52話 余所者はゴブリン
新章突入
謁見の間。その玉座に腰掛ける。この玉座は河童が作った物だ。材料は全て西区域から取ってきている。木材は虫妖木を使用しており、蚕の妖虫からシルクを提供してもらいクッションを作った。そのクッションはレムリアの角と同じような深紅の綺麗な色だ。背もたれが自分の背丈の倍もあり、玉座のデザインも相まってゴージャスだ。今まで、このような椅子に座った事はないため、魔王になって良かったと感謝する。
レムリアが玉座に座ると、その右にフローラが、部屋の隅ではメイド長であるルチルが待機する。
「さて、ゴブリン。話を聞きましょうか。まず、あなた達は何処からやってきたのですか?レムリア国へ来た目的は?」
「俺達はサンダーランドから来た!この国の力になるぜぇ!」
「そうだ!あの冒険者達も倒した!役に立つ!」
ゴブリン達は各々自分をアピールする。
「報告では、妖虫と吸血鬼トリオによって拘束。ゴブリンは囮として利用した。…となってますが?」
「ちげぇ!ちゃんと戦ったぞ!」
「俺達強い!」
「…まぁ、それは置いておくとして、サンダーランドのゴブリンがなぜレムリア国で働こうとしてるのですか?」
「サンダーランドってのは弱肉強食の国!弱い奴は追い出される!いつも喧嘩してる!強い奴威張る!国外追放された仲間いっぱい!でもボス言った。レムリア国行けって。」
何故レムリア国なのか分からないが、サンダーランドという国はかなり治安が悪いらしい。国から追い出されたゴブリンはその中でも強い個体をリーダーとして小規模の群れを成し、野生に生きるらしい。最近私が復活してからサンダーランドの魔王、レッド・ブラックが
「そんなに野生に生きるのが嫌ならどっかの国にでも行けば良い。レムリア国とかな!」
と、言ったようだ。まったく迷惑な話だ。
「まずいですね。レムリア様。このままでは、レムリア国にゴブリン共が押し寄せてくるかもしれません。」
「追い出される連中はゴブリンだけじゃねぇぞ!」
「少し黙ってろ。…フローラ、サンダーランドに行こう。道案内してくれるか?ガツンと言ってくる。」
「分かりました。しかし、すみません。実は私はサンダーランドに行った事がないのです。天狗に知っている者がいるはずなので、クロコアさんに連絡し、道案内の者を派遣してもらいます。」
「分かった。準備できたら声をかけてくれ。」
「レムリア様、この者達は如何致しましょう?」
「あまりウロチョロされたくないから、隣のホールに居させるように。メイドの誰かに見張りさせてそこから出さないように。」
「畏まりました。ローズに見張りをさせようと思います。」
「よし、それではフローラ。準備頼む。」
「畏まりました。」
まさか他国が絡んでくるとは思わなかったが、これは早めに対処しなければならない。サンダーランドに住む魔物はゴブリンだけではない。オーク、オーガ、トロール、サイクロプス等々。こんな奴らが大勢来られても困る。レムリア国に行けと言ったレッド・ブラックを問い詰める必要がある。ゴブリン達をルチルに任せ、謁見の間を出るのであった。