夢の中でも甘くない
微バトル。
めちゃくちゃ長い1日を終えるべく、僕はお風呂に入った。
香草やらなんやらで緑に濁った湯船に浸かって、分かっていることや気付いたことをまとめていた。
ここの世界は夏だというのにそれほど暑くはない。
リオやエレナは長袖の服を着ているくらいだ。
「これからどうしようか...」
考えることは好きだった。
作戦を考えたり状況把握など、常に考えている。(主にFPSやアクションなどの対戦ゲーム)
だが、こんなにも考えても答えが出ないことは初めてだった。
なにをすればいいのか。
勇者なのだからモンスターと戦うのだろうか。
魔王とか居るのだろうか。
色々考えても答えは出なかった。
とりあえず次杭音先生に会ったら帰らせてもらおう。
風呂から上がると脱衣場の自分の服が無く、籠には甚平が置いてあり、小さな紙に、
『おきがえ です。 おおきさ が あわなければ
およびください。 りお』
文字は勉強中なので時間はかかった。
ぶっちゃけ断片的にしか読めなかったけど。
どうやらリオが用意してくれたらしい。
着てみるとサイズはピッタリだった。
「お風呂ありがとう...」
「いえいえ、サイズはどうでしたか?」
「丁度いいよ...」
「良かったです。他にもあるので、気に入ったら着てみてくださいね?」
「分かった...ふぁぁ....」
「眠そうですね?お休みになられますか?。」
「そうする...」
「こちらです。」
案内されたベッドに突っ伏し、そのまま眠りにつく。
考え過ぎたし、イベントが多くて疲れたみたいだ。
意識が霞んでいき、どんどんと沈んでいった。
..........
いつの日か見たことのある夢だった。
大きなドラゴンのブレスを切り裂き、ドラゴンの爪を避け、勢いよく飛び、縦に一閃。
ドラゴンは真っ二つになり霧のように消える。
周りには仲間。
大きな槍と盾を持った男。
杖を持ち、魔法で敵の群れを殲滅する女。
傷を癒す少女。
小さな体躯で敵を翻弄する子供。
みんなと協力し魔王と戦う。
これから魔王を討ち取ろうと、みんなで飛びかかる。
しかし、魔王の強大な力で、みんな吹き飛び全滅してしまう。
まだだ...今度こそ負けない...
必死に落ちた剣へと手を伸ばす。
.........
むにゅん
なにか柔らかいものを掴んだ。
確か、剣を掴もうとしてたはずだ。
ゆっくり目を開ける。
目の前には無表情で正座しているエレナが居た。
そのエレナの右胸を鷲掴みにしている。
むにゅむにゅ
指を動かすと手に収まる柔らかな感触に、優しく跳ね返される。
正直楽しい。
....
「うぉあっ!?!?」
頭が動き始めると同時に飛び起き、バッと胸から手を離し距離を取る。
「叫びたいのはこっちよ変態。もうすぐ朝ごはんができるわ。早く来なさい。」
そういうと、何事も無かったかのように部屋を出ていってしまった。
(えぇ...)
胸を揉みしだいた僕が言うことではないけれど、
彼女は起こしに来てくれた割には、とても起こそうとしていたようには見えなかった。
なにがしたかったんだろう。
僕はとりあえず朝食へと向かった。
部屋を出ると正面に部屋があり、ネームプレートが貼ってある。
ここはどうやらエレナの部屋らしい。
右は行き止まりで左に進めばリビングになっている。
リビングに向かって右にトイレ、左に風呂がある
そのまま進むとリビングとキッチンがあり、左に階段があって二階に通じている。
リビングに着くと、エレナが座っていた。
リオは料理を作っている。
昨日と同じくエレナの正面に座った。
エレナは無表情でじっと見つめてくる。
「さっきはごめん...寝惚けてたとはいえあんなこと...」
「気にしてないわ。犬に胸を触られても、別に怒らないでしょう。」
「僕は犬ですか...」
「あら、失礼だったかしら。犬に。」
「うぐっ...」
こっちが悪いので言い返せない。
「悪いと思ってるなら後で付き合って。」
「買い物か?」
「そうよ。」
「お待たせしました。今運びますね。」
こんな賑やかな朝は久しぶりだなぁと思いつつ、美味しい朝食をペロリと平らげた。
次回デート。