10話 大図書館の魔法使い
某紅い魔の館を思わせるようなお話になっているような気がする…
図書館へ行くには長い長い階段を降りる必要がある。今、ストロベリーの後ろを歩いているのだが、まだつかない。階段は横に四人は並んで歩ける位の広さなので、狭苦しくはない。大分歩いたが、いつになったらつくのやら。しかし、疲れはない。この体は何をやったら疲れるのだろうか?
「ここら辺が半分位です。まだ下ですが、私は途中までしかご案内出来ません。申し訳御座いません。」
「分かった。図書館は管轄外だとか?」
「いえ、そういう事ではないんです。…ただ…あそこ怖いんです。行ったら分かると思うんですけど。なるべくだったら近寄りたくないんです!怖いので!!」
「わ、分かった。分かったから落ち着け!」
「も、申し訳御座いません…」
「良い。無理矢理連れていく事もないしな。行けと言うほど、私も鬼ではない。」
「ありがとうございます。」
しかし、何が怖いんだ?図書館の館長的なおばさんか?眼をギラリとさせて周囲を警戒し、うるさくする者に、注意(注意で済むだけだと良いが。)する。そんな存在がいるのかもしれない。
「では私はこれで失礼します。後はこの階段を降りるだけです。」
考え事をしていたらいつのまに下まで来たらしい。ストロベリーは帰っていった。
そこから更に下に行くと、ちょっとした広場にたどり着く。そこには大きな重厚感のある扉がど真ん中で自らの存在を主張している。ここに来てから扉に対してあまり良い思い出がない。扉柄の発泡スチロールに見えてくる。しかし、ずっと開けない訳にもいかない。思えば、食事だって普通に出来た。変に力を入れなければ大丈夫。
「よし!」
ガチャ!「レムリア久しぶりー!!」
「うわ!」
ドアノブに手を掛けようとした瞬間に扉が開き、中から小さな女の子が出てきた。紫の髪、紫の瞳、白色のローブを着た紫の印象が強い見た目七、八歳といった感じだ。
「えっと…誰?」
「え?」
「え?」
「いやいや…私だよ?まさか忘れたとか?」
「あー、実は…」
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今は彼女の書斎に来ている。ここに来るまでに、部屋を二三室経由した。そして、ここはとても広い。今まで来た部屋も広かったが、ここもなかなかだ。そして、部屋の中には天井まで届く棚があり、そこにぎっしりと本が並んでいる。こんなに大量の本を見たことがない。
「えーと、つまり生前の記憶が無いと?」
「まぁ、そう言う事になります…」(正確には元々レムリアじゃないけど…)
「かぁーー!じゃあ、久々に友人に会って盛り上がってたのは私だけかぁ。…うぅ。」グスン
「そ、そんなに落ち込まなくても…」
「いや!いや、良いよ!久しぶりに友に会えただけでも良しとしよう!あ、レッド!お茶持ってきて。」
「了解です。我が主。」
声がした方を見ると、そこには人形が立っていた。所謂、球体関節人形という物だろう。今まで後ろにいたのか…全く気配を感じなかった。人形だからか?
「貴女は…魔王レムリア様ですね?アメジスト様のご友人で恩人と伺っております。」
瞬きもせず、口を動かす事もなく、言葉を発している。表情は同じまま、正に人形だ。
見た目は二十代前半の女性、セミロングの紅い髪、紅い瞳、白みが強い肌、黒と紅を基調としたゴスロリであると思われる服を着ている。人形独特の美しさと、妖艶さがあり、見るものを魅了させる。しかし、人形が苦手な者からすれば、怖いかもしれない。ストロベリーが言っていたのはこの事か。
「私の名前はレッド・ティーガです。よろしくです。今お茶入れて来ます。」
音も無く去っていく。全くいる気配を感じさせない。少し不気味でもあるが、何か魅力を感じる人形だ。
「では、取り敢えず昔話でもしようか。何か思いだすかもしれないし。そうそう、私の名前ね。一応名乗っておくけど、エレス・チャウル・アメジスト。この国が誇る魔法使いよ!」