言葉の壁は甘くない
前回のあらすじ
落ちた場所で美少女発見
言葉が通じないのでは今の状況を知ることも、何より情報を得ることすらできない。
「どうしよう...」
ただ不幸中の幸いだったのは相手に敵意が無かったことだ。
微笑みを浮かべている彼女は長時間思考している僕に危害を加えることもなく、ただ見つめているだけでなにもしてこなかった。
怪しまれてる訳じゃないなら危険ではないのかもしれないな、などと状況を把握しつつも情報を得られないのはとにかくマズイ。
「どうやれば伝わるんだろう...」
必死に考えていて気付かなかったが、いつの間にか少女の顔が凄く近くにあることに気がついた。
彼女が心配そうに僕の顔を覗き込んでいたのだ。
「うわぁっ!」
情けない声を上げながら僕は後ろに仰け反り、凄い勢いでその場から後方へ飛び退いた。
それがいけなかった。
後ろつまりさっきまで向いていた方向である。
そう、崖になっているのを忘れていた。
僕は足を踏み外した瞬間、しまったと後悔した。
(あぁ...また自由落下を体験するはめに...)
は、ならなかった。
空中に見えない足場があるかのように僕の体は片足だけ踏み外した状態で落ちることなく止まっていた。
「うわっ....あれ?」
頭が起こったことについていかずとりあえずゆっくり崖の上に戻ると彼女が心配そうな顔で近寄ってきた。
「@$#※%#※@$?」
なんとなく大丈夫ですか的なこと言ってるのかな?
そんなことを考えていると彼女は凄い勢いで頭を下げペコペコと90度のお辞儀を繰り返した。
「だっ大丈夫だからっ...」
通じないことも忘れて頭をあげさせようとしつつここら辺はお嬢様っぽくないなぁ何て考えていると、
「@$※%##%#$@」
彼女がなにかを言うと僕の手を握りしめ、ぐいぐいと引っ張っていった。
「ちょっ!?なになになに!?」
彼女があまりに険しい顔で引っ張っていくので心配になりつつもゲームばかりしていた非力な僕はついていくことしかできなかったのだった。
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中学校のフォークダンスですら男女比の関係で繋げなかった女の子との手繋ぎに感動する間もなくただただ理解できないまま引きずられて着いたのは二階建てのレンガでできた家だった。
中に引きずり込まれ椅子に座らされたと思えば少女はなにやら僕に言うと慌ててどこかに行ってしまった。
(どうしよう、待ってた方がいいんだろうか)
しばらく逃げようか待とうかと葛藤していると、急に勢いよく入り口の扉が開いた。
「いやぁーめっちゃごめんねー」
聞き覚えのある全く反省のない声が聞こえてきた。
その正体は僕の担任、杭音美和だった。
少年の名前はもう少ししたら出てきます