8話 魔城での食事
前回の城の説明で「外壁はバリバリの西洋風」と表現しましたが、正しくは城を囲う塀の事です。
出された料理というのは実に簡単な物だった。何かの肉を焼いて、多少味付けしただけのシンプルな料理。料理と言って良いか疑問になる程の物だ。城で出る料理がこのレベルなら、この国の者達はどんな料理を食べているのか、疑問になる。しっかりとしたメイド服を着ているのに、料理の腕はそんなに高くないらしい。
「如何でしたか?」
フローラが満面の笑みで聞いてくる。止めろ、そんな期待の眼差しで見るな…
「ま、まぁまぁだな。それより、この国の状況は?」
「長い間、魔王様が不在だった為、他の魔国や我が国が敵視している人間で構成されたステマニア国からは重要視されていません。ただの魔物が住む土地という認識になり下がっています。この国では、人間国側との戦は起こっておりません。その為、城にいた者はメイド等一部を除き、この国に散らばっております。魔王様復活を知り、いずれ集うでしょう。更に、それを受けて魔王会議が開かれる可能性もありますのでご準備を。…お体の方はどうでしょうか?復活なされたばかりなので、まだ優れないのでは?休まれてはどうでしょう?」
「そうだな、そうさせてもらおう。実はな、私には復活前の記憶が無い。だから今後は、かつての私がやろうとしていた事とは違う事をするかもしれない。それに、力も衰えている。それでも私を魔王と呼ぶか?慕うか?」
俺は生前、ただの会社員だった。イスに座り、紙や画面上にモンスターの絵を描いた。何かスポーツをやっている訳でも、体を鍛えている訳でもない。そんな俺がいきなり魔王をやっていけるのだろうか?ジララは知っているが、フローラは知らない。本当の事を打ち明けるべきなのだろうか?
「魔王様は長い間眠りについておりました。その様な事も仕方の無い事です。いずれ記憶も力も戻る事でしょう。貴女様はあるがままで良いのです。ここでは魔王様は絶対の存在。我々はレムリア様を選んだ。お帰りを待ち望んだ。そして貴女はこうして戻られた。それだけで我々は嬉しいのです。これからレムリア様と共に歩める事を誇りに思うのです。ですので、レムリア様はそこまで心配する事はありません。どんなレムリア様もレムリア様なのです。」
「私もフローラ様と同じ意見です。レムリア様についていきます。」
何だこの悪魔。本当に悪魔か?凄く良い奴じゃないか。悩んでいた俺がバカみたいに思える。
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる。」
「えぇ、では今日はもうお休み下さい。詳しい事はまた明日。部屋にご案内します。ジララ殿も今日は泊まって下さい。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、ありがとう。」
こうして食事を終えた後、メイドの案内の元、レムリアの自室に向かった。