勇者は甘くない
まだまだ続きます。
嵐のように去っていった杭音美和の後にポツンと一人残された僕は、一人で椅子に座ったまま考えた。
「勇者かぁ...」
杭音先生が言った通りだとすれば、仮にもこの世界を救わない限り帰れない(というか返してもらえない)らしい。
選択肢はないようだ。
(僕に何ができるんだろう...)
自分に何ができるかを考えていると、また入り口の扉が開いて
「お話は終わりましたか?」
そう言いながら僕をこの家に連れてきた少女が入ってきた。
どうやら杭音先生のプロジェクションは上手く働いているようで、あのさっぱりわからん言葉は少女の声音そのままに日本語となって聞こえた。
「杭音様からお話は伺っております勇者様。」
どうやら杭音先生と面識があるらしい。
「勇者なんて僕には合わないよ...」
勇者なんて柄ではないと分かりきってた。
謙遜などではなく、単なる事実である。
そんな僕に彼女は、
「めっそうもございません!私は初めてお会いした時から、この人は勇者様なんだと思いました。」
と、僕を真っ直ぐに見つめて答えた。
「ありがとう...」
彼女の真剣な表情を見て否定する気がなくなったので、とりあえずお礼だけ言っておいた。
そうするととても嬉しそうに微笑んだ。
(可愛いなぁ...)
口には出さないが、心の中で素直な感想を述べた。
少しは勇者らしくなろうかなと思い直したところで、僕は彼女に尋ねた。
「ちょっといいかな?お願いがあるんだけど...」
「なんでしょうか?」
「字の書き方と読み方教えてもらえないかな?」
「私なんかでよろしければお教え致します。」
こうして異世界語の先生をゲットした。
ついでにもう一つお願いしてみる。
「あと、良かったら街の案内もして欲しいんだけど...」
そう言うと彼女は嬉しそうに言った。
「お任せください勇者様!」
こうして美少女とのデートが実現した。
次回主人公の名前。