22話 外の国偵察
アスリオーネ国は結界で覆われている。その為、中に入る事も認識する事も出来ない。国民を守る為に結界で空間を切り離したのだ。しかし、実際にそこに存在しているので同じ時間が流れる。互いが何をやっているかは分からないが、そこにいる事は分かる。二国は助け合ってここまできた。そして今回、一人の騎士がアスリオーネ国からレムリア国に足を踏み入れる。
アスリオーネ国の住民にとって、この結界を越える事は造作もない。騎士のロサ・キネンシスもたいして苦労せず、結界を越えた。
「久しぶりに出ましたが…相変わらずここは魔力が強いですね。」
ロサが出た場所は魔力石を生み出す木が密集している森。虫妖木と呼ばれるこの木は妖虫にとって大切な力の源だ。それはもちろん妖虫だけではなく、他の種族にも影響がある。そして、魔力石は魔道具や錬金術の媒体等、様々な用途に使える。魔力石が使われる事なく、ゴロゴロと落ちているこの森は他の国からしてみれば、宝の山なのだ。しかし、足を踏み入れる事はない為、当然ここを知る者はこの国以外にいない。魔力探知等で調べれば、ここの魔力が高い事には気づくだろう。そうなれば、何かしら人を送ったりするかもしれない。その場合には結界をはる可能性はある。
しかし、今現状見る限りだとその様子は無さそうだ。森に異常は見られない。中心部ではない為、妖虫の姿はない。その為、城に向かう事にした。
「ふぅ、やっと着いた…相変わらずこの国は道が無さすぎますね。獣道が有ればラッキーな程に。自然を残す心意気は良いですが、ここまで徹底しなくても…」
城に着いたのは約三時間後の事。途中迷いながらもなんとかたどり着く事が出来た。道の整備くらいはしろ、と心の中で悪態をつきつつ、姿隠しを発動させ、城の塀から中を覗く。城に来た時から庭に人の気配がしたのだ。気になって仕方がない。
「え?何あれ。」
思わず声が漏れる。庭にいたのは氷漬けにされた三人の人間。その前に見慣れぬ白い少女、よく見た顔の紫の少女、見たことがあるような気がする青い少女がいた。
「まさか、あの三人組が侵入して結界をはったとか?そんなに強そうには見えないけど…」
眺めている内に、青い少女が動いた。手を三人組の頭部にかざす。すると氷がみるみる溶けて、頭だけ解放される。白い少女と三人組が話しているようだが、耳に入ってこない。耳が悪い訳ではなく、三人組の事、結界の事、見慣れぬ白い少女の事で頭がいっぱいだった。これから自分はどう動けば良いか頭を働かせる。普段は頭より、体を動かす事が多いロサは何か考え事をする時は周りの注意が疎かになってしまう。これが自室等であれば問題ないが、敵地でやってしまうと、最悪死ぬ事もある。今回の場合は味方である為、攻撃される事はないが、周りを気にせず、考え事をするロサの背後からその様子を伺っている者がいた。
「で、ローズ。あれが侵入者?」
「はい…一応。普通に玄関から入れば良いのに、姿隠しまで使ってこそこそしていたので、侵入者と見なしました。……どうしよっか?」
「んー、レムリア様は気づいていると思うけど…構う感じではないし。害がなければほっといて良いわ。監視だけは続けてて。」
「はーい。…それにしても何でこんなに気付かないんだろう?」
「多分、考え事してるのよ。あの子昔からあぁなの。」
ルチルが去ろうとすると、レムリアがメイド二人を見て声を掛ける。
「おい!」
(ひっ、ばれたーーー!)
「ルチル、ローズ!」
(あ、ばれてなかった…)
「そこのエルフをこっちに連れてきて!」
「畏まりました。」
(やっぱりばれてたーーー!)