27話 思い出
明けましておめでとうございます。これからも魔王転生をよろしくお願いします。そして、女神ペリドートさんからメッセージを預かっています。
「皆さん、新年の幕開けです。今年もよろしくお願いしますね。もう、初詣には行かれましたか?これを機に、是非私の事も信仰して頂くと幸いです。特典として、優先転生券をプレゼントいたしますのでお考えください。」
との事です。因みに、優先転生券は十王から許可が降りなかったみたいです。そんな訳で新年一発目の27話です。どうぞ!
「貴方は一体何者なの?」
ピオニーは玉座に座ったまま、レムリアを見つめる。魔王と紹介された白き少女を。答えに困っているのか、少女は喋らない。口を開いたのはアメジストだった。
「ピオニーは覚えてるかな?昔、お姉ちゃんと呼んで遊んでもらってた人を。」
「えぇ、顔までは覚えていませんがその時の事は記憶にあります。」
もう千年前の話。その時の自分は生まれて数年しかたってなかった。赤ちゃんとたいして変わらなかった時に、その当時の魔王レムリアさんに遊んでもらっていた。顔は覚えていなくても、香り、感触、温もりは不思議と覚えている。その時を思い出すと、猛烈に恋しくなる。あの時に戻れるのであればと思う時はある。お母様、そしてレムリアさん。あの時は楽しかった。あの戦争が起こるまでは。話を戻すが、レムリアさんはその戦争で命を落とした。そのレムリアさんと同じ名を持つ者が目の前にいる。さらにアメジストさんがレムリアさんの話題を出した。この事から次にアメジストさんの発言が予想できてしまう。
「まさか…目の前の白い方はそのレムリアさん…とでも言うのですか?」
「その通り、最近復活した。レムリア国に結界を張ったのは復活式で国を…
「ふざけないでください!!」
アメジストの説明を妨げ、ピオニーは拳で肘掛けを叩く。
「レムリアさんに遊んでもらった日々は楽しかった。色んな事を教わりました。まだ幼いのにこんな事を教えて良いのか?と幼いながら思った事もありましたけど…でも、そんな日々を含めて思い出なんです。それを私は戦争で失いました。レムリアさんの死を知って私の心は深い暗闇に沈みました。それを救い上げてくれたのはお母様やアメジストさん、レムリア国の方々です。なんとか立ち直る事が出来た私はレムリアさんとの思い出を良いものにしようと努力しました。しかし、亡くなったという事実は変わりません。私はその事から目を背けようと、必死に忘れようとしていたのに!……どうして、貴方はレムリアと名乗るのですか!私に辛い過去を思い出させる為ですか!何故千年たった今…ハウラさんが棺に入れていたのを忘れられません。ハウラさんが復活させたんですか?貴方は生きているのですか?死んでいるのですか?アメジストさん、どういうつもりですか!」
目の前のハイエルフ、目には涙を浮かべている。レムリアとピオニーの関係は姉妹のようなものだったらしい。しかし、姉をなくしてその関係は崩壊した。でも、例えどちらか一方を失っても、姉妹という関係は残るものだ。形が変わるだけ。大事なのは残された一方が今後どう生きるか。しかし、それを彼女に伝える資格は俺にはない。それはレムリアの体ではあるが、中身は久野慧という別人だからだ。俺と彼女に接点はない。大昔に彼女と何して遊んだのか、何を教えたのか。それはレムリアと彼女との思い出であって、俺のではない。では、俺に今出来る事は。生前の記憶がないと周りから思われている。つまり、今後のレムリアは自分で作り上げるのだ。それと同じく、目の前のハイエルフ、ピオニー・アスリオーネとの思い出もこれから作っていけば良い。その過程で昔の心の傷が癒えてくれればなお良しだ。
私は目の前の白い魔王を見る。うっすら覚えている彼女の特徴と一致している。さらに、ここからでもとどいている香りも一緒だ。本当にあの日々を思い出す。うぅ、今でも泣き出しそうなのに、何を思ったのか目の前の白魔王はこちらに近づいてくる。
「ごめんな。生前の記憶は無いが…私は紛れもなく、レムリア・ゼオラだよ。長い間、苦しめてしまったようだが、これからは私がいる。辛い過去は忘れて良い。新しい思い出を作って行こう。」
魔王のくせに白く優しい手で私の体を抱き締める。あの時と同じ温もりを感じる。
ずるいよ、我慢していたのに…これじゃあ泣いちゃうじゃん。
そのあたたかくやさしい温もりを体いっぱいに感じて、周りの目を気にせず、大粒の涙を大声を出しながら流した。