18話 復活式前日
長くなるので、分けます。
視察を終えた次の日、復活式の前日だ。いつもより、早く起きた。そもそもこの体は睡眠を必要としないらしいが、元人間だったので普通に寝る。そして、この世界に来て誰かに(メイド)起こされるのが朝の日課となっているのだが、この日はメイドが来る前には起きていた。顔を洗っている時にレモンが入ってきて驚いていた。後で聞くと、私を起こすのを楽しみにしていたらしい。詳しく聞こうとするとはぐらかされるので、深く追及はしない。
今日は特別な行事はないので、私服だ。だが、クローゼットの中を覗いてみると、ラフなドレス、ゴスロリ、動きやすく改良された着物、露出が多い黒服といった着るのがなかなかハードな物しかない。因みに、全体の六割位が露出多い服だ。どれを着るか、出来れば着たくない物が多いが、早く決めないと後ろで待っているレモンに申し訳ない。ちらっと後ろを見ると、期待の眼差しを向けている。何を手に取るか気にしているらしい。服くらいゆっくり決めさせてほしいものだ。
結局、選んだのは着物。これが一番マシだ。あまり抵抗なく着る事が出来る。着替えた後は食事をとりながら、今日の予定を聞く。明日はいよいよ復活式だが、私が特に準備する事はないらしい。準備の様子を見て回ろうと思う。食事を終えると、レモンは食器を片付ける為に部屋を出ていく。そう、メイド達の料理の腕前向上の件だが、人間の国に行き、料理本なんかを調達してこようと思う。転移の練習にもなるし。因みに、アメジストにも手伝ってもらう。ついでに、観光もしてみたいし。と、レモンが戻ってきたので、とりあえず図書館に向かうとする。
~~~~~~~レモン視点~~~~~~~~
さぁ、初めてのレムリア様のお世話係です。いや~、まさか三人目に私が選ばれるとは思っていませんでしたよ。スモーキー先輩とストロベリーちゃんからレムリア様の寝顔は可愛いと聞いていますからね!この際にしっかりと眼球に焼き付けておくのです!
コンコンコン ガチャ
失礼します。…ベッドにはいないようですね…ん?音が聞こえる。
「ん?あ、レモンか。おはよう。」
「おはようございます。レムリア様。」(起きてるーーー!何で!いつも寝てるからって聞いていたのにー!起こすの楽しみにしてたのにーー!ストロベリーのバカぁ!)
「お早いですね。」
「あぁ、明日の事もあるからな。目が覚めた。」
「そうなんですね。あ、お食事を持って参ります。」
「頼む。それと、その食事の事で相談があるのだが、後で図書館に行こう。」
(げ、マジか…あ、でもレムリア様と一緒なら良いや。)「畏まりました。」
レムリア様が着替えをするためにクローゼットを覗く。さぁて、何をお手に取られるのか。スモーキー先輩に報告しなければなりませんからね。レムリア様はどんな服でも可愛いですよ。絶対!
暫く悩んで決められたのは着物と呼ばれる物ですね。これは確か、ラピス様達が広めたと聞きました。北区域に住んでいる方々はこの着物を着る事が多いと聞きます。スモーキー先輩は作りがいのある服と言っていました。これは後で必ず報告しなければ。しかし今はそんな事よりも目の前のレムリア様に注目です。全体的に紫色で、落ち着きのある優雅な雰囲気を醸し出しています。私は服なんてあまり興味はありませんが、それでも凄いと思います。何より似合っている!可愛い!
と、一人で盛り上がっている場合ではありません。食事の用意をしなくては。しかし朝から肉ですか。私は魚派です。
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食事を終えた後、レモンと二人地下の大図書館へと向かう。長い階段の途中で何回もレモンが、本当に行くのかと聞いてくる。ちょっとしつこいが、段々可愛くなってくる。軽くあしらって、その質問が二桁に達した時、図書館の扉にたどり着いた。
前回はいきなりアメジストが飛び出してきたので、今回は気を付けなければ。と、警戒していたがそんな事はなく、普通に入れた。勿論ドアを壊す事もなくだ。
前回来たときに道は覚えているので、迷う事はない。歩き出して、最初の部屋を通過した時、後ろから声がかかる。
「おはようございます。レムリア様。」
「にゃおい!」
レモンの声でびっくりしたが、表情には出てないはず。後ろを見ると、レッドがいた。
「おはよう、レッド。アメジストに会いに来たんだけど。」
「奥におります。ご案内致します。」
(く、口が動いてない。瞬きもしてない。…人形こえー。)
レッドの後を付いていき、アメジストの部屋まで行く。
「私はここで、失礼します。」
「あぁ、ありがとう。」
「いやぁ、レムリア。おはよう」
「おはよう、ちょっと相談があるんだ。料理本なんてある?」
「あるにはあるけど…解体して焼く、位しか書いてないわよ?かなり古い物しかないから。食事不要だから正直、その手の本を集めようなんて思わないし…ステマニア国で調達するしかないかな。」
「分かった。では今度ステマニア国に行こう。本の調達と、人間達がどんな暮らしをしているのか見てみたい。」(実際気になるし。)
「分かったわ。日程を合わせて行きましょう。貴方も来る?レモン。」
「にゃ!わ、私ですか!折角ですが、仕事があるので…それにこの姿だと…」
レモンは猫族、猫耳と尻尾がついている少女だ。その姿で人間の国に行けば騒ぎになるだろう。どのような騒ぎになるかは分からない。しかし、面倒な事には変わらない。それを心配しての事だ。
「まぁ、無理にとは言わないけど…私の魔法で人間の姿に偽装する事は可能よ?」
「あ、ありがたいのですが、メイドの仕事が…」
「まぁ、それもそうね。ごめんなさいね。久しぶりにルチル以外のメイドが来たから嬉しくてつい…」
「いいんです…こちらこそ、なかなか行けないので…」
「まぁ、暇なときでも遊びに来てね。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「んじゃ、そういう事でよろしく。」
図書館を出るため、レモンと一緒に後ろを向いた時、目の前にレッドがいた。それを見たレモンは驚きの声(にゃおい!)を上げ、涙目でこちらを見てきた。可愛いな、おい。何も言わずに涙を拭き、図書館から出た。