金髪少女は甘くない
新キャラです
気付けばレンガの家にもう着いていた。
少し残念に思っていると部屋に明かりが灯っていることに気付いた。
「もう帰ってきてるみたいですね。早くご飯の準備をしませんと。」
帰ってきてるということは住人なのだろう。
この街のルールを考えれば当然なのかもしれない。
買い物はE地区の商業用地域か、個人経営の店が多いC地区だけしか買い物はできないからだ。
リオが小走りでレンガの家に入っていった。
僕も続いて家に入ると、杭音先生と話していた場所にこの家の住人が座っていた。
リオとは対照的に金色の髪をした肩にかからないショートヘアーの女の子が座っていた。
目を閉じ指でトントンとテーブルを鳴らしている。
キッチンに買ってきたものを運ぶとリオがスープを温めていた。
「運んでくださってありがとうございます。すぐに作っちゃいますね。」
眩しいほどの笑顔で料理を始めた。
きっと料理が好きなんだろう。
僕は手伝おうとも思ったのだが、かえって邪魔になるかもしれないと思ったので何かあれば呼んでねとだけ伝えてテーブルの方に向かった。
金髪の少女の前に座った。
沈黙が続きなんだか居づらい。
「えっと...初めまs」
「ちょっと静かにしてくれる?」
笑顔で話しかけてみたが途中で遮られた。
というか怒られた。
そのあと沈黙が続く。
(きっ...気まずい...リオさん早く帰ってきてください‼)
僕は心の中で叫んだ。
しかしキッチンからは可愛らしい鼻歌が聴こえてくるだけだった。
「私はエレナ・イングラード。エレナで呼んでね。イングラードで呼んだら殺すから。あと敬語も殺す。」
急に理不尽なことを目の前の金髪少女が言った。
「僕は岸尾 朝...よろしくね?」
「キシオハジメ。どこからがあなたの名前?」
「岸尾がファミリーネームで朝が僕の名前だよ。」
「ならハジメって呼ぶわね。」
グイグイくるなこの子。
「ファミリーネームは嫌いなの?」
気になったので聞いてみた。
「グイグイくるわね。」
「こっちの台詞だよ!?」
ついツッコミを入れてしまった。
「ファーストネームは個人の名前じゃない。家族全員の名前で呼ばれたらそれは私を呼んでることにはならないもの。」
少しなるほどと思ってしまった。
「名前が被ったらどうするのさ...」
「もう一人を殺すわ。私の脳内に同じ名前は要らないもの。」
このクレイジーガール何とかしてくださいマジで。
やいのやいのと言い合いをしているうちに、
「随分仲良くなられたみたいですね。」
笑顔で料理を持ってきたリオが立っていた。
「僕も運ぶよ...」
「ありがとうございます。」
「働かざる者食うべからずよ。」
(お前が言うな。)
こうして賑やかな夕食を迎えたのだった。
次回お夕食