宴会
番外編です。タイトル候補として、宴会ウォーもあったんですけどやめました。
「というわけで、皆…宴会だぁぁ!!!」
盛り上がる会場、そして料理がメイド達によって運び込まれる。ゾウよりも一回り小さい位の魔牛の丸焼き五皿。それを各区域ごとに分け与えられる。それを見て口に運び入れ丸飲みにしたり、味わったりと想像して涎を垂らす魔物達。
全ての魔牛が運ばれた時にハウラがある提案をする。
「折角のパーティーなんだからメイドちゃん達も参加したら?後の事はスケルトンメイド達にやらせるから。」
「そうだぞ。宴で酒飲まないなんて楽しくないだろ!」
「そうそう、それに久しぶりにうちの子達と遊んでほしいんだけど。」
「まぁ、こんな時位皆で親交を深めましょうよ。」
四天王三人が畳み掛け、魔王が一言。
「よし、メイド達は今日休みだ。宴に参加しろ!」
こうして、宴の参加者が増えた。
さてさて、私も楽しみたいが、やる事がある。それは国民の人間性(と言っていいのか分からない)を知る事。楽しい宴で素を出すに違いない。皆の事を知るには絶好のチャンスである。
というわけで、各席を確認する。今は皆魔牛を食べている。北区域達を確認すると、酒を飲んでいた。魔牛はおつまみのようで、消費スピードは遅い。酒さえ飲むことが出来れば何でも良いらしい。西区域達は魔牛に群がり、貪り食っていた。その消費スピードは恐ろしいもので、既に半分ほど無くなっている。とても虫とは思えない食事光景に驚愕していると、三妖虫と目が合った。彼女らは、ワイングラス片手に優雅に魔牛を食していた。しかし、その大きさは広辞苑と同じくらい。可愛い顔してえげつない量を食べる三人に苦笑いを浮かべつつ、南区域達を見る。魔牛の丸焼きがあるはずの場所には色とりどりのスライムの塊があった。恐らく丸焼きに覆い被さって食べているのだろうが、どこまで消費しているのかは分からない。少し離れた所で、ラリマが他のスライムとは違い、亀の魔獣の姿で肉を食べていた。その前に三匹並んで仲良く食事している三魔獣を見る限り、食事のマナーを教えているのだろう。微笑ましい光景に頬を緩ませた後、東区域達を確認する。魔獣達が雑談を楽しみつつ食事している。意外にも魔獣らしさがない。食事スピードは北より早く、西よりは遅いといった感じ。その光景を眺めているのは私だけではなく、その少し離れた場所でハウラがイスに座り、ワインを飲んでいた。すぐ横にはメイド服を着たスケルトンがワインボトルを持って、控えている。ハウラよ、お前のどこにワインを流し込むのか…
考えるのはやめて、魔城の者達を見る。大きなテーブルにはフローラ、アメジスト、ジララ、ジェムシリカ、そして私が座っている。ドールズが肉を切り分けて配膳し、酒を注いでくれている。その隣のテーブルではメイド達で盛り上がっている。やはりドールが怖いらしい。魔城チームは食事しながら雑談を楽しんでいる。しかし、東区域より人数が少ないので魔牛の消費スピードは一番遅い。
魔牛の丸焼きを一番早く食べ終えたのは南区域達だった。しばらくして見てみると"皿"しか残ってなかった。次が西区域達、次いで東区域、北区域と続く。魔城チームの肉は食べ残ったので欲しい区域で山分けにした。
そして、この宴会で酒豪の存在も確認出来た。基本一番飲むのは妖怪達。中でもラピスは凄まじいものがある。普段から飲んでいるにも関わらず、宴会の時になるとその量も増える。水を飲んでいるとしか思えない位の飲みっぷりで見ていて気持ちよくなる。その他は南区域達、一部のスライム。体内に入れた瞬間にアルコールを分解する個体がいるそうで、そいつはガブガブと飲んでいた。ラピスにちゃんと味わって飲んでいるのかと言われ、喧嘩になり飲みくらべに発展したが、勝負がつかなかった程だ。
魔牛が無くなった後に料理が出されたのには驚いた。そう、スケルトン達が運んできたのだ。しかも、肉を焼いたものではなく、調理された正に料理と呼べるものだ。それをスケルトンが作ったということに驚きを隠せないのと、疑問を感じていた。もう、こいつらから料理を教えてもらえば良いのでは?とも思ったが、メイド達が怖がるので恐らく駄目だ。スケルトンでも人形である事には変わりない。
宴会は夜遅くまで続いた。かなりの量を食べた。魔国皆と話す事が出来たのはとてもありがたい。楽しい時間になった。今回の宴会、魔国が無防備になったように見えるが、アメジストが魔国に結界を張り、ジェムシリカのガーゴイル達に各地域を監視させていたので、警戒を怠ったわけではない。その間の侵入者もなかった。因みに、この結界は入ろうとする者を拒み、侵入しようとする者を術者に知らせる効果がある。この結界を認識するのは非常に難しいのだが、一人だけ気づいた者がいる。この話しはまた今度。
今回の宴会、皆の性格が分かったので良かった。これからこの国の王として、皆を引っ張って行く者としてもっと皆を知っていかなければいかない。最後に言う事があるとすれば、
「魔物のイメージ崩れた。皆良い奴だ!」