11話 大図書館の魔法使い その2
今回は長いです。覚悟は良いか?俺は出来てる。
昔々、とある人間の国に本物の魔法使いには劣るが、普通の人間よりは魔法が使える者がいた。その者の家の子供は魔法の才能を持って産まれてくる事で有名で、権力、地位もあった。しかし、ある時、全く才能の無い子供が産まれた。妹の方は成長していくにつれ、様々な魔法を使えるようになっていくが、姉は魔法が使えず、次第に家の者からもあまり良いようには思われなくなっていった。家族は妹を可愛がるようになり、姉は一人になっていった。どうして私も構ってくれないのだろう。どうして勉強を教えてくれないのだろう。どうして学校に行かせてもらえないのだろう。どうして外に出してもらえないのだろう。部屋で一人ぼっち。でも、寂しい事はなかった。何故なら私の部屋には沢山の縫いぐるみがあったから。最初は一つだった。しかし、私が親に話し掛けた日の夜に縫いぐるみを使用人を通して渡された。魔法も使えないお前が私達に話し掛けるな、それで遊んでいろ。と言われているようなものだった。実際、言われていたかもしれない。使用人には哀れみを含んだ目で見られていたと思う。私は次第に段々増えていく縫いぐるみ達と遊ぶようになっていき、親との接触が少なくなっていった。勉強は本で行っていた。誰に教えられる訳でもなかった。幸い、本だけは与えられていた。といっても、妹が使っていた物だけど…その中には魔道書もあり、魔法は使えないが読んでみると、理解は出来た。どのような魔法なのかも直ぐに分かった。しかし、やはり使えない。妹のお古なので、妹が引いたであろう、アンダーラインが所々あるのだが、随分検討違いな所に引いている。ちゃんと理解しているのか微妙だが、向こうは魔法が実際に使える。親の私達に対する、扱いの違いはここだろう。
それはさておき、本にはまった私は、与えられた本だけでは物足りず、使用人に頼んで様々な本を調達してもらった。お陰ですっかり引きこもりになっていた。段々と博識になっていく私にこっそりと使用人がアドバイスを求める事が多くなっていた。それを知った両親は私を家から追い出した。こんな事で追い出すのも頭のおかしな話だが、追い出す口実なんて何でも良かったんだと思う。前から追い出したかったのは知っていた。住んでいた場所は治安が良い方なので、襲われるなんて事はない。夜は空き地や路地裏で眠った。それより問題は食料だ。国内で手に入る事なんて、お金を持ってない限り、ほぼ不可能。私は飢えに苦しんだ。そこで私は国外に出る事にした。でも、国外は魔物も存在している。子供一人が出た所で生き延びる事なんて不可能。魔物と出会った時点で人生終わりだ。当時の私は世間知らずだったので、魔物の存在等気にせず、食べ物を求めて歩き回った。そして数日後、遂に一歩も歩けなくなった私は道と呼べないような獣道に倒れた。
そこで私は死ぬと思った。しかし、実際はそうならなかった。そこに三人の人物が現れた。その一人が魔王レムリア・ゼオラだった。私は魔城に連れられた。私はそこで殺されると思った。恐怖で体が震えた。しかし、どういう訳か私はもてなされた。寒がっていると勘違いされ、毛布を掛けられた。食事も出された。城の者は皆歓迎とまではいかないが、私を迎え入れてくれた。後になって聞いてみると、私には才能があるという。魔法が普通の人間より使えるという事ではなく、一度見た魔法を覚えるというもの。しかし、そのままの状態では使えず、ある条件があると。それが、大量の魔力を浴びる事。魔王レムリアと一緒にいるだけで、いずれ魔法を使えるようになるが、もしここにいたいのであれば、私の軍門に入れ。そうでなければ人間の国に帰れ。
私は魔国に住む事に決めた。城の地下室を部屋としてもらった。一人で住むのに十分なそこまで広くない部屋だ。でも、もう一人ではない。毎日誰かしら訪ねて来る。そして、私に魔法を教えてくれる。私が一回で覚えるものだから、皆喜んで教える量が増えていき、スピードもあがっていった。段々地獄の日々と化していったが、辛くはなかった。寧ろ、これが楽しかった。そしてその度に、本を持ってきてくれる。本の量が増える度に部屋を増築していき、大図書館と呼ばれる迄に至った。魔国独特の本もあり、新しい発見でいっぱいだった。そして、本で球体関節人形の存在を知った。その美しさに魅了され、気づけば私は制作に取り掛かっていた。出来た人形は最初30㎝位の大きさだったがエスカレートしていき、最終的には人と同じ大きさになっていった。そんな感じで日々を過ごしていたが、七歳の頃、私は人間をやめる事になる。レムリアから教えてもらい、本物と変わらない魔法使いとなった。私の体は不老不死となっている。そのお陰か皆との距離はもっと縮まった。こうして私は楽しい日々を手に入れた。ついでに、魔国一の魔法使いと呼ばれるようになり、人間の国にも噂だけだが広まった。その後レムリアとは友人になって、よくお茶会なんかもした。レムリアが戦死するまでそれは変わらなかった。あの頃は楽しかった。
「まぁ、ざっくり説明するとこんな感じ。」
「貴女とレムリアの間にそんな事が。いや、それよりも貴女の過去に驚いてるけど…」
「まぁ、大昔の話よ。もう、あれから千年位は経ってるし。」
ごふぁぁ!!
「ちょっ!レムリア!お茶吹き出さないでよ!勿体無い。」
「て事は千歳いってるの?」
「そうよ。でも驚く事無いでしょ?貴女の方が年上なんだし…」
そうか、そうだよな。私の方が年上か。しかし、レムリアという魔人はあまり人間を目の敵にしないのかな?どういう人物か気になってくる。
「ねぇ、当時の私ってどんなだった?」
「ん?じゃあ話してあげよう。私と貴女との思い出を!」
「それ、私達も聞きたいです!」
いつの間にか隣に6体の人形達がいた。こんなにいたのか。
「仕方ないわね。あんた達。じゃあ話してあげるわ。」
そうして、魔法使いと魔王とドールズで女子会が行われ、思出話の一人語りで約四時間盛り上がった。
お疲れ様でした。