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魔王転生  作者: 紫舜邏 龍王
発展への道
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50話 防衛戦.中編

「さて、貴方がついていながらライが怪我をした理由を聞きましょうか?」


「はい…吸血鬼トリオからの報告にあったCランク冒険者チームのリーダーと戦闘した際に、剣による攻撃により負傷しました。すっかり防ぐものだと思っていた為、あたいの行動が遅く…このような事になってしまい申し訳ございません!」


「あらゆる可能性を考えて行動しなさいとあれだけ言っていましたよね?アベチュリアン。」


「はい…確かにそうです。これは私の責任…もしラリマ様のお許しを頂けるなら、あの炎男をこのあたいの手で仕留め、奴の生首をラリマ様の元に…」


「その必要はありません。あなたはライの治療をしなさい。その男は私が相手します。コーラルとデンドーラも、ラブとラドの事を頼みますよ。」


「「はい、畏まりました。」」


 南区域のスライム達、そのトップであるラリマは、我が子ライの負傷の報告を受け、静かに怒りを燃やしていた。戦場である為、このような事は想定の範囲内だ。戦えば傷つく事は当たり前。しかし、実際このような事に直面すると気分が良いものではない。ライに傷を負わせた人間は必ず仕留める。そう意気込んで、砦にて待ち構える。


「ライに傷を負わせた不届き者のみを砦に通せ。他のチームメンバーは生捕だ。」


「了解シマシタ。ソレデハ、我々モ動キマス。」


 ラリマの傍にいたトンボ型の妖虫が待機している仲間の方へ飛んで行く。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 冒険者達は炎扇団を見送った後、スライム駆除を開始する。


「なんか拍子抜けだよな。あの魔獣達の次はスライムかよ。こりゃ、早く終わらせて炎扇団と合流するか!」


「じゃ、私は怪我人の手当てをするわ!ないと思うけど、ピンチの時は言って頂戴。駆けつけるわ!」


「そんな出番はねぇかもな!」


 冒険者達は相手がスライムだと分かった時から余裕だった。今まで大量のスライムを相手にした事はなかったが、任務中に何匹かは見かける。しかしそのスライム達は強くなく、一定のダメージを与えれば消滅するのだ。動きもそこまで早くはなく、攻撃に関しても当たらなけばどうという事はない。ただ当たれば、肉を溶かす者、装備や武器を溶かす者などがいる為、厄介な事もある。しかし、不意打ちでない限りは滅多に当たるものではないので、冒険者達の中では駆除という感覚だった。


 冒険者達が戦闘を開始して数十分後、異変に気付き始める。


「おい、こいつら全然消滅しないぞ!こんなに攻撃を当てているのに!?」


「何故だ!どうなってやがる!?」


「魔法も飲み込むわよ?ここらのスライムなんなの!?」


 スライム達にどんなに攻撃しても消滅する事はない。かといってスライム達が俊敏に攻撃するわけでもなく…冒険者達の体力だけがどんどん減っていく状態だった。


(ふははは!バカめ。スライムは核が消滅しない限り倒す事は不可能よ!しかも我々は核の位置を自在に変えられるのさ!それに気付かないお前らに倒す事は出来ない!)


 余裕をかましていた冒険者達が必死になって自分達を殺しにきている姿を見て、スライム達は彼等を馬鹿にするのであった。


「あぁくそ!こうなったらヤケだ!」


 すると一人の冒険者がスライムに突き刺した剣をがむしゃらに動かした。


「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃああ!!!」


 これにはスライムも焦る。核を傷付かせないように移動させるが、その男の出鱈目な太刀筋とスピードにより予測が出来ない。そうなれば、こちらも感に頼るしかない。


「おりゃぁああ!!!」


 激闘の末、スライムは消滅した。冒険者が出鱈目且つがむしゃらに振るった剣は、スライムが必死に移動させていた核を直撃した。これは偶然起こった出来事だったが、冒険者はとても喜んだ。


「おい!連続で攻撃を当て続けると消滅したぞ!やはりダメージを蓄積させていけば、倒せる!!お前達、ここが踏ん張りどころだぁ!!!」


 それに続くように冒険者達はがむしゃらに剣を振り続けた。その行為はスライム達を追い込んでいく事になり、やがて消滅していく個体が出てきた。


(こいつら、マジか…こんな攻撃有りかよ…しかし、これで弱いスライムと思い込んだか…?お前達、我々は一旦引くぞ…)


 そして、スライム達は消滅したふりをして、その場から一時的に撤退する。


「よし、だいぶスライム達を倒した!炎扇団を追うぞ!」


 かなりのスライムを減らしたと認識した冒険者達は炎扇団を追い、走り出す。


 しかし、直ぐにその行手を阻む者が現れる。


「スライム……か?」


 そこにいたのはおどろおどろしい体色をしたスライムだった。





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 一方の炎扇団。三魔獣を匿ったスライム達を追い森の奥へと駆け込んだが、彼等もまた行手を遮られていた。


「何なの!次は虫!?あたし虫嫌いなんですけど!」


「落ち着け!デカくても虫だ!シャシャ、ファイアーエンチャント追加だ!」


「あいよ。」


 シャシャと呼ばれた女性はメラメラと輝く扇子を手に持ち、妖艶に舞う。すると炎扇団リーダーの持つフランベルジュの火力が上がる。


 妖虫達はトンボが多い。炎扇団四人から距離を置いて様子を伺っていたが、ファイアーエンチャントをしているのを確認すると一斉に突撃する。


「はぁぁああー!!!」


 炎扇団リーダーは向かってくるトンボの魔物に飛び込み、斬りつける。しかし、トンボはそれを避けすれ違いざまに爪で攻撃をする。その爪による攻撃をなんとか剣を自身の身体まで引き寄せ、防御の姿勢をとる。


「クッ、人間如キガ…!」


 炎を纏った剣による防御で、トンボの足は燃え上がってしまった。しかし、直ぐ羽で炎を消し、姿勢を戻す。


「ファイアーボール!」


 炎扇団の魔法使いが別の個体に攻撃を仕掛ける。


「フハハハハッ!ソンナ攻撃当タル訳ナカロウガッ!」


 ひょいひょいとファイアーボールを避けるトンボ。


「ふふふ。本当にそうかしら。」


「何!?グハッ…」


 ちょうどトンボが避けた先に待機していた炎扇団メンバーの一人がジャンプし、斬りつけた。彼は二振りの刀を所持しており、その表面は油で濡れているかのようにテラテラとテカっている。トンボは一刀両断され、地面にボトリと落ちる。そして、斬られた断面が着火し燃え出す。


「ナイス誘導だぜ、リーナ!」


「こんなもんよ!」


 ファイアーボールで上手く誘導し、仲間の射程範囲まで誘う。素晴らしい連携だ。


「ナンダ、コノ女ノ動キ…体ガ動カナイ!」


「ふふふ。魅惑の舞…あなた達は体を動かす事も私から目を離す事も出来ない。虫にも効果があるなんて驚きだけど。」


 シャシャはここが森である事を感じさせない足取りで優雅に舞う。その周辺にいるトンボ達はシャシャの虜だ。そうなった敵はもう脅威ではない。


「これで終わりよ。」


 シャシャは、扇子をブーメランのように飛ばす。扇子は弧を描くようにトンボに向かって飛んで行き、次々と斬り落としていく。周辺のトンボ全てを斬り落とすと、シャシャの手元に戻ってくる。


「ここら辺の魔物は大した事ないな…」


「グギャ!」


「ぬっ!」


 炎扇団メンバーの男は後ろからの殺気に振り向くと、ゴブリンが棍棒を持って攻撃を仕掛けるところだった。それを刀で往なし、距離を取る。


「次はゴブリンかよ…」


 妖虫に気を取られ、上空ばかりを見ていたが、そこには数十匹のゴブリンがいた。


「お前達倒してここの魔王の手見上げにする!覚悟しろや!」


「魔王…やはり新たな魔王がいるのか!」


「リーダー!先行け!ここは俺達でなんとかする!」


「大丈夫。ゴブリンよ!貴方は先に行って。様子見るだけにして何かあったら直ぐ引き返すのよ!」


「ここはどんな事でも情報を得る事が大切。ここまで来た意味がないわ。」


「分かった。お前等、無理するんじゃねぇぞ!」


 炎扇団リーダーは先を行く。


「オイ、オ前達!何故ココニイル!コノ忙シイ時ニ何シニ来タ!?」


「助太刀するぜぇ!こいつ等殺せば良いんだなぁ!」


「生捕ダ!邪魔スルナ!」


「オレ達の力ァ!見せてやるぜェ!!ヒャッハーー!!!」


 妖虫達はゴブリン達に邪魔されぬよう、ゴブリン達は自分達の力を示そうと…一斉に炎扇団に襲い掛かる。


「何だ?あいつ等仲が良くないみたいだぞ。」


「ふん。怒ってる相手に負ける気しないわ。」


「連携を崩せばいけそうね。サポートは任せて頂戴。勿論、戦闘もね…。」


リーダーを見送った炎扇団は落ち着いた様子で構えを取る。





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「やっと見つけたぜ。」


 吸血鬼トリオと妖虫数匹は後方待機組の冒険者達の捜索に当たっていた。発見したのは冒険者達がスライムと戦っている場所から数キロ離れた茂みだ。そこから目視で戦闘の様子を確認出来る事から不足の事態に備えていたのだろう。


「アノ四人ダナ。」


「あぁ、お願いします。」


 吸血鬼トリオと行動を共にしているのは、キイロスズメバチだ。アリオスの返事を聞くと、四匹のキイロスズメバチが一斉に飛び出す。向かう先は冒険者四人。そのスピードは凄まじいもので、ターゲット四人が気付いた時はすでに遅く、自慢の毒針で体に傷をつけられていた。


「な、何だ…あの蜂は…」


「まずい…刺された」


 次第に毒が回り、体の自由が利かなくなる。やがて、冒険者四人は意識を失い倒れてしまった。


「吸血鬼トリオ。後ハ、ラリマ様ノ指示通リ、何処カニ置イテクルト良イ。」


「協力ありがたい。では我々はこれで。」


 これで、冒険者ギルドに連絡を入れる者が居なくなった。




 そしてその頃、一人の人間と、一匹のスライムが対峙していた。


 


 



 


まだ続きます。

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