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団長は 性格が 悪い !


「なんで俺がこの変態の相手を……」

「キミ……仮にも国の王子に向かって随分な物言いだね……」


無理やり仕事を押し付けられたハヤテは、アルバートと共に屋外にある修練場に向かっていた。


「王子のくせにこんなことしてていいの?」

「言っただろう? 僕は王位には興味ない。それに、君たちが民衆の支持を得るのもそんな難しくないと思うから口を出さないんじゃないか」

「そんだけ国民が現状に満足してないってことか」

「まぁそれはともかくとして」


アルバートが目の前の扉を開ける。そこは外につながっており、なかなか広い修練場になっていた。


「さて、始めようじゃないかッッ!!」


お互いに向き合って武器を構える。ハヤテはあまり気乗りではなかった。この王子がなかなかの実力者だということもわかっていたので、あまり手を抜けないことも要因の一つだった。

短剣を構えるハヤテ。ヤマト地方…….特にハヤテの住んでいた村はスピード重視の戦い方を教えていた。

ヤマトの人間は身体能力が高めの傾向がある。その代わり魔術系統の腕はからっきし。真っ向勝負を信条とする戦い方が多いのだ。


「さぁ! 何処からでもかかってきたまえ!」


両手を広げ、大袈裟にポーズを決めるアルバート。その言葉を皮切りに、ハヤテは地面を強く蹴る。防がれるとはわかっていたが短剣を振りかぶる。予想通り、振り下ろした短剣は刃物と刃物の擦れる音と共に止められた。だが、ハヤテはそこであることに気づく。


「腕で受け止めた……」

「先程も見せたじゃあないか。様子見とは余裕だねぇッ!」


アルバートは受けた反対の腕をハヤテの顔に向かって突き出した。間一髪で顔を後ろに逸らし突きを避けると、ハヤテはバックステップで距離を取る。


(あれも『魔法』か? 魔法については詳しくわからないけど……)


ハヤテは魔法という力について、まだあまりにも無知であった。とにかく相手の力、力量を知ることが基本だと考えていたため、ひとまず相手の力の見極めることにした。


「心練……」


その場で目を閉じて瞑想するハヤテ。アルバートはその隙を見逃さず両手を刃物のごとく尖らせてこちらに向かってきた。


「ヤマトの人間とは戦ったことなかったけど、やっぱり魔法と体術では圧倒的な差があるねぇ!」


右手の突きを繰り出すアルバート。順調に行けば顔に直撃していたのだろうが、ハヤテは間一髪でで首を傾けて躱す。そして次の瞬間、ハヤテの姿が消えたかと思うと、アルバートを取り囲むように、宙に大量の苦無が浮かんでいた。その間1秒もなく、アルバートもたまたま苦無が浮いている状況を見ることができたのだ。


「な……何処へ消えた……」


待っていたかのように全方位から、苦無が襲いかかる。アルバートは咄嗟に全身を、腕のように変化させ、苦無を防ぐ。


「魔力の消費が……この僕の顔に傷でもついたらどうしてくれるのだね!?」


未だ姿を捉えることのできないハヤテに向かって叫ぶアルバート。そしてその時が来るのはそう遅くはなかった。アルバートは宙を浮き、凄まじい速さで修練場の壁に突っ込んでいく。自分が相手に蹴り飛ばされたと理解したのは、壁にめり込んでからだった。


「なぁんだ、大したことないな。少し警戒はしてたんだけど」


アルバートはピクリとも動かない。生きてはいるがしばらくは目が覚めなさそうだった。


「いやぁ、正直勝つとは思ってたけどここまであっさりとは!」


修練場の入り口からオルダが手を叩きながら、ヘラヘラと笑顔を浮かべハヤテの方に歩み寄る。


「出たな、腹黒魔導師」

「いやあんた酷くない? 正直拍子抜けでしょ〜? あんだけ強キャラ感出してたけど、結局は魔法に頼りきりの世間知らずなお坊ちゃんだったもんね」

「どこで彼の実力にお気づきになられたのですか?」


相変わらずオルダの後ろを歩くメリッサが尋ねる。ハヤテは散らかした苦無を回収しながら答えた。


「この変態王子の魔法が理屈はわからんけど、硬化するものだっていうのはすぐわかったから、とりあえず隙を作ろうと思ったら、予想以上に隙ができた。この苦無って別にここの威力はマジで雑大したことないから、硬化の能力でこれくらいの力に押されてるようなら、一点集中でぶち込めば絶対勝てると思って……」

「うんうん! さすがだね! まぁここでこんな雑魚に負けたら契約破棄のつもりだったから勝ってくれて良かったよ〜」


笑顔でとんでもない爆弾発言をぶちかますオルダ。

このパターンに慣れてはいるが、真っ向から言われるととても腹が立つだろう。


「てめぇクソ魔導師……またハメようとしやがったな」

「まぁまぁ、それより心練ってなに? 見てたんだけど」


あからさまに話を逸らされたが、ハヤテはこれ以上はなにを言っても無駄と思ったのか説明しだした。


「自己暗示みたいなもんだよ……一時的に身体能力が上がる。仕組みはわりと複雑だけど、一度できてしまえばこれほど使いやすい技はない」


少し得意げに話すハヤテ。だがオルダはすでに興味がなかったようでふーん、と呟くと、修練場から立ち去ろうとしてた。


「んじゃお疲れ様! 明日話したいことあるし、会議室に来てねー! 今日はありがとう! 日が沈むまで時間あるし街の方見てきなよ! 変態王子はそこ置いといていいから! じゃ!」

「……」


ハヤテは修練場を後にした。オルダを一発殴ろうとしたが、これ以上騒いでも無益だと悟ると、言われた通り、おとなしく街へ繰り出すことにしたのだった……

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