54話 目指せ、サンダーランド!
サンダーランドに行く為の準備が整い、メンバーがレムリア城の前に集合していた。精鋭少数。レムリア。フローラ。スモーキー。ウィンドウ。
レムリアとフローラが不在の場合は、フェナカがトップだ。しかし、実際はアメジストが指示を出す。そして、サンダーランドへの案内役としてウィンドウ。彼女は以前の任務でサンダーランド方面へ向かった事がある為、クロコアから派遣された。さらに今回はスモーキーを同行させる。その理由は万が一の際に逃亡しやすくする為だ。彼女は煙々羅と呼ばれる妖怪だ。目撃者の家に取り憑き、煙を発生させる。その煙が誰にも見られる事がない場合、そのまま家事にしてしまう。もしその煙を誰かが見たならば、その誰かに取り憑き、同じように煙を発生させるという厄介な妖怪だ。スモーキーはその本来の能力だけではなく、その場で煙幕や、魔法によって様々な効果を得た煙を発生させる事ができる。その為、戦闘時のサポートを得意としているのだ。今回はその事から彼女も同行させる事になった。
「よしウィンドウ!サンダーランドまでの案内頼む!」
「お任せください。」
「あまりスピード出さないでくださいよ。今回はスモーキーも同行するのですから。」
「承知しております。」
「私如きにスピードを合わせて頂き申し訳ないです。」
「留守は私とフェナカに任せなさい。ちゃんと仕事しとくから!」
こうしてウィンドウを先頭にして飛び立つ。
目指すは弱肉強食国家、サンダーランド。
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サンダーランドへは西区域の森の上空を通過しレムリア国を出る。そこからはずっと飛行だ。ハウラやアメジストから飛行魔法について教わったので飛び回るのは問題ない。さらに、翼を生やす事も出来る為、天狗からの訓練も受けた。ウィンドウもスピードを抑えてくれているので、ちゃんとついていける。まだまだスピードを出しても問題ないが、今はスモーキーがいる。彼女は魔法で空を飛んでいるが、普段は城で仕事をしている為、あまり慣れていない。フローラはもちろん問題なく飛行している。空の旅は順調に進む。
「この先がサンダーランドです。少ししたら休憩を取りましょう。」
ウィンドウは皆が無理なくついて来れるスピードに合わせ、さらに体力の事も考慮している。私はぶっ通しで飛び続けても問題ないが、フローラやスモーキーがいる。無理はいけない。
程なくして川が流れている所を見つけ、そこに降り立つ。ウィンドウの話によると、ここまでの道のりで半分くらいとの事だ。のどかな場所だが、魔物の気配は感じる。向こうは様子を伺っているだけのようだ。力の差を感じているに違いない。確認したところ、その魔物はゴブリンだ。しかも複数。おそらく彼等も国を追われたのだろう。うちに来ない事を祈るばかりだ。
「レムリア様。確認したいのですが、もしブラックがこちらの要求を呑まなかった場合はどうされるおつもりですか?おそらく、向こうの性格だと喧嘩を売ってくるかと思われます。」
「喧嘩するつもりはない。まぁ、要求を呑まなかった場合は…うちに来たそちらの国民は殺すと伝えるかな。実際に殺しはしないけど、向こうにはそう伝える。」
「レムリア様のお考えは分かりました。しかしそれだけですと、こちらを下に見てくると思われます。確かに、サンダーランド魔王は強者です。しかし、奴はゴブリン。レムリア様の方が魔物としての格は上です。今一度、上下関係は分からせておいた方が良いかと。」
「それは私も同意見です。奴らは我等天狗のスピードになんて反応出来ません。本気を出す価値なき相手です。」
「まぁ、分かっているが…国家間の事だ。慎重に動いた方が良いと考える。確かにこちらの方が格上かもしれないが、周りの目もある。他国に警戒されても困るからなるべく慎重に動きたい。」
そう、騒ぎを起こして戦争にでもなったら周りにどう見られるか…目をつけられたくない国ばかりなのだ。なるべくなら、穏便に済ませたい。一応、その説明で納得してくれたようだ。
「だから、あまり武力行為は避ける事。良いな?」
「かしこまりました。」
「承知しました。」
「御意の侭に。」
自分の考えをメンバーに話し、再び飛び立つ。サンダーランドを目指して。