26話 対面
短いですがよろしくお願いします。
城へと快調に進んでいく馬車。クラックは本当に馬車を操縦できるようだ。疑っていた訳ではないが、意外だった。因みに、私の方はだいぶ落ち着いてきた。ああいった視線にも慣れなければいけない。何時までもジララの後ろに隠れていてはダメなのだ。すまなかった、ジララよ。…ジララが正気に戻るのはもうちょっと後だな。
顔が赤くなっているジララにアメジストが心配してるふりをしたり、それを気にせず、アスリオーネ国について説明するロサだったりと、皆マイペースに過ごす馬車の中。こういうゆったりとした時間も良いものだと思うレムリアだった。
城の周りには城下町がある。規模は小さいが、うちの城には無いものだ。アスリオーネ国に来てから異世界感がぐっと出てきた。
外敵はいない為、町は塀等で囲まれていない。門番もいないので、すんなり入る事ができる。そのまま城へと進む。そしてこの城が立派なこと、うちの城より大きく西洋風だ。これを見ていると、うちの城を改築したくなってくる。まぁ、あれはあれで良いけど。
「さぁ、つきました。フェアリズム城です。クラックさん、ありがとうございます。」
「いえ、このくらいお安いご用です。それに、見せ場を作っておかないとまずい気もするので…」
皆馬車から降り、城内へと入る。すると、きらびやかな装飾が施されたシャンデリアが目に入る。その回りを妖精が楽しそうに飛び回っているのが見える。さらに、メイドは皆エルフのようだ。美しい。エルフのメイドだ。元の世界にメイド喫茶があったが、恐らくそれを凌駕する光景だ。皆深く一礼をする。決して「お帰りなさいませ、ご主人様♡」等とは言わない。それは彼女らが仕えているのが、ピオニー・アスリオーネというハイエルフだけだからだ。そしてその姫は目の前の扉の向こうにいる。…また扉か。
「では、今から扉を開けます。この先に、私の主であるピオニー・アスリオーネ姫がいらっしゃいます。」
そして、ロサが扉を開く。そこには、数十人のメイドと、執事、そして玉座に座るハイエルフがいた。
「ちょっと、ロサ!何で結界に穴開けたの?あれだけ言ったのに!」
「申し訳ございません!しかし、あれはアメジストさんが…」
「おーや?人のせいにするのかい?まぁ、私なんだけども。」
「あ、アメジストさん。わざわざこちらまで足を運ばなくても…こちらから行きましたのに。」
「いや、ある人が来たいって言うからね。」
「ある方とは?」
アメジストが自慢げに話す。
「その人物は、私の左隣にいる。レムリ
「魔王、レムリア・ゼオラ様です。」「ちょっと、クラックさん?」
「え?…」
ピオニーはレムリアを見る。大昔、自身が幼かった頃に一緒に遊んでくれたお姉さん的な存在だった人物と同じ名に困惑する。
そんなはずはない。彼女は戦死したのだ。目の前の白い少女をじっと見る。
「貴方は一体何者なの?」