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魔王転生  作者: 紫舜邏 龍王
魔王誕生
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19話 復活式前日その2

 大図書館を出て、一階に戻ってきた。実はこの城、あまり大きくない。和風の城の為、ある程度大きさが決められている。美しく見えるように作った結果らしい。城内で一番大きいのが大図書館だ。明日のような式で、国民が集まるときは全員入る事が出来ない。かなり大きく改築する必要があるかもしれない。そんな事を考えて歩いていると、荷物を運んでいるガーゴイル石像とジララを見つけた。


「あ、レムリア!今日から、魔城でお世話になります!」


「おはよう、これからよろしくな!」


 ジララは引っ越し作業中だ。ジェムシリカに手伝ってもらっている。石像五体で荷物を運んでいるが、こう見るとなかなか便利に見えてくる。


「おはようございます。レムリア様。しかし、ジララさんがレムリア様の事を呼び捨てとは…どんな関係なんですか?」


 実際は石像が喋っているのだが、ニヤニヤしているのが伝わってくる。


「別に何もないぞ?復活して最初に会ったのがジララだったんだ。…それだけだ。」


「本当にそれだけですか~?」ニヤニヤ


「一番最初の特権よ!それが私よ!それだけよ!私とレムリアは呼び捨てする仲なのよ!」


「は、はい。分かりました…」


 石像ごしでも、ジララの迫力が伝わったらしい。ジェムシリカの追及は終わった。その時、一番後ろにいる石像の荷物が気になった。この場の雰囲気を変えたいという気持ちもあったが、その荷物だけ異質だった。


「ところで、ジララ。その氷付けにされてるやつは…」


「そう、あの侵入者三人組。どうしようか迷って結局持ってきちゃった。」


「後で実験に使いたいから譲ってくれない?」


「人体実験とは…マッドサイエンティストってヤツですねぇ。」


「違うわ!人間の国のスパイとして魔物化出来ないかの実験!」


「し、失礼しました。」


「あ、ごめん。怒ってないから。」


 ジェムシリカが泣きそうになってるのが伝わってきた為、少し慌てる。ちょっと怒鳴りすぎたようだ。


「大丈夫です。すみませんでした…」


「いや~、ジェムシリカ。レムリアを怒らせたわねぇ。」


「うぅ~、すみません~。」


 いや、怒ってないから…てか、この二人楽しんでないか?まったく。


「ん、どうした?レモン。」


「あ、いえ。レムリア様って意外と気さくな方なんだなぁ~って。親しみやすい雰囲気というか…もっと怖い方かと思ってました。」


「そうですよ!レムリアは誰に対しても優しいのです。我々がレムリアの下につくのはその性格故!その笑顔を守りたい!ただそれだけです!」


「はいはい、分かったよ。ありがとね。というわけでレモン、これからもこんな感じで行くけど、不満はある?」


「いえ、ないです!やる気出てきました!ありがとうございます!」


 びしっとほぼ直角の敬礼をするレモン。なんか変なスイッチ押したか?


 それから少々話し込み、三人はひとまず地下牢に入れる事にした。やる事も無くなった為、式会場に行ってみると、ステージの改修が行われていた。聞いた話だと、メイド達が作ったステージが気に入らず、河童達が勝手に改修工事を始めたそうだ。そして、より良いものになっていくステージを見て、感動したメイド達が手伝っているとそんな感じだ。まぁ、確かにあのステージはさすがにダメだろう。河童達が来てくれて助かった。


 しかし、揉め事が起きててあまり進んでないように思える。すると、クラックがこっちに気づいたのか近寄ってくる。


 「レムリア様、おはようございます。すみません、河童達がいきなり改修を始めまして…」


「何か問題でも?」


「いえ、こちらとしては助かってます。ただ、レムリア様の許可が降りていないので…」


「国を思っての行動に許可は要らないよ。報告だけしてもらえれば。」


「はい。分かりました。」


「で、何か揉めてるようだけど…」


 河童のトップと思われる少女とメイド長のルチルが話し合いをしている。


「やっぱりデザインが気に入らない!ステージの細かいところにも装飾すべきだ!」


「いえ、ですからこのステージは式終了した後、撤去する予定なのでそこまでする必要はないです。」


 どうやらデザインの事で揉めていたらしい。ここはルチルを助けるか。確か彼女の名前はアクアだったはず。


「アクア、ステージの改修ありがとう。デザインは凝る必要はないよ。今度城を改修しようと思うんだけど、その時にお願いして良いかな?」


「し、城をですか!もももももも、もちろんです!城を弄れるなんて!思っても見なかったチャンス!さっさと終わらせて設計図を描かねば!」


 それから高速で作業を進めていく河童達。知らなかった。こんなに技術力があったとは。この分だと余裕で明日までには完成しそうだ。いや、今日中には終わるかもしれない。ここは彼女らに任せるとしよう。


「じゃあ、私は部屋に戻るよ。明日の準備もあるし。」


「えぇ、お任せください。レモン、頼んだわよ。私は料理の方も見てこないといけないから。」


 ピキーンッ!


「待て、ルチル。"料理"と言ったか?」


「えぇ、折角だから振る舞うようにとフローラから言われております。」


 まさかあの肉料理をか?


「因みに、何を出す予定だ?」


「魔牛の丸焼きの予定です。」


 やっぱりかぁ~!


「誰が作る事になってる?」


「ファントムです。料理担当はファントムなので。」


「あ~、ファントムか。なるほ…ファントム!?何で幽霊に料理させてんの?」


「すみません、言いそびれました。ファントムが料理担当なのは、本人の強い希望です。他にまともな料理を作れるのは私くらいなので任せてます。」


「なるほど。」


 メイドの一人、ファントムは幽霊だ。まさか料理をしているとは思ってもみなかった。顔合わせの時は、幽霊という雰囲気はなく、人間と見た目は変わらなかった。言われて見れば料理してそうな感じはあった。だから肉を焼くくらいしか出来なかったのか…幽霊だからなのか、レパートリーが無いだけなのか…それは後で考えるとしよう。


 この話を聞いて、料理は出すなと言えなくなったのでファントムに頑張ってくれと伝えるようルチルに言い、自室に戻る事にした。


 部屋に戻ってからは明日の事を考える。国民に何か言わなくてはならない。俺は生前、ただの会社員で、政治家だったわけではない。大勢の前で喋った事もない。初めての機会だ。しかし、今心の中ではワクワクしてる。こんな経験は滅多に出来ない。死を経験し、転生を経験し、そして魔王として、魔物達を導く。まるでアニメやゲームのよう。しかも、国民である魔物達は皆、俺がゲームでデザインした姿にそっくり、城にいた者や四天王まで。ほぼ同じ者もいた。何が関係しているのかは分からないが、親しみが湧いてくる。今まで我が子のように思っていた魔物達が今実際に動いている。こいつらに良い生活を送ってもらいたい。それだけだ。その思いを明日はぶつけようと思う。


 明日の復活式は魔王として、大きな初仕事だ。



 

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