30話 魔王達
ドレーカ城に着くまでに、魔王会議についてフローラから説明を受けた。まず集まるのは十名。内魔王五名。残りの五名は各魔国についている種族の長だ。うちでいえばピオニーがそうだ。そこに大魔王が加わり、計十一名で話を進める。
因みに、大魔王は悪魔、他魔王四名はゴブリン、吸血鬼、龍王、そしてクラーケン。会議の時はクラーケンは参加せず、代理で妻でもあるスキュラが参加する。
会議の内容としてはその時によって変わるが、今回はレムリア復活について語る位だろうという事だ。それに、人間側がどう動いているかの報告もある。まぁ私としてはどんな奴らなのかが気になる。特に大魔王。大魔王と呼ばれる位だ。ビビって回りから舐められないようにせねば。
そうこうしている内に城に着いた。近くで見ると更にデカイ。門番には人の体に頭が犬という悪魔が三人立っていた。
「南の魔国、魔王代理のフローラ様。そして貴方は魔王レムリア様ですね?」
「お待ちしておりました。中へお進みください。」
「ワンワンワワン、ワンワン。」
「ちょっとスーさん、犬語になってる!」
「あ、失礼しました。中で案内する者が待機しております。」
門番に城へと通され中に入ると、メイド服に身を包んだ人間がいた。しかし彼女もまた、悪魔らしい。
「レムリア様、フローラ様。お待ちしておりました。会議室へご案内します。」
豪華絢爛な装飾が施された壁の廊下をメイドの案内の元、進んでいく。この壁だけで高級車が帰るのでは?と思わせる程だ。この世界の金の価値は分からないが。そもそも廊下に何故こんなにも気合いを入れているのか分からない。これも悪魔の感性なのだろうか。などと考えている内に部屋に着いたようで、メイドがドアを開く。自分で開けなくていいのは助かった。もし壊してしまったとしても、恐らく弁償は出来ない。部屋に入ると、すでにほぼ全員座っていた。
「ほぉー。てめぇが例の復活した魔王か。なんか弱そうだな。細そいし。」
「これはこれは。はじめましてですね。噂よりも美しい。小鬼の事は無視して良いですよ。」
「何が小鬼だ、蝙蝠野郎!脳ミソぶちまけるぞ!」
「脳無いので結構です。」
「うるさいよ、貴方達。静かに出来ないのかしら。ねぇ、ダーリン♡」
「え?フランクリン来てるの?」
「えぇ、復活した魔王を見たいってね。」
そうしてスキャラは横に置いてある壺を指差す。本当にその中に入っているのだろうか、と疑問に思っていると触手が出てきた。それもかなり大きく、絶対体が入りきらないだろうと思わせる程だ。恐らく壺の中の空間をいじっている。
「とりあえず、座ったら?」
「あ、そうだな。席は…」
座る場所が決まっているかは分からないが、席を探していると、ピオニーと目があった。彼女の隣のイスをポンポンと叩いている。ここに座れという事だろう。因みに、魔王の隣にはそれぞれの支配下の族長が座っている。
「間に合って良かったわ。レム姉。」
「一週間後って聞いてたんだけど?」
「それはね…」
と、言いかけたところでドンと扉が開き少女とワイバーンが入ってきた。
「ふむ、既に全員集まっておったか。」
その姿に皆驚く。そんな様子を気にする事なく、少女とワイバーンは席に着く。
「あ、貴方が来るとは思いませんでしたねぇ…デザーさん。」
「いつもは代理を寄越すのによぉ。どういう事だぁ?」
デザーと呼ばれる少女は腕を組ながら答える。
「ふん!昔の友人の顔を見に来ただけだ。もっとも、その友人は私の事を忘れておるだろうがな。」
絶対に自分の事だが…まさか龍が友達だったなんて…レムリアの友好関係どうなってんだ?
なんて考えている内に全員が集まり、部屋は静まり返る。今この場に魔王が集結している。しかし、迫力はない。さっきまでの会話を聞いていたからか、それとも魔王になった影響か?私がただの人間であったなら、平然と立つ事は出来ないだろう。そしてこの場に魔王のトップ、大魔王が来る。このメンツを束ねる者。それは一体どんな奴なのか…
今会議室の扉が開かれる。入ってきたのは、ペストマスクをかぶった女性を連れた幼児だった。
(え?大魔王って子供かよ!)