行動
宿に戻ったハヤテは、早速荷造りを始める。オルダやセラーナ、セトはまだ帰ってきてはいないが、待っていられるほど彼の心は穏やかではなかった。一刻も早く、里で真実を確かめたかった。だが、正面から尋ねたところでわかるわけがないというのは彼自身よくわかっていたのだ。
「……そんな素振り全くなかったのに」
「何がですか?」
突如後ろから聞こえてきた声に驚き、後ろを見るハヤテ。そこには今帰ってきたのだろうセラーナとセトがキョトンとした顔で立っていた。
「い、いつの間に!?」
「今帰りました。それより……顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」
「お兄ちゃん、大丈夫? 病名がわかれば薬作れるよ!」
「いや……大丈夫。ありがとな、セト」
ハヤテはしばらくの間黙り込んでしまう。流石に普段との様子が違う彼を見て、セラーナは何かがあったのかと察した。
「ハヤテさん……隠し事はやめてください。何があったのですか?」
「……ちょっとな。俺は今からウィビルに戻ってギンジさんに会いに行く。少し聞きたいことがあるからな」
「ギンジさんに……? それはまたなぜ……」
「まぁ、野暮用だよ。セラーナさん達はどうする? ここに残っても……」
「いや、行きますよ。何か理由がおありなのですよね?」
セラーナの真っ直ぐな目を見たハヤテはため息をつくと、ユイナから聞かされた話を伝える。
「そうですか……まぁ突拍子もない話ですし、信じることはできませんが……秘宝とやらが関わっているならば行かないわけにはいんきませんね」
「あぁ、だから早速オルダを呼び戻して……」
「オルダさんなら……きませんよ……」
突如、部屋の入り口から声がした。そこには息を切らしたユイナの姿。ハヤテを追いかけて走ってきたのだろう。
「……どういうことだよ」
「先ほどあなたにお伝えしたことをオルダさんにも言うようにビアンカに言ってあります。そしたら、神妙な顔つきで行くところができた、と……」
「はぁ!?」
詳しく聞いたところ、ビアンカの元へ向かったオルダも、ビアンカから同様の話を聞いており、その話を聞くや否やすぐに街を飛び出したそうなのだ。
「何が理由かはわかりませんが……私も彼が街を出たことに気づきませんでした。ビアンカもそれを伝えると街を出て行ってしまって……」
「ビアンカおばさんとオルダ兄ちゃん、いなくなっちゃったの?」
「はい……ただ、必ずみなさんの元へ戻ると仰っていました」
旅の初めから共についてきたオルダの突然の離脱。もちろん彼が裏切るような人間でないことはハヤテもよくわかっているが、彼らの中のオルダは、とてつもなく大きい存在であり、その彼がいなくなったことに大きな喪失感を覚えていた。
「つ、次から次へと……ですが、彼のことですし何か考えがあるに違いありません。とりあえず私たちはウィビルに戻りましょう」
「あ、あぁ……」
「その件なのですが」
ユイナが会話を割って入り込む。
「私も同行させてもらえませんか?」
「……ユイナが?」
「はい。ビアンカもいないし。それに私はハヤテさんの知り得ないヤマトの情報を多く持っています。回復気術も得意ですし、役に立てるかと思います」
ハヤテはしばし考え込む。彼はあの話を聞いてから彼女のことを素直に信じられなくなっていた。しかし最終的に自身の置かれている状況から、彼女がついてきた方がはるかにいいといいと判断し、頷く。
「助かる。よろしくな、ユイナ」
セラーナとセトもそれぞれ頭を下げると、ユイナも笑顔になる。
「あんなことを言った後だから……断られると思っていました」
「……もし本当なら、こんなところでぐずぐずしてられないからな。少しでも事情を知っている人が近くにいると安心だろ」
一行は各々荷物を持つと、宿を後にする。そして来た道を戻り、再びウィビルを目指すのだった。




