14話 西区域視察
Gが登場
西には広大な森がある。そこを担当している者に会いに行く道中、飛んでいるので飛行中にフローラが声を掛けてきた。
「レムリア様、先ほどのラピスさんとの約束ですが…」
「あぁ、お互いいつでも喧嘩を買うこと、だな。まぁ、私も自分の実力を知りたいし、色々技を試したいのもあったからな。約束したんだよ。」
「それは良いのですが、やるなら国外でやって下さいね?」
「え?城の庭じゃ駄目なの?」
「更地になるんでやめて下さい!」
いつもの笑顔で、目の前に迫ってくる。笑顔が怖い。
「はい…そうします。」
やり取りをしている時に、木が多くなっている事に気付いた。
「そろそろ西区域です。」
この辺に生えているのは普通の大きさの木だ。奥にはそれ以上に大きい木が生えている。よく目を凝らすと、その周辺に虫が飛んでいる。西の住人だろう。大きさは人と同じ位だ。向こうもこちらに気付いたのか、数匹こちらに向かって飛んでくる。
やって来たのは、蝶々一匹、蜻蛉四匹。
「レムリアサマ、フローラサマ。エンロハルバルオコシクダサイマシテ、アリガトウゴザイマス。ダイチュウヨウボクマデ、ゴアンナイシマス。」
自分と同じ位の蝶々が喋っている事に驚きを感じつつ、彼らの後ろを飛んでいく。
見えてきたのは、一際大きな木。高さは勿論、太さに関しても桁違いだ。この木が大虫妖木と呼ばれているのだろう。強大な魔力を感じる。この魔力が虫達の力の源になっているのかもしれない。この木に西区域担当者が住んでいるのだろう。
「コチラデス。」
と言い、蝶々達は降下した。
下に降りると、根っこの間に大きな穴があるのが見えた。なんだ、下かよ!
中は真っ暗だ。人間であれば、進む事が出来ないだろう。しかし今の私は違う。光が無くてもすいすい前に進む事が出来る。フローラはちゃんとついてきてるか心配になり後ろを振り向くと、いつもの笑顔が目の前にあった。何事も無く前に向き直り、歩き始める。
そして、部屋のような空間に出た。そこは魔石で明かるくなっていた。部屋の中心に長テーブルと、木で出来たシンプルなイスがあった。部屋に入ると、別の入り口からカツカツとヒールの音を響かせ、三人の女性が入ってきた。一人は、黒に近い茶髪のセミロング。程よく筋肉のついた褐色の体を強調するかのようにビキニのような服?を着ている。あとはコンバットグローブのような物に、膝位まであるブーツ、そしてマントを着用している。もう一人は、黄色と黒色のウェーブのかかったロングヘアー。服装はSMの女王様のような服装だ。先程の女性よりは露出が少ないが、虎柄であるため、これはこれで目立つ。最後の一人は、真っ黒のポニーテール。縛った髪は腰まである。こちらもSMの女王様のような服装だ。ただし、露出は一番少ない。蜘蛛の巣のような模様がある。
私の目の前まで来て膝を付き、頭を下げる。
「我々三妖虫と配下の妖虫、レムリア様の命令に従うことを約束します。」
「よろしい。これからは西区域担当ではなく、四天王白虎と名乗るが良い。」
「はっ、畏まりました。」
四天王 白虎ゴール・ド・オブ・シディア
マホ・ガニー・オブ・シディア
スパイダー・ウェブ・オブ・シディア
妖虫とは、元々ただの虫だったのが魔力を浴びて魔物化した者らしい。最終的には人型になるだとか。これはかなり恐ろしいものだ。考えてみてほしい。例えば「蟻」が妖虫化する。すると大きさが人と同じ位になる。蟻はどんな高さから落ちても死なないし、自分の倍の重さも運べる。それが人間サイズになれば、そんな力は発揮出来なくなるが、魔力を大量に浴びている為、虫サイズの時と同じパワーを出す事が出来る。この国の主戦力と言っても過言ではない。しかも見た目がそのまま虫なので色んな意味で鳥肌が立つ。相手に(特に人間に対して)心理的ショックを与えるだろう。さらにこの国の妖虫のトップであるゴールはゴキブリだ。因みに、マホが大雀蜂で、スパイダーがルブロンオオツチグモだ。彼女らは元々虫であった為、家は必要無いが成長すれば、人型になるので、作っても問題はないだろう。むしろ普通の家の方が使い勝手は良いかもしれない。これは後で考えるとして、西区域の様子を知りたい。
「西区域には何か重要な物はあるか?」
「この森自体が重要ですね。ここら一帯に生えているのは虫妖木と呼ばれる木です。これは魔力石を生成する事が出来る木なのです。これらが虫達を成長させるので、我々の力の源と呼べるものです。そしてその虫妖木の中でも段違いに大きいのがここの大虫妖木というわけです。」
「ここの魔力石はどの位ある?」
「数えた事は無いですが、かなりあると思います。」
「何か利用方法が無いかアメジストに聞いてみよう。他にここにあるのは?」
「そうですね、あとは森しか無いです。珍しい形の虫妖木とかはありますが、特に面白い物でもないので南区域に向かっても問題ないかと。」
「分かった。」
「では、南区域に行くとしましょう。それと、聞いているとは思いますが、魔王復活式が有りますので準備を。日程は明後日です。」
「畏まりました。配下の者に伝えます。」
最後に虫達を集め、式の事を話す。皆、喜びの羽音をたてた。その様は色んな意味で鳥肌が立つ。ここに来て鳥肌が立ってばかりだ。
その後、森の途中まで、虫達に見送ってもらい、南区域を目指した。