9話 視察打ち合わせ
「こちらがレムリア様のお部屋です。」
「ありがとう。えっと…名前は?」
「はい。クラックと申します。では、御用があれば何なりとお呼び下さいませ。」
そう言って、クラックと名乗ったメイドは深く礼をし、去っていく。
「あれも人間じゃないんだろうな。さて、中に入りますか。魔王の部屋…」
かなり緊張するが、思いきって扉を開ける。
「何だ。思ったより普通だわ。」
もっと禍々しい部屋を想像していた。しかしそんな事はなく、貴族が住んでいるような少し華やかな部屋だ。綺麗に整頓されており、埃も被っていない。毎日掃除しているのか。復活するかも分からないのに…どれだけ慕われていたんだ。レムリアという魔王は。
今日は色々有りすぎた。もう寝よう。着物を脱ぎ、襦袢姿になる。そのまま、ベッドにボフッと倒れる。そういえばこの城、見た目和風なのに中身は洋風だな。
精神的に疲れていたのか、そのまま深い眠りにつく。
よっぽど疲れていたのか、次の日の昼頃にメイドに起こされた。
「あの…レムリア様。そろそろ起きて頂けませんか?おはようございます。」
「あ、おはよう。今何時だ。」
「もう少しで12時です。お昼…朝ご飯になさいますか?」
「お昼ご飯でも朝ご飯でも何でも良いよ。ん?クラックではないね?」
「はい。クラックは朝交代しました。私はストロベリーです。よろしくお願いいたします。」
「よろしく。じゃあ行こうか。」
「えぇ、ですがその前にこちらにお着替え下さい。」
渡してきたのは、黒色の布地に紫の模様が入った和装の服。しかし、どこか東洋の雰囲気がある。戦国○双の女性キャラが着てそうな感じではある。仕方ない。着るしかないか…これしか無いもんな。
「ご安心下さい。着物の方でしたら、大切に保管しています。ジララ様より頂いた物と伺っていますので、無下に扱うような事はしてません。着替えの方は手伝いましょうか?」
「あ、いや…大丈夫だ。ありがとう。」
「そうですか。ざんね…畏まりました。」
目に見えて落ち込んでいるな。まさか私の体を見たかったのか?まさかな。
「着替えるから一旦出てもらって良い?」
「あ、そうどすよね。着替えずらいですよね。失礼しました。」
一礼して出ていく。やっぱり体見たかったんだな。動揺して噛んだみたいだが、大丈夫か?京都の祇園言葉みたいになってたぞ。
その後、朝食兼昼食を済ませ、フローラと今後の予定を打ち合わせする事になった。
ちょっとした会議室のような部屋に通される。すでにフローラがドアのすぐ近くでスタンバってた。
「ずっと待っていたのか?座っていても良かったのに。」
「従者が主を座って待つ等、有り得ません。さぁ、どうぞこちらへ。」
長方形の机の一番奥、所謂お誕生席と呼ばれる場所に座る。その斜め右にフローラ。
「さて、これからの流れですが…まず魔王様復活を国民に知らせる為、魔城で復活式を行おうと思います。その後、各魔国に報告します。恐らくその事で魔王会議が開かれると思いますが、それについてはその時に対応いたします。」
「分かった。しかし、その前にこの国について知りたい。」
「分かっております。この城の地下に大図書館が御座います。魔道書、地図、図鑑、料理本、トラップ本、サバイバル本、スピリチュアル本、写真集、薄い本、漫画等様々な本が揃ってますので、その点については問題ないかと。司書長には連絡しておきます。」
「ありがとう。しかし、それも良いのだが、私はこの国を実際に見たいのだ。主に、国民をだな。」
「畏まりました。魔王様を間近で見る事で国民も実感が湧くやもしれません。その際に式の事も伝えましょう。各区域担当者に連絡を入れます。東区域担当はジララ殿ですので、一旦戻らせますね。他は北、南、西に担当者が存在しております。その担当者達に自区域に住んでいる国民を集結させます。」
「分かった。因みに、担当者の名前は?」
「はい。まず、東が先ほど申した通り、ジララ・アイス・カルセドラ、西が三妖虫と呼ばれる三人組で代表者がゴール・ド・オブ・シディア、南がラブラド・ラリマ、北がラピス・ラズリです。」
「そいつらが、各区域担当者と呼ばれているんだな?」
「左様でございます。」
「呼びづらいから、今日からそいつらを『四天王』と呼ぶ。」
「畏まりました。伝令でその事も伝えます。では、準備もあるので視察は明日にしましょう。レムリア様は今日はお好きにお過ごし下さい。」
「分かった。じゃあ図書館に行ってくる。」
「畏まりました。ストロベリー、図書館までご案内を。」
「分かりました。ではレムリア様、どうぞこちらへ。」
そして、メイドと魔王は地下の大図書館に向かう。