15話 南区域視察
どうしてこうなった…
私は今、南区域の砦に来ている。ここの砦は、人間達の進入を防ぐ為の防衛施設だ。スライム達が管理している。そして、今は三匹の魔獣の子達にじゃれつかれている。子供と言っても、人と同じ位に大きいので、身動きが取れない。一匹は蛇のような魔獣、蜥蜴のような魔獣、そして鼠のような魔獣。
スライム達が管理している場所でなぜ魔獣がいるのか、この魔獣の子達の親は誰なのかというと、南区域担当者、ラブラド・ラリマだ。彼もスライムであるが、補食した者の能力を得る、その姿に変身出来る、という能力があり、他のスライムよりもずば抜けて強い。その為、南区域担当者を任されている。この三匹の魔獣の子の親を補食したのだが、何故かなつかれているらしい。ラリマの能力のせいなのか…因みに、今は白い巨蛇の姿をしている。
しかし何なんだ、この生物は。人間であれば、確実に恐怖するであろう彼らが可愛く見えてくる。…もう我慢できない。
すりすりすりすり…
「あ、本格的に可愛がり始めた。」
「レムリア様にこんな一面があったとは。」
「可愛い。」
「ですね…」
「レムリア様は。」「うちの子達は。」
「聞き間違いですかね。可愛いのはレムリア様ですよ?」
「聞き間違いではありませんよ。自分の耳に自信を持ってください。可愛いのはうちの子達です。レムリア様は可愛いというより、美しいです。」
「可愛いさも、美しさも兼ね備えているのがレムリア様です。」
「レムリア様が可愛くないと言った訳ではないですよ。可愛いさの種類が違います。可愛いは可愛いのです。それを思う気持ちは貴方と同じです。フローラ。」
「私は貴方を誤解していたようです。同志ラブラド。」
二人とも何を考えているのか表情からは分からないが、何か意気投合したらしい。こいつら何やってるんだ…
周りにはラリマ配下のスライム達がいるのだが、リーダーとフローラのやり取りを見て、一匹のスライムが声をかける。
「親分、親バカも良い加減にしないとレムリア様に引かれますよ。」
「私のは親バカとは言いませんよ。しかし、そうですね。本題に入りましょう。レムリア様、我々に出来る事があれば何なりとお申し付け下さい。」
「あぁ、そのまま砦の警備を頼む。新しい仕事が出来た時はその都度、連絡する。そして、今日からお前を四天王に任命する。これからよろしく頼むぞ。」
「は!我々スライム一同、レムリア様に付いていきます!」
四天王 朱雀ラブラド・ラリマ
その後、例によって砦を見て回ったのだが、数十分で終わった。砦と言っても、ただの分厚い石壁が数メートルの高さで、横一直線に延びているだけだ。所々に見張り台があるだけで、重要な物はほとんどない。この砦自体が重要物ではあるのだが、ここ数百年は人間達の進行はない。ちらほら侵入しようとする奴はいるらしいのだが、砦に辿り着くまでの道で、ラリマの子達によって、倒される。なので、この砦にスライムがいること、そしてこの砦自体の存在を知っている人間がいないらしい。そう、ここのスライム達は暇なのだ。何か良い仕事があったら頼みやすい。そんな事を考えつつ、皆に挨拶をし、最後にフローラが復活式の事を伝えると、喜びの音を上げた。
そして、南区域を後にした。
蛇がラブ、蜥蜴がラド、鼠がライという名前です。本文に入れる予定だったのですが、無理でした。