表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王転生  作者: 紫舜邏 龍王
魔王誕生
3/98

2話 女神による転生

 視界が真っ暗だ。意識がある。ここは何処だ?寝そべっている感覚がある。俺は確か死んだはず…


 そう、俺は死んだんだ。熊に殺された。そう言えば、熊に噛み付かれた時、とてつもない痛みがあった。お腹に激痛が。しかし、いつの間にかその痛みが消えていた。奴が俺の腹を漁ってる時は全く痛みを感じなかった。エピネフリンが出ていたのか、感覚が麻痺していたのかは分からないが、不思議だ。死ぬ間際まで痛みだけ感じなかった。あの熊は何だったんだ?


 そんな事を考えていると、声が聞こえてきた。


「……じ……ぶ……お…て…?」


 最初はよく聞こえなかったが、視界が明るくなっていくのと同時にだんだんはっきりと聞こえるようになった。


「大丈夫?起きてる?」


 ん?ここは?


 目を開けると、俺は草原にいた。そして目の前にはとても美しい女性がいた。黄金色に輝くロングヘアー、薄いピンク色の羽衣を身に付けている。顔は小さく整っていて、透き通った緑色の瞳で俺の事を見ている。ん?この目の色に見覚えが…


「ここは何処だ?そして貴方は?」


「私は、貴方達人間が云うところの女神です。まぁ、私の場合人間達からはあまり信仰されていませんがね。そしてここは、私の空間です。」


「そうなんですか。…俺は死んだんですよね?」


「そうよ、そして死後行くべき場所ではなく、此処へ来た。理由は分からないけど。本来であれば、ヤマの所に行き、裁きを受けるのよ。……あれ?十王だったかしら。でも今って部下の地蔵閻魔がやってるんだっけ?まぁ、いいわ。申し訳ないけど、此処から閻魔の所には行けないのよ。だから特別に私が転生させてあげる。」


「え、いきなり転生で良いんですか?裁きとかは?」


「私はそういうの出来ないのよ。やっぱり閻魔じゃないとね。と言うわけで、転生よ。」


「あ、ありがとうございます。で、転生先とかは決まってるんですか?勇者とか?」


 こういうのは、小説で読んだ事がある。勇者として生まれ、魔王を倒し、世界に平和をもたらす。ゲームのシナリオにもありそうだ。


「ぷっ、ふふ。ゴホン…失礼。勇者ではなく、魔王のほうよ。ちょうど良い感じの肉体があるのよ。」


「魔王かい!しかも何で笑ったんですか!」


「そこには突っ込まないの。準備は良い?始めるわよ。」


「ちょっと待ってください。まだ心の準備が…いきなり魔王って!」


「不幸な青年、久野慧よ。我が名は女神ペリドートである。覚えておくがよい。」


 すると、俺の周りに魔方陣が浮かび上がる。


「ちょっと!話聞いてましたかぁ!?」


 最後まで喋らないうちに視界が真っ白になる。


「ふぅ、行ったか…いやぁ、焦ったぁ~。」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 気がつくと何か箱のような物に入っていた。全身を伸ばして入っているのでかなりの大きさだ。何か嫌な予感がする。中は暗闇なのに、目で見る事ができる。中の構造を把握する事が出来た。魔王になったお陰だろうか。


 そんな事より、構造を知る事が出来て分かった。これ棺だ。絶対そうだ。しかもかなり良いやつだ。だってふわふわしてるもん。鍵閉まってるかな?とも思ったが、すんなり開いた。


 上体を起こして周りを見てみると、坪やら絵画やらが飾られていたが、埃を被っていてよく分からない。棺から出ようと立ち上がる時に、見慣れない物が視界に映る。


 自分の頭付近から腰辺りまで垂れ下がる白髪、それと同じ位の白い体、そして何より今までの自分にはついていなかった、2つの山。かなりの大きさだ。G位はあるのか?よく分からないが。しかも服がボロボロで、ほとんど裸のようなものだ。元は良い服だったのかもしれないが、今は公衆の面前では着れない、そもそも服とは言えない物になっている。幸い、山の先端の突起は隠れている。ここで服の状態を確認しておくと、別の事も確認する事が出来た。今まであったモノが無くなって、割れ…とにかく無くなってた。


 はぁ、これあれだよな。女子だよな。魔王って女子だったんだ。もっと凄いのを想像してたよ。

でかくて肌が紫でマント着けてて牙が鋭くて角が生えてる姿を。しかし実際は女の子だ。白い肌の華奢な体。しかし、出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでる。こんなんで本当に魔王なのだろうか?自分の体を見てみる。男の時は興奮したのだろうが、今はしない。自分の体だからな。少しは…とも思ったが興奮しない。それより恥ずかしい気持ちが大きい。何でこんなボロい服なんだよ。ほとんど裸だし。まずはまともな服を調達しよう。


 外に出るため、辺りを見渡す。直ぐにドアを見つけ、出ようとするが、今度は鍵がかかっていた。ダメ元で体当たりしてみる。すると想像していた結果とは違う事が起きた。


 俺の想像では、びくともせず、どうやって出ようと悩むという結果になるはずだったんだが…


 実際は、木製のドアがバッティングセンターで打ち出される球のように飛んだ。それもかなりの距離を。建物から大分離れた所に囲うように石造りの壁があるのだが、そこに激突した。よく見ると、ヒビが出来てる。


 何この体、怖い。魔王…魔王だな。そう言えば、今諦めもあったからあまり力入れてなかったんだよな。本気の力って一体…いや、考えるのはやめよう。


 とりあえず、出た建物を確認する。そして周りを見渡す。見た感じ霊廟のようだ。墓石が沢山ある。壊れている物が多いが…


 霊廟から出ると、森が続くようだ。どっちに行けば良いのか分からない。しかし、出口を出て真っ直ぐの所に生物の気配を感じる。恐らく人間ではない。とりあえず、そこに向かう事にした。


 俺の第一目的(服の調達)のために!

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ