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出来るなら  作者: あいちご
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生きて行くって、意外と大変。

初投稿です。


自分が凡庸な人間って誰しも認めたくないですよね。

青春の形って人それぞれだと思います。


色々下手ですが、アドバイスいただきたいです。

ちょっとでも色々考えてくれると嬉しいです。

結衣は出来るなら小説家になりたかった。

幼少期の成績は国語より算数の方が良かったし、別に飛び抜けて文章を書く事が上手かったわけでもない。

でも小説家になりたかった。


今だからこそ言えるが、そこには純粋な動機がなかった。彼女は進学校に通っていたため、周りは基本的に何か一芸に秀でていた。それは音楽の才であったり、勉学の才であったり、美貌であったりしたが、幼いながら彼女はそれが彼らの将来を切り開くための武器になることをなんとなく感じ取っていた。


ふとある日彼女は気まぐれに己の掌を見てみた。そこに、彼らと同じ武器がある事を当たり前のように信じて。しかし、そこには一筋の糸さえもなかった。彼女は底知れない恐怖を感じて必死に考えた。


私にも何か長所はあるはずだ。武器となる何かが。きっと、きっと……。


それはただ頭の中を掻き乱し、不安を煽るだけに過ぎなかったのに。自我を探し、もがく彼女に残酷なまでに希望を与えたのは執筆という行動だった。それは彼女が幼い頃から身近にあった行動で、本という物体として彼女の生活に馴染んでいた。


これだ、彼女はそう思った。


執筆は紙とペンさえあれば誰でもできる。それは即ち私にも出来るという事だ、と。元来思い込みや妄想が激しいたちであったのも手伝い、文章は簡単に書けた。大人が無責任に褒めることで彼女は思い上がった。自分には文章を書く才があるのだと。


思い込みというのは恐ろしいもので、彼女の国語の成績はそれからみるみる上がった。又、あまりにも堂々として自著を見せるので、学友達はよく分からないが上手いのであろうと考え、彼女を褒め称えるようになった。


中学生になったある日、彼女はコンクールに出してみようと思い立った。

その時、すでに彼女の周りには友達がいなかった。彼女よりもリーダーシップがあり、勉強ができ、優しい人間は多くいる。彼女の側にいる理由が無いのだ。唯、彼女の思い上がりはとどまることを知らなかった。

もっと私の作品は評価されるべきだ。そうして評価されれば周りの反応ももっと良くなるはずだ。だって私は褒められたい、尊敬されたい、愛されたい。私は凄いのだから。

彼女は小説家さながらに部屋に閉じこもり執筆に勤しんだ。


彼女が執筆を進める間、ある大きな行事があった。

卒業式だ。

彼女が卒業するわけではなかったが、在校生として同席しなければならなかった。その時彼女は、在校生送辞というものを初めて見た。流暢に語る同学年の副会長を見るうちに、彼女の自信は砕け散った。綺麗な文章。美しい声。時折涙に言葉を詰まらせながら読む文章から溢れ出る文学の才。


意味がわからない。巫山戯るな。


自分より上手いことを認めざるを得ない程の才能。彼女とは幼稚園の頃から一緒だった。なのにそんな素振りは見せたことがないはずだ。おかしい。こんなの認めない。私より上手いなんてあってはいけない。彼女は学年トップの成績を取ったこともある。男子からも人気がある。スポーツも出来て人望も厚い。なのにその上私を支える唯一の自信さえも奪うのか。こんなことがあって良いのか。式の途中にもかかわらず今すぐに立ち上がって叫び、逃げ出したかった。こんなのもう聞きたくない。嫌だ。


それからの記憶はないが、無事家に帰り着いて真っ先に私はコンクール用の原稿を取り出した。読む度に幼さが伝わる。誰かの真似事のような気がする。私の誇れるものはこんなにちっぽけなものだったのか。


ベランダに出て彼女は原稿をライターで火をつけて燃やした。むせ返るような炭の匂いと皮膚を溶かすような熱。1分足らずで灰になった原稿を彼女は何度も足で踏みつけた。死んでしまえば良い。あの子も、先生も、親も、私も。消えろ、消えろ、消えろっ。散々踏みつけた灰の上で彼女は蹲って泣いた。

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