20話 魔王復活式
目が覚めた瞬間にドアがノックされる。まだ起きたばかりで頭が回っていない私は、ベッドの上でしばらくボーッとしていた。すると眠っていると思ったのか、ルチルが入ってくる。
「失礼します。おはようございます、レムリア様。起きていらしたんですね。早速ですが、復活式の準備を。」
「あー。」
部屋にファントムとスモーキーが入ってくる。
「おはようございます、レムリア様。本日の復活式ではこのドレスを着ていただきます。」
「着替えるー。」
「レムリア様、おはようございます。簡単なお食事を用意しました。メイド長特製のハーブ入りなので、気分もほぐれると思います。」
「食べるー。」
「…レムリア様、寝ぼけてますか?」
「えー?大丈夫ー。」
「スモーキー、着替える前に洗顔させて。」
「でしたら私にお任せを!」
いきなりストロベリーが入ってくる。
「ストロベリー!貴方にはフローラの方をお願いしたでしょ?」(この為に遠ざけたのに…)
「フローラ様からはもう大丈夫だからレムリア様を見るように、と言われました。」
「こっちも大丈夫だから、会場の方を手伝ってきて。」
「あー、ストロベリーおはよう。」
「おはようございます!分かりました。レムリア様の朝笑顔が見れたので行ってきます!」シュバババ
「さぁ、レムリア様。お顔を洗いましょう。」
「朝から大変だわ…」
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「あ、これ美味しい。」
「ありがとうございます。」
「んー、頭もすっきりしてきた。」
「それは良かったです。では、早速このドレスに着替えてください。」
「あぁ、…え?こんな露出多い服着るの?」
「レムリア様が生前に着ていたものです。私が修復しているので新品同様です。」
「それに、あまり時間もありません。午前から開始する予定に変更になったので。」
「そんな早くからやるの?」
「国民がもう集まった見たいで。」
まじか。それなら急がないと!恥ずかしいとかプライドがとか言ってる場合じゃない。何十分前行動なんだよ!魔物って時間にルーズなのかと思ってたわ。
それから大急ぎで着替え、髪を整えて部屋を出る。朝日が眩しい。
会議室に行くと、フローラがスタンバイしていた。もちろん、ドアのすぐ近くに立ったまま。各席には、関係者が立っている。
「おはようございます。レムリア様。早速ですが、打ち合わせを始めさせていただきます。」
そしていつもの席、一番奥に座る。右にはフローラ、その隣にジェムシリカ。左に座っているのはアメジスト。そしてその後方で、メイド達が待機している。
打ち合わせは各自の役割と、式の進行について。式は簡単なもので、フローラが魔王復活を国民に知らせ、私が一言二言言い、魔王復活を宣言する。といった感じ。その後は宴会をやって終わるとの事。理由は長話が嫌いな奴(妖怪を除いた魔物)が半分以上いるのと、一部の奴(妖怪)が宴会好きで、強引に宴会を開こうとするから。大丈夫か?こいつら。と思ってしまう。
因みに、役割についてはフローラは司会進行。ジェムシリカが式会場と各区域の防衛。アメジストが会場の防衛。メイド達は宴会の準備。私はというと…
「レムリア様は我々の指導者であり、支配者であり、象徴的存在です。ビシッと御言葉を頂戴いただければと思います!」
つまり、私がやる事は発言だけだ。それだけだが、緊張する。ヤバい、鼓動が大きくなってる。
それを見破ったのか、アメジストが背中を叩いた。
「大丈夫、大丈夫。失敗しても誰も気にしないから。それよりこの程度で緊張してるレムリアなんか可愛い。」
「はぁ?緊張してねぇし、可愛くねぇし。ただの武者震いだよ。」
「まぁ、冗談はさて置いて、皆嬉しいんだよ。あんたが復活して。この国ではレムリア・ゼオラは英雄的存在。そんな人物が再びこの国のトップになる。長命が多い我々がこんなに歓喜する事はあんまりない。これからどんな事が起こるかワクワクしてる。あんたがいるこの国での出来事を皆楽しみたいんだ。だから失敗したって大丈夫。」
「アメジスト…ありが
「皆で笑ってあげるから。」
「おい!」
こうして、アメジストに緊張をほぐされた。この部屋の中ではこんな事を言えるのはアメジスト位で、非常にありがたい。その後、ある程度の段取りを話し、打ち合わせを終えた。
式会場にはすでに多くの魔物達が集まっていた。最前列にいるのは生前のレムリアを知っている者達。ハウラ、ラピス、ラリマ等がそうだ。その後ろから権力、力の強い順で並んでいる。
そして今ステージにはフローラ、アメジストがいる。
「さぁ、皆さん。よくぞ集まってくれました。開始予定時間の何十分前に来て…皆さんの気合い伝わってきます。そう、この日を待ちわびた事でしょう!今日ここに!我々の魔王!レムリア・ゼオラ様が復活なされた事を!」
そして、私は打ち合わせ通りステージに立つ。打ち合わせには無かった大量の紙吹雪が舞う。チラッと後ろを確認すると、紙吹雪を投げているドールズと、ウィンクをしながらグッドポーズをしているアメジストが見えた…犯人こいつだ。
「今日まで我が国は魔王不在のままだった。他国からは傘下に入るようにも言われた!だがしかし!今日からは違う!魔王レムリア・ゼオラ様が望む国を築き、この国の力!我々の力を示すのだ!」
フローラの大演説、そんな中私は一つの事が気になって仕様がなかった。そしてそれをアメジストに小声で言ったのだが、これがいけなかった。
「なぁ、フローラって大声出すと、女の子みたいな声だよな。」
「………と、そんな細かい事は置いといて、早速レムリア様の御言葉を頂戴する!」
今まで演説していたのを打ちきり、いきなり私に振ってきた。言わなければ良かったと後悔をしながら一歩前に出る。
不思議だ。あんなに緊張していたのに、いざステージに立ち皆の顔を見渡すと、リラックスしている。何だかよく分からない感情が込み上げてくる。
「皆…随分と待たせたな。私が目覚めてまだ数日だが、この国を見てきた中で思った事がある。ここの暮らしの水準は高くない。私が長年ほったらかしにしていたのが原因だ。申し訳ない。しかしだ!私がこうして復活した以上は、他国よりも!人間の国よりもずっと良い生活が出来るように改善していく!そのつもりだ!生前の記憶は無いがそれでも良い奴はお…私についてきてくれ!」
「「「おおおーーーー!!!」」」
「今日ここに!レムリア・ゼオラ!そして、レムリア国の復活を宣言する!!」
皆歓声を上げる。魔王の『復活』に大喜びだ。これからこの国は良くなっていくと。しかし、俺にとっては『誕生』だ。これから俺は魔王として、この国を導いていく。損得勘定等ではない。この国の皆が好きなんだ。それは俺が生前にデザインした魔物達そっくりだから。我が子ように可愛がってた者達が今目の前で動いている。こいつらに最高の暮らしをしてほしい。皆を守りたい。そう思う。
「というわけで、皆…宴会だぁぁ!!!」
一章 魔王誕生 終わり