17話 緑鳥スーフェン再び
今回は短いです。それと、そろそろ一章が終わります。
視察を終え、城に帰ってきた時には辺りは暗くなっていた。城の前の広いスペースには簡素なステージが出来ていた。復活式はここでするらしい。しかしこのステージ、出来はあまり良くない。町内会のお祭りのステージの方がしっかりしている、と思える。ただ、このステージを作ったであろうメイド達の一生懸命さは伝わってくる。
「復活式は明後日。私はそれまで、準備に入ります。レムリア様は自室でごゆっくりなさって下さい。復活式のお召し物はスモーキーに準備させます。」
「分かった。先に城内に入ってくれ。少しやる事がある。」
「畏まりました。では、お先に失礼します。」
フローラが中に入った事を確認して、後ろを向く。城を背にした状態だ。
「さぁ、そろそろ出てきたらどうだ?今日一日付いてきた事は知っている。」
すると、私の目の前の空間が鳥の形になり、瞬く間に緑色に染まる。夜でもサングラスをしているそいつは、大袈裟なくらいの一礼をして口を開く。
「これはこれは。ばれていましたか。完璧に姿を消していたつもりでしたが…さすがです。」
「何故か分かるんだ。隠れていようが気配は分かる。ところでスーファミ、なぜ隠れて付いてきた?」
「いえ、スーフェンです。まぁ、その質問の答えは簡単です。本来私はやすやすと姿を見せないんです。ペリドート様の眷属故。そして、確認するため…ですね。元人間である貴方が魔物達とどう接するか。」
「今日接して分かったよ。魔物も人間と変わらないって。妖怪がいた事には驚いたけど。でも、ここの連中の暮らしはあまり良いとは言えない。皆が私を…俺を魔王と慕ってくれるなら!俺は奴等の暮らしを充実させなきゃいけないと思ってる。それが上に立つものの役目ならね。当然だろ?」
「ふむ…いきなりの事なのに、動揺する事もなく、むしろ魔物達を導くという。」
「そんな大層なものではないよ。折角、王になったんだ。王らしく振る舞おうとしているだけだよ。」
「貴方の考えは分かりました。これから貴方がこの国をどのように作っていくかも興味が出てきました。貴方の国作り、見物させて貰いますよ。」
「あぁ、楽しみにしててくれ。」
「では、またいずれ。」
一礼をし、音もなく消え去る。それを見送った後、レムリアは城に入る。そのやり取りを目撃していたのは、一体のガーゴイル像。しかし、その頃ジェムシリカは眠っていた為、二人のやり取りが広まる事はなかった。