが、ここ数年は続けてきた。しかし、最近になってパッタリとその司令書が来なくなった。理由は知らん。一度、いつも使うルートで侵入したが、いつも置いてある場所に物が無かったんだ。」


「ん、いつも置いてある?という事は、盗む物というのはいつも決まった場所にあるのか?」


「あぁ。城の地下室だ。おそらく倉庫か何かだな。かなり豪華で大量のお菓子だぞ。」


「運び出すの大変そうですね。気をつけて運ばないとグチャグチャになります。」


「グチャグチャになろうが、関係ねぇ。食えば一緒だ。んなことより、本題だ。という訳で俺たちは暫くお菓子を食ってねぇ。そこで、何故司令書が途絶えたのか突き止めろ。お菓子が食えない事で禁断症状ってのか?出てる奴が何人かいる。なんならお菓子を持って来るでも良いぞ。」


「自分達で作れば良いのでは?」


「俺たちに出来ると思うか?…だろ!」


「そんな自信もって言われても…。」


「よし、そんな訳だ。とりあえず、イリアーノ国にでも行け!こいつを案内に出そう。」


 ブラックは雌型のゴブリンを指差す。


「司令書に示されたルートをご案内します。」


 こうして、司令書を出す人物が分からないのにイリアーノ国に侵入する事となった。


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