55話 その国の魔王はゴブリン
今回、ショッキングな内容が含まれます。
レムリア、フローラ、ウィンドウ、スモーキーの四人はサンダーランドの前まで来ていた。
「ここってゴブリン達の国だよな?」
「正確にはゴブリン、オーガ、オーク、サイクロプス、トロールその他の人型魔獣が住んでます。」
「あぁ、いや。そいつらって、こんなに立派な砦造れるの?ボロいけど…」
サンダーランドは十メートル前後の高い砦に囲まれていた。レムリア国南区域の砦よりも立派だ。ゴブリン達がこれを造ったとは思えない。
「これは聞いた話なのですが、ここは元々、イリアーノ国の土地だったらしいです。大昔に、ゴブリン達が大量発生した事があったらしく、その時ここが手薄だった事があり、占領したと聞いた事があります。私もまだ産まれるずっと前の話でして。その後、当時の大魔国の支援もあり、完全に物にしたと聞きました。」
「なるほど、どうりでこんなに立派なわけだ。」
「まぁ、ゴブリンなので、修復する知識なんてないので、ボロボロですけどね。城の方も酷い有様らしいです。」
「そ、そうか。そんな所によく住めるな…。まぁ、とりあえず行くか。」
門を潜り、中へ入る。この道をまっすぐ行くと、城に辿り着くらしい。中は小屋が複数建っていた。そして、異臭が凄い。死臭や腐敗臭、体臭、精液のような匂い等、様々な匂いが混ざっている。よく観察してみると、建物の外や中にゴブリンと思われる魔物がかなりの数でいる。体色も様々で、ゴブリンの中でも複数の種類がいるらしい。そのゴブリン達はこちらをじっと見たり、構わずに肉を貪り食っていたり、人間を性別関係なく犯していたりと様々だ。一言言って酷い国だ。まさに本能のみで活動しているといって良い。こんな奴らにうちに来られても困る。さっさとケリをつけよう。
道なりに進んでいくと、ゴブリンだけではなく、サイクロプスやオーガ、オーク等の大型の魔物もちらほら出てきた。何体かはこちらを嫌らしい目で見てくる個体もいるが、決して手を出してこない。他国の魔王という事を理解しているのか、強者と分かって手を出さないのか…。どっちにしろ、ここには用はないので、さっさと通り抜ける。
しばらく歩いて、立派な城が見えてきた。流石は人間が建てた城。作りもしっかりしている。
「ん?おいフローラ。城もボロボロって言ってなかったか?」
「えぇ。私はそう聞いておりました。おかしいですね。かなり綺麗です。改修したのでしょうか?一体誰が?」
「以前にこの周辺まで来た時は城まで見てなかったので、いつ作業したのかは分かりません。」
サンダーランド魔城はいつのまにか改修されていたらしく、先程見た砦よりも綺麗だった。
門番と思われるサイクロプスに声を掛ける。
「ん?南の魔王。ボス呼ぶ。おい!そこのお前。ボス知らせろ。」
サイクロプスは近くにいたゴブリンに主人へ知らせるよう声を掛ける。頭はあまり良くなさそうだが、一応門番としての仕事はしているらしい。
しばらくして、雌型のゴブリンがやってくる。
「ご案内します。こちらへどうぞ。」
他の個体とは違い、知性を感じる不思議なゴブリンだ。立ち振る舞いも綺麗だ。国王の側近はちゃんと教育されているのだろうか?ゴブリンが?よく分からないが言われるままに着いていく。階段を上がって行き、通路を通り、また上がり…と繰り返していく。この様子だと、恐らく最上階だ。その間、ゴブリン達とすれ違うが、小綺麗な身なりをしている。体色は赤色。外で見たゴブリンは緑色が多かった。赤色が格上なのだろうか?部屋からは人間と思われる悲鳴や、肉を切るような音、パンパンと何かを打ちつけるような音や、グチョグチョ、ジュルジュルといった水分を含んだような音、ゴブリンと思われる高笑い等が聞こえてくる。城の中は見た目は綺麗だが、ここでも異臭が漂っていた。
「こちらです。」
そうして、雌型ゴブリンはドアを開く。
「おー!ケンカでもしに来たか?南の魔王!」
そこには人骨で作られた玉座に座り、全裸に首輪を付けた人間の女性や、中性的な男性を侍らせたこの国の魔王、ゴブリンのレッド・ブラックが不敵な笑みを浮かべていた。